第72期王座戦(主催:日本経済新聞社、日本将棋連盟)は藤井聡太王座への挑戦権を争う挑戦者決定トーナメントが開幕。4月25日(木)には羽生善治九段―佐藤康光九段の一戦が東京・将棋会館で行われました。対局の結果、絶体絶命の終盤戦を耐え抜いた羽生九段が103手で勝利、逆転で2回戦進出を決めています。
169局目の黄金カード
両者の対戦成績は羽生九段113勝、佐藤九段55勝。相掛かり空中戦に進んだ本局は先手の羽生九段が軽快な攻めを披露します。歩を3枚連続で突き捨てたのは「開戦は歩の突き捨てから」の格言通りの仕掛けで、手順に後手の桂頭を目標とする意図が見て取れます。
羽生九段が桂得を主張すれば佐藤九段も敵陣に竜を作って互角の中盤戦が進展。直後に発生した駒の取り合いは互角の取引ながら、佐藤九段は直後に好手を用意していました。竜を引いての王手角取りが単純ながら厳しい手。駒得の佐藤九段が優位に立ちました。
二夜連続で終盤のドラマ
駒損の羽生九段が猛攻を開始したところ、佐藤九段はここをチャンスと一気にギアチェンジ。攻防の竜を質駒の成桂と刺し違えたのはハッとする一手です。先手玉には即詰みこそないものの、後手から王手の連続で手順に詰めろ逃れの必死がかかる仕組みと思われました。
佐藤九段の着地間近と見られた最終盤にドラマが待っていました。角を打って王手した手が結果的に敗着。自陣二段目に玉を突進されてみると途端に先手玉への寄り筋が見えません。代えては二段目に飛車を打って必死をかけるのが正着で、後手勝勢の展開が予想されました。
終局時刻は21時32分、最後は寄せの手段なしと認めた佐藤九段が投了。終局図で羽生九段は入玉に成功しており、豊富な持ち駒もあって再逆転は難しい形でした。勝った羽生九段はベスト8に進出、次戦で糸谷哲郎八段―千田翔太八段と対戦します。
水留啓(将棋情報局)