スーパー戦隊シリーズ恒例の「VSシリーズ」最新作は、現在期間限定上映中のVシネクスト『キングオージャーVSドンブラザーズ』そして『キングオージャーVSキョウリュウジャー』の「豪華2本立て」作品となった。
2023年に放送開始した『王様戦隊キングオージャー』は、宇宙の片隅の惑星「チキュー」にある6つの国を治める王たちが、宇宙全体を揺るがす巨大な危機に立ち向かう物語。ファンタジックな舞台設定を作り上げ、その中で巨悪に対抗し、果敢に戦う王たちを中心としたリアルな人間群像ドラマが生み出され、ファンを感動させた。一方、2022年の『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』は、日本人になじみの深い昔ばなし「桃太郎」を下敷きに、リアルな日常の裏に隠された非日常の突飛な現象を描き、出てくるキャラクターが作品世界で自由奔放に暴れ回る大胆不敵な作風がファンを魅了した。
どちらも「ヒーロー」で「スーパー戦隊」であるということ以外、共通項のなさそうな両チームが真っ向から対立し、腕を競い合いつつも、次第にお互いのことを理解する……というのが「VSシリーズ」の定番展開だが、今回のキングオージャーとドンブラザーズは、さて本当に仲良くなることができるだろうか? と始まる前から心配になってしまうほどの、お互いの個性の強烈さ、ぶつかりあいが大きな見どころとなるに違いない。
Vシネクスト上映公開記念インタビュー、今回は『王様戦隊キングオージャー』からクワガタオージャー/ギラ・ハスティー役の酒井大成と、『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』からドンモモタロウ/桃井タロウ役の樋口幸平の「レッド戦士対談」をお届けする。本当は純真でまっすぐな性格でありながら「我こそは邪悪の王」と名乗り、高笑いで敵を威嚇するクワガタオージャー、そして一筋縄ではいかない「お供」たちを強引に従えて、心の底から発する高笑いで敵を困惑させるドンモモタロウ。スーパー戦隊の強い「絆」を感じさせる先輩から後輩へのエールや、作品のお楽しみどころ、そして昨年(23年)に放送10周年を迎えた大先輩戦隊『獣電戦隊キョウリュウジャー』(13年)のキョウリュウレッド/桐生ダイゴ役・竜星涼から感じ取った「ヒーローの絆」について、楽しくトークしてもらった。
■樋口幸平、酒井大成の口に手を突っ込むシーンで「無茶なことを…」
――いよいよ『キングオージャーVSドンブラザーズ』が上映となります。何やらとんでもなさそうなストーリーとのことですが、まずは後輩戦隊のキングオージャーと先輩戦隊のドンブラザーズ、お互いの印象から聞かせてください。
樋口:僕のほうが先に「スーパー戦隊」をやっていたのですが、過去の作品に出演された方たちがずっとつむいできた歴史あるシリーズですし、誰が先輩で誰が後輩とか、そんなに意識はしていません。僕は大成が1年間『キングオージャー』をやり通した姿を見て、尊敬していますし、今は「1年間お疲れさま」という気持ちが大きいです。これからも「スーパー戦隊」出身として新しい俳優たちがどんどん出てくると思いますけど、歴代のレッドたちの思いも背負って、頑張ってほしいです。
酒井:僕は以前から『ドンブラザーズ』を観ている中で、いい意味でかなりぶっ飛んでいる作品だと思っていましたし、今回の『VS』の撮影に入る前にも、いろんな人からドンブラザーズという作品の色については色々と聞いていました。『キングオージャー』はファンタジー要素が大きいのに対して『ドンブラザーズ』はどちらかというと現実よりの世界観。この2つがどう融合してひとつの作品になるだろうかと、楽しみながら撮影に臨みました。
――『映画 王様戦隊キングオージャー アドベンチャー・ヘブン』に登場した「死の国ハーカバーカ」に、キングオージャー&ドンブラザーズの全員が行くことになる、つまりみんなそろって命を失うという冒頭部分から、たまげますね。お話については、最初どんな風に思われましたか?
