愛煙家にとって、喫煙スペースの確保は非常に困難な時代。喫煙できる場所自体が減っているのに加えて、改正健康増進法の施行により、飲食店などの屋内施設で、座ってゆっくりたばこが吸える環境はなくなりつつある。

そんな中、東京・浅草の地に、2024年1月からオープンした「SMOKING & COFFEE BAR SMOCO」は、喫煙可能なカフェバーとして注目を集めている。

  • 東京・浅草、雷門から徒歩およそ1分のところにある「SMOKING & COFFEE BAR SMOCO」。左側がカフェバーで、右側が無料の公衆喫煙所となっている

雷門から徒歩およそ1分という立地に店舗を構えるSMOCOは、カフェバーに公衆喫煙所が併設されており、公衆喫煙所はもちろん、カフェバーにおいても喫煙が可能。公衆喫煙所はスタンディングのみだが、無料で利用できるので、ちょっと一服という人は公衆喫煙所、ゆっくり飲食をしながらという人はカフェバーといった利用スタイルとなっている。

カフェバーは1階がカウンター席、2階がテーブル席という構成。1階のカウンターは5席だが、壁際には立って喫煙できるスペースも用意されている。そして2階には、2人がけのテーブルが5卓、4人がけが2卓が設置されている。2階を利用する場合は、ファーストオーダーのみ1階で行い、以降はテーブルに用意された呼び鈴で店員の方を呼ぶシステムとなっている。もちろん1階、2階とも、紙巻き、加熱式たばこに関わらず全面喫煙可能となっている。

  • 1階はカウンター席

  • 1階壁側にはスタンディングの喫煙スペース

  • カウンター下にはコンセントが用意されており、スマホの充電ケーブルの貸出も行われている

  • 2階はテーブル席

  • 2階ももちろん全席コンセント完備

■店長の英語力で異文化交流の場に

最近ではかなり珍しい全面喫煙可能なカフェバー「SMOCO」は、かつて同じ場所で不動産業を営んでいた会社の子会社が運営している。

「この浅草という立地を考えると、あまり不動産には適していないので、会社を移転して、何か別の商売を始めることにしたのがきっかけです」と話すのは、SMOCOの店長を務める柴田修司さん。まだ不動産を営んでいた頃に、近隣の公衆喫煙所が立て続けに撤去されたこともあり、「時代には逆らっているけれど、何か喫煙関係の商売ができないか」と考えたそう。

  • SMOCO店長の柴田修司さん。おすすめのドリンクはSMOCOオリジナルの「浅草レモン茶ワー」と「コーヒーハイボール」

SMOCOの計画が動き始めたのが2023年夏。そこから2024年1月の開店に向けての突貫作業が始まったと柴田さんは苦笑いを浮かべる。「大学生の頃にイタリアンレストランでバイトをしたり、卒業後もレストランバー付きのホステルで働いていたことがあったので、飲食の基本的なところはある程度わかっていたのですが、それから少し時間が経っていたので、思い出す意味も込めて、仕事が終わった後にバーでちょっと修行をしたりもしました」。

柴田さんは、自身が店長を任された理由として“英語力”を挙げる。「浅草という土地柄、インバウンド、海外からの観光客の方が多いので、英語が話せないとかなり厳しい。私は外語大で英語を勉強したり、海外で実際に働いた経験があったので、そこを買われて、店長を任せてもらえたのだと思います」。

SMOCOは、カフェバーと公衆喫煙所で構成されているが、日本人は無料の公衆喫煙所を利用する人が多い。それに対して、「外国からのお客様は、やはり座ってゆっくりたばこを吸いたいのだと思います。そして会話をしたいという方も多いようで、お客様の数自体はカフェバーでも日本人のほうが多いのですが、周りの飲食店と比べると、圧倒的に外国人の方の割合が多いのではないかと思います」という柴田さん。

