以前紹介したムルティプラとメッサーシュミットのオーナー、アニメーターである吉田クリストフさんから連絡があった。5月1日に花と車の展示があると。ちょっとめずらしいから、来てみてはどうでしょう?という提案であった。
【画像】こんな素晴らしいイベントを今まで知らなかったのが不思議でならない!26年も続く花と車のイベントを写真でお届け(写真43点)
正直言ってその段階ではDIYショップの園芸コーナーに数台のクラシックカーが展示される程度のイメージしかなかった。日が近づくにつれて今度はヴァンセンヌ旧車クラブの役員であるテリーさんから同じイベントに来ないかという誘いがあった。テリーさんは『オクタン日本版』本誌や、別冊のシトロエンの100年記念本『100年のシトロエン』で登場していただいている。テリーさんからはこのイベントでパレードがあるからどの車に乗りたいか?という提案であった。DIYショップのイベントで、パレードといってもその町をくるっと廻るようなものだと思っていたので、「特に車には乗らず、適当に撮影するよ」という返事をしたところ、今度は3月に2CVで世界遺産の街を一緒にドライブしたセルジュさんから「僕の車で一緒に行こう」という連絡があった。話は大きくなっていった。9時からパレードが始まるから8時頃に来てほしいということになり、その時間に間に合うように出かけた。
セルジュさんの家から2CVに乗り会場に向かった。今回のイベントがどういうものかを聞きたいのに、セルジュさんはこの間のドライブの思い出話をやめようとしなかった。そうこうしているうちに会場の園芸用品屋さんに到着した。しっかりとセキュリティーがいて、門を入ってしばらく走り続けた。ミニカーやパーツを売るブースも広かった。ここのどこが園芸用品屋さんなのだろうか?
車を停めてテリーさんに挨拶をし、このイベントについての話をやっと聞けた。このイベントは今年で26回目という歴史あるイベントであった。そして続々と集まる車を見ながら、およそ800台は集まるだろうという。パリ横断並みの規模ではないか!
パレードではなく、パリ横断のようなラリーのイベントであった。出発までの時間、会場を歩いてみるとそこにはショップがあり、土や、腐葉土、植木などが売られていた。たしかに園芸用品店であった。その中に植物と合わせて車が展示されていた。ショップの上は丘になっており、その丘にオーナーズクラブなどがブースを作っていた。なるほど、これは大きなイベントである。
出発の時間になるとコース図が渡された。れっきとしたラリーであった。総距離75km。そして車に戻ると、セルジュさんは僕にキーを渡した。「今日はおまえが運転するんだよ」と。もうテリーさんたちと仕組んでいたようだ。それなら乗ってみようと2CVを運転してラリーに参加した。セルジュさんのハンドルは、オリジナルではスマホに手が当たるので一回り小さくしたというのもあり、重かった。そしてブレーキはいつもポンピングを必要とした。シフト操作はまったく問題なかった。久しぶりのダブルクラッチを使って走った。慣れるまではハンドルが予想以上に重たくて、右折の時に曲がりきれず対向車線に入りそうになり、対向車は笑って許してくれた。慣れてきて、シフトアップとダウンのタイミングを掴んでしまえば、もう2CVは自分の体の一部になった。
50kmほど走ったところが中継地点で、軽食とドリンクが振る舞われた。紙コップに注がれたドリンクは色からリンゴジュースだと思って一気に流し込んだ。しかし、それは白ワインであった。さすがフランス。ちなみに赤いのは白ワインにカシスを混ぜたキールだ。ちなみに僕はお酒には弱いので、ここから先はセルジュさんにバトンタッチした。
会場に戻るとなんと、周辺は警察が交通整理をするほどの大渋滞であった。会場内もとにかく人が多く大盛況。パリ横断は参加車だけが楽しむが、ここでは休日の楽しみとしてイベントを見に来る人たちも多かった。この盛況ぶりだから26年も続いているのだと納得。このイベントは園芸用品屋のオーナーの車好きが高じて始めたというものであった。丘のあちこちにこの園芸用品屋さんのお店の名前が書かれたデリバリー用のヴィンテージカーが何台も並んでいた。中には見かけたことのある1台も。そういえばこの、車を花で装飾した車がレトロモービルなどに展示されていた。なるほど、ここのオーナーのものだったのだ。ひとつ謎が解けてなんとなくスッキリした。
パリ横断と違って田舎道を走り抜けるラリーであった。パリ横断は結構渋滞にはまっている時間も多い。それとは違って走った距離は倍以上であった。そして展示会場も自然の中で何とも面白かった。こんなイベントを今まで知らなかったのが不思議でならない。教えてくれた吉田さん、そしてヴァンセンヌ旧車クラブの皆さん、撮影のつもりが参加するイベントになりました。ありがとうございました!
写真・文:櫻井朋成 Photography and Words: Tomonari SAKURAI