樋口:台本を読んだとき、僕は「なるほどね」って思いましたね。実に『ドンブラザーズ』節が出ていて、正直「なんだコレ」っていう感じ(笑)。この「なんだコレ」がドンブラザーズの良さであり、そう思いながら僕たちが全力で演じる。そして、ファンのみなさんが「なんだコレ」という内容の作品を観て、理解をしたり、考察したり、というのがひとつの面白さになるんです。演じてみて、ひさびさに「あ、ドンブラザーズだ。面白い」と感じていました。
酒井:僕も同じく「なんだコレ?」っていう第一印象でした(笑)。これこそがドンブラ節なんですね。ギラはわりと目の前のことに一直線で、脇目もふらずという感じの男ですから、今回もすんなりと「ドンブラ空間」に飛び込むことができたんじゃないかって思います。
――タロウとギラとのかけあいで印象的なのはどんなところですか。
樋口:タロウがギラの口の中に手を突っ込むシーンです。タロウだけでなく、ドンブラザーズのメンバーそれぞれがキングオージャーのみなさんにご迷惑をかけている(笑)。ギラの口に手を入れながら、無茶なことをやってもらってるなあと心の中で思っていました。
酒井:何回くらい、入れられたかな(笑)
樋口:3、4回はやってたよね(笑)
酒井:演技とはいえ、人の口に手を入れるのは気持ちのいいものじゃないはずなのに、幸平は嫌な顔ひとつせずにやってくれたので、こちらとしても芝居がしやすかった。
樋口:嫌な顔なんてしないよ(笑)。そんなの失礼じゃないですか。
――監督を務められた加藤弘之さんは『ドンブラザーズ』『キングオージャー』の両作品を手がけていて、特にコメディ色の強いエピソードを得意とされる印象がありますね。
樋口:『ドンブラザーズ』への愛情をしみじみ感じました。
酒井:幸平たちドンブラキャストと会うのが久しぶりだって、加藤監督が満面の笑みを浮かべていたのがすごく印象に残っています。
樋口:へえ~嬉しいな。
酒井:こんな表情をされるんだ……なんて、僕たちが驚いたくらいの笑顔でした(笑)
――LEDウォールによる「バーチャルプロダクション」で表現されたチキューの各王国に初めて足を踏み入れた(撮影した)感想を樋口さんにお尋ねしたいです。
酒井:僕も幸平の感想を聞いてみたいですね。ロケじゃなくてスタジオ中心の撮影だったから、どんな印象だったんだろうか。
樋口:確かに、人生で初めての体験と言っていいかもしれません。LEDウォールに背景が映し出される前での芝居、全方向グリーンバックで前後に何もない状態での芝居、どちらもあそこまで大規模なものは初めて。最初は不安もありましたが、同じくらい楽しみにしていました。この撮影手法で1年間撮影していた『キングオージャー』のキャストのみんなはすごいと思いました。僕たちは通常のドラマと同じく、野外ロケが多かったですからね。背景はもちろん、暑さ、寒さなどの環境をある程度想像しながらお芝居をするのは難しかった一方で、貴重な経験をしている実感がありました。
酒井:……すごくいい話をしているんですけど、幸平は話している間ずっと僕の太ももを触ってるんです。触るなって!(笑)
――「うんぬんかんぬん」の出来事を経て、キングオージャーとドンブラザーズが力を合わせて「共通の敵」と戦う展開になった際、お2人はどんなお気持ちになりましたか。
酒井:なかなかいいチームになっていたんじゃないかって思いましたよ。それぞれ我が強い部分はありますが、タロウもギラもいい感じで力を合わせていましたし、「ワーッハッハッハ!」と笑うところでも息が合っていたよね。
樋口:そう。どっちも「高笑い」するキャラクターという共通項があるので、クワガタオージャーとドンモモタロウが並んだシーンは盛り上がるんじゃないかな。
――共演シーンで、特に印象的なところがあれば教えてください。
樋口:今の段階ではまだ言っちゃいけない「ネタバレ」シーンが一番印象に残っているんですけど(笑)、それ以外だと……僕ら(ドンブラザーズ)の衣装ってめちゃくちゃ「普通」なのに対して、キングオージャーはみんな衣装がカッコいい。今回、キングオージャーの世界に入った僕たちの誰が衣装で対抗できるのか、って考えてみたけど、みんなダメでした。普通なチームとお金持ちのチームの、見た目の差が激しい。それも僕らの味だと思いながらやっていました。
酒井:キングオージャーもドンブラザーズも全員死んでしまって、ハーカバーカにみんなが集まってにらみ合うシーンだよね(笑)。あのシーンは僕も強く印象に残っています。ドンブラザーズのみなさんが僕らのことをめっちゃ笑わしに来るもんですから!
