藤井聡太名人に豊島将之九段が挑戦する第82期名人戦七番勝負(主催:毎日新聞社・朝日新聞社)は、第3局が5月8日(水)・9日(木)に東京都大田区の「羽田空港第1ターミナル」で行われます。藤井名人が勝って3連勝スタートを飾るか、豊島九段が食い下がるか。注目の対局を前に見どころをおさらいします。
豊島九段の序盤戦術
振り駒が行われた開幕戦は後手の豊島九段が力戦に誘導。横歩取り調のねじり合いからリードをつかむも、終盤の競り合いに踏み込みを欠いて好局を落とす結果に。先手で迎えた第2局は豊島九段がひねり飛車をぶつけ優勢になるも、終盤の失速に泣き2連敗となりました。 局後のインタビューで藤井名人から聞かれたのが「想定していない展開で一手一手難しかった」「序盤から気を遣う展開」といった感想。2局とも1日目から藤井名人が先にまとまった時間を使う展開になっており、この点は豊島九段の序盤戦術の成功を裏付けています。
突破のシナリオは
結果にこそ結び付いていないものの豊島九段がこの七番勝負に向けて作戦を練ってきているのは紛れもない事実。豊島九段の後手番で迎える第3局も藤井名人得意の角換わりはお預けとなることが予想されます。豊島九段が角道を開けるタイミングがカギとなりそうです。
なおタイトル戦に限れば2022年の王位戦七番勝負(藤井王位が4勝1敗で防衛)が直近の対決。そこでも苦戦が続いていた豊島九段ですが、快勝した第1局では持ち時間を100分残した点が目を引きます。今回の名人戦でも作戦勝ちからの中押し勝ちが豊島九段のシナリオでしょう。
行く末うらなう第3局
最後に見逃せないのは、並行して戦われている叡王戦五番勝負の日程。伊藤匠七段の活躍で藤井名人は自身初となるタイトル戦連敗を喫しました。約3週の間に愛知県→東京都→石川県→千葉県→愛知県と移動する過密日程が名人の体力面にどう作用するかも懸念されます。
開幕3連勝となれば藤井名人が防衛に大きく近づくだけに、この第3局は分水嶺。注目の対局は佐藤康光九段の立会のもと5月8日(水)9時より開始されます。
水留啓(将棋情報局)