大河ドラマ『光る君へ』(NHK総合 毎週日曜20:00~ほか、28日は20:10~)で題字と書道指導を担当している書家・根本知氏にインタビュー。「光る君へ」という題字に込めた思いや、書家としての抱負を聞いた。
大河ドラマ第63作となる『光る君へ』は、平安時代を舞台に、のちに世界最古の長編小説といわれる『源氏物語』を生み出した紫式部の人生を描く物語。主人公・紫式部(まひろ)を吉高由里子、紫式部の生涯のソウルメイト・藤原道長を柄本佑が演じ、脚本は大石静氏が手掛けている。
タイトルバックで紫式部役の吉高由里子の儚げながら意志の強さも感じる表情とともに映し出される「光る君へ」という題字。根本氏は、書き悩んでいた時に監督から「仮に紫式部が道長に恋文を出す時に、『道長様へ』ではなく『光る君へ』と書いたとしたらどんな題字になるか見てみたい」と提案され、それが大きなヒントになったという。
「そこで世界が開けて、こうだ! というものを書くことができました。まひろが乗り移り、半分僕、半分まひろみたいなものになっています」
題字に込めた思いを尋ねると、根本氏は「日本書道の特徴と美しさ、魅力が見た瞬間に伝わるようにしたいと思いが一番です」と答えた。
「今までの大河ドラマの題字とは違う匂い、雰囲気を出せたらいいなと。仮名文字の『る』と『へ』を柔らかく書くというのはもちろん、漢字の表現の中に仮名のような優しい雰囲気を出すことに苦労しましたし、そこに力を入れました」
漢字も含めて、日本書道として表現しているという。
「『光』『る』『君』『へ』というように漢字、仮名、漢字、仮名となっていますが、中国、日本、中国、日本ではなく、すべて日本化したものたちの集合で、新しい調和を表現することを意識しています。『源氏物語』も意識し、儚きものに手を伸ばすようなふわっとした感じも大切にしました」
また、流れるように書く仮名文字の特徴を表現するために、つながりも意識したと説明する。
「仮名文字の一つの特徴として“流れ”があり、断絶することなく常に流れ続けています。それを題字で表せたらいいなと思い、動き続けているということにこだわり、すべて次につながるように書いています。はねた方向を見たら次の点画につながっているように。『へ』も止めるのではなく『光』に戻ってくるように書きました」