樋口:あったねえ。
酒井:ドンブラの背中越しにキングオージャーの向きを撮るとき、自分たちの表情が映らないのをいいことに、ギャグを仕掛けてくるんですよ。
樋口:そうそう。顔で笑わせるんじゃなくて、ヒロさん(鈴木浩文:キジブラザー/雉野つよし役)とかが独特な動きでね。あくまでも芝居の流れで。
酒井:あの動きは、芝居じゃなかったように思うんだけど……(笑)
樋口:芝居です! お芝居(笑)
酒井:そんなこともあってみんなの笑いが絶えず、意外なほどスッと打ち解けて楽しく撮影ができました。
■キョウリュウレッド・竜星涼から
――同時上映となる『キングオージャーVSキョウリュウジャー』では、ギラが獣電戦隊キョウリュウジャーと「対決」することになります。今や多方面で活躍されている人気俳優の竜星涼さんが10年ぶりにキョウリュウレッド/ダイゴを演じられると話題を集めていますが、お2人は竜星さんにどんな印象を持たれていましたか。
樋口:僕はキョウリュウジャーとの共演がなかったから、残念でしたね。でも『ドンブラザーズ』を撮影しているころ、スタッフさんからよく竜星さんのお話を聞く機会がありました。『キングオージャーVSキョウリュウジャー』がどんな風になっているのか、観るのを楽しみにしています。
酒井:撮影でお会いする前は、なんとなくクールな方なのかな~って勝手にイメージしていたんですけど、顔合わせをしてお話をさせていただくと、めっちゃ僕のことを心配してくださって、良い意味でのギャップを感じました。「Gロッソ(のアクションショー)大変でしょう」とか、ご自身の体験を踏まえて気さくに声をかけてくださって、素敵だなって思いました。キョウリュウジャーのみなさんがそろって「キョウリュウチェンジ」するシーンがあるのですが、10年の歳月を経てもなお息がピッタリで、凄い! と感動しました。
樋口:凄い。さすがは先輩ヒーロー。ドンブラザーズも10周年のときまた集まって、息ピッタリで「アバターチェンジ」が出来たらいいなあ(笑)
――今回の『キョウリュウジャー』のように、将来『キングオージャー』、あるいは『ドンブラザーズ』が「共演」してみたい先輩スーパー戦隊はいますか?
樋口:『ドンブラザーズ』は以前、『忍風戦隊ハリケンジャー』(2002年)や『爆竜戦隊アバレンジャー』(2003年)と共演(TTFCオリジナル作品)していますけど、僕たちも『キョウリュウジャー』と共演してみたいですね。特撮ドラマの中でも人気が高いですし(笑)
酒井:僕は幼いころ『ハリケンジャー』が好きでしたから、会ってみたい(笑)。コラボするとしたら、『侍戦隊シンケンジャー』(2009年)なんてどうでしょう。キングオージャーとは「剣」という共通点がありますから。
樋口:『シンケンジャー』は「殿(シンケンレッド/志葉丈瑠)と家来たち」じゃないですか。ドンブラザーズは「タロウとお供たち」というチーム編成が似ているし、「和」のテイストも似ているから、共演したらどんなお話になるのか、興味があります。
酒井:個人的にヒーローとしてカッコいいなと思うのは『海賊戦隊ゴーカイジャー』(2011年)ですね。歴代スーパー戦隊のみなさんはみんなそれぞれ個性が強いので、どんな組み合わせでも「VS」が作れそう!
――現在は『爆上戦隊ブンブンジャー』(2024年)が大活躍しています。1年間の戦いを終えて先輩ヒーローとなったお2人に、改めて「スーパー戦隊」への思いを聞かせてください。
樋口:僕にとって『ドンブラザーズ』は原点でもあるし、自分の財産になっているのは間違いありません。テレビシリーズが終了してから1年、このタイミングでふたたび「スーパー戦隊」の現場に戻ってくることができてよかったと思いました。スタッフの方々や共演のみんなともう1回会えるのは楽しくもあるし、これからもっと頑張ろうと思える起爆剤にもなります。今後もっともっといろんなところで仕事をして、また5年後、10年後、20年後とかで戻ってきて「初めて主演した作品」に恩返しをしたい。『キングオージャーVSドンブラザーズ』の撮影は、そんな風に思える素敵な時間が流れていました。
酒井:『キングオージャー』のテレビシリーズを終え、これからいろんな現場で経験を重ねていきたいと思っています。そうやっていくうち、いま幸平が言ってくれたような気持ちになるのかな……と思うと、もっと頑張らなければ! という気持ちが自然と湧き上がってきます。幸平たちと一緒に『キングオージャーVSドンブラザーズ』を撮影している中で、そんな思いを抱きました。
――最後にお2人から『キングオージャーVSドンブラザーズ』の見どころを、ぜひお願いします!
酒井:キングオージャーとドンブラザーズ、お互いに個性の強いキャラクターばっかりで、それらが融合した作品となりました。楽しみにしてください!
樋口:キングオージャーのみなさんと共演し、そしてドンブラザーズの仲間と再会できて、とても楽しい現場でした。みんなが心の底から楽しんでいる姿も作品の中に入っていると思いますので、ぜひそんな雰囲気を劇場でご覧ください!
■酒井大成
1998年4月1日生まれ。福岡県出身。2021年末から2022年にかけて行われた「レプロ30周年主役オーディション」に合格し、芸能界入り。FUNKY MONKEY BΛBY'S「ROUTE16」ミュージックビデオや、BSテレ東で放送のテレビドラマ『親友は悪女』(23年)などに出演。
■樋口幸平
2000年11月30日生まれ、兵庫県出身。2020年よりモデル・俳優として芸能界入り。『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』(22年)ドンモモタロウ/桃井タロウ役で主演を務めた。2024年4月から放送のテレビドラマ『約束 ~16年目の真実~』(読売テレビ・日本テレビ系)に出演中。