「大前提として、海外は室内でたばこを吸えるような施設はありませんから、SMOCOのような店は非常に珍しいし、喜んでもらっています。ただ、初めて日本に来て、初めて入った店がSMOCOだと、日本はどこでも吸っていいんだと勘違いしてしまう方もいらっしゃるので、そのあたりはしっかりと説明するようにしています(笑)」。

「SMOCO」という店名は、柴田さんがオーストラリアで働いていた頃、仕事中に「SMOKO」と言われたことに由来しているという。

「最初は何のことかまったくわからなかったのですが、話を聞くと、“SMOKING & COFFEE BREAK”の省略形で、たばこを吸ったり、コーヒーを飲む15分休憩のことだったんですよ。だから、外国人はSMOCOという名前を見ただけでたばこが吸えることがわかる。これもうちに外国人のお客様が多い一つの理由になっていると思います」。

さらに、会話目的での来店が多いのも外国人の特徴だと柴田さんは続ける。「たばこが吸いたい、飲食がしたいだけでなく、会話をしたいという方も結構いらっしゃいますね。別々に来店した外国人のお客様の会話を自分が繋ぐみたいなこともよくありますし、自分は東京出身なので、ガイドブックに載っていない穴場を教えたり、うちの会社が経営しているホテルを紹介したり。ちょっとした観光案内所みたいな感じにもなっています」。

■浅草の景観維持に一役買いたい

たばこが繋ぐ異文化交流の場として、存在感を発揮するSMOCOだが、もうひとつの大きな目的が「街の景観維持」だと柴田さんは強調する。「浅草にはたくさんの人が訪れますが、喫煙スペースはほとんどありません。三社祭やサンバカーニバル、花火大会など、お祭り系の多い土地柄なので、どうしてもポイ捨てが問題になる。そういったこと少しでもなくしていきたいという思いが強いです」。

無料の公衆喫煙所を併設しているのも景観維持への気持ちから。「よくお客様から、『横に無料喫煙所があるのに、よく店を開けたね』と言われるのですが、公衆喫煙所の運営も自分たちなので(笑)。不動産をやっている頃、近くの喫煙スペースがなくなって、非常に困った経験が自分自身にもあるだけに、裏道で隠れて吸うようなことはせず、堂々と吸っていただける場所を用意したかった。そして、隣のカフェが気になったら、次はカフェのほうに来ていただければそれで十分です」。

  • 無料の公衆喫煙所もSMOCOが管理・運営を行っている

たばこが吸えるカフェバーと聞くと、においがきつかったり、煙が充満しているイメージもあるが、「一回り大きな換気扇を入れたり、こまめに換気をしたりもしていますが、最近は加熱式たばこの方が増えたこともあって、たばこを吸わないお客様にも『あまり気にならない』とおっしゃっていただいています。そして実際、たばこを吸わない常連の方もたくさんいらっしゃいますので、たばこを吸う方も吸わない方も安心してお越しいただければ」と柴田さん。

2024年1月のオープン以降、業績は右肩上がりだそう。「まだ4カ月目なので、今後はどうなるかわかりませんが、これから夏に向けて、三社祭があったり、サンバカーニバルがあったりするので、さらに認知度が上がって、常連の方が増えればいいなと思っています」。そして、現在は浅草のみだが、同じ「SMOCO」の名前で多店舗展開していきたいと、今後の展望を明かしてくれた。

喫煙者自体の母数は減っているが、その一方で、若者や女性の喫煙者が少しずつまた増えてきている印象があると柴田さんは話す。

「そういった方たちが仕事の休憩中や終わった後に、ゆっくりできる場所、オアシスというとちょっと大げさですが、公衆喫煙所と違って、座って、飲食をして、会話もできる。そんなスペースを提供していければいいなと思っています」。

「SMOKING & COFFEE BAR SMOCO」は、月~土が10時から26時30分、日・祝が23時30分まで。公衆喫煙所は10時から18時まで営業。