買取店などで働く「鑑定士」は、顧客が持ち込んだ品物を査定し、買い取りを行います。接客が必要なサービス業の中でも特徴的な仕事ですが、鑑定士になるのに資格は必要なのでしょうか。
この記事では、鑑定士の仕事内容や必要な資格・スキル、なり方について解説しています。中でも、金・貴金属や宝石、ブランド品を査定する鑑定士をピックアップしましたので、これらの鑑定に興味がある…という方はぜひご覧ください。
■「金・貴金属の鑑定士」をするのに資格は必要?
<必要な資格やスキル>
金・貴金属の鑑定士とは、金や貴金属の価値を判断する人のことです。ただし、「金・貴金属鑑定士」という資格はなく、あくまで買取専門店や貴金属専門店、中古品店などで査定を行う人をこう呼んでいます。鑑定士になるのに年齢や性別、学歴などの条件はなく、誰でも金・貴金属の鑑定士を目指せます。
ただし、金や貴金属の鑑定は、簡単にできるものではありません。金や貴金属を鑑定する際は、品物の純度や刻印、重量などを調べます。刻印の表記にも種類があるため、これらをひとつ一つ覚えなければなりません。
また、金・貴金属の価値は相場によっても変わりますので、貴金属の重量を相場に照らし合わせて計算するスキルもいります。宝石がついているジュエリーを鑑定する場合、宝石の知識も求められるでしょう。さらに、持ち込まれるアイテムの中には偽物も紛れていますので、本物かどうか見極める目も必要です。
このように、金・貴金属の鑑定に資格はいりませんが、充分な知識や経験がなければ金や貴金属を正しく鑑定し、適切な買取価格をつけることはできません。
また、金・貴金属に限った話ではありませんが、鑑定士は、ただ品物を鑑定するだけでなく、買取金額を出し、顧客に納得してもらえるよう説明する必要があります。特に、顧客が予想した金額より安い買取金額だった場合、その査定金額になった理由をわかりやすく伝えなければなりません。
鑑定士には鑑定のスキルも重要ですが、顧客目線で丁寧に話すコミュニケーション能力も大切なスキルの一つでしょう。
<金・貴金属の鑑定士になるには>
金・貴金属の鑑定士になるには、金の買取や販売を行う店に就職するのが一般的な方法です。勉強して知識を身に付けることも大切ですが、実際に品物を見て、その価値を見極められるようになる訓練も欠かせないからです。
金・貴金属には一定の需要があり、特に大手の買取業者では、鑑定士が多く募集されています。先ほどもあったように、鑑定士になるための条件はありませんので、未経験でも求人に応募できるでしょう。
ただし、店によっては経験者を優遇している場合や、応募条件が設けられている場合もあります。また、未経験で入社できたとしても、その後の勉強は人一倍大変なものになりますので、覚悟が必要でしょう。
なお、買取店には、金・貴金属を専門的に扱う店だけでなく、ジュエリーや時計など、さまざまなジャンルのブランド品を扱う店も少なくありません。そうした店で働く場合、金・貴金属以外のアイテムの査定知識が必要になることも頭に入れておきましょう。
■「宝石鑑定士」 には民間資格がある
<必要な資格やスキル>
宝石には、ダイヤモンドやパールのほか、ルビーやエメラルドなどさまざまな種類があります。宝石鑑定士とは、そうした宝石類を査定し、どのくらいの価値になるのか判断するプロフェッショナルです。また、宝石鑑定士には、宝石を査定するだけでなく、宝石が本物かどうか見極めることも求められます。
宝石鑑定士が活躍する場は多く、買取店をはじめ、デパートの宝石売り場や輸入代理店など、宝石を取り扱うさまざまな店で働くことができます。宝石の重量や色、形、透明度などを見て、その価値を判断します。
このような査定を行う宝石鑑定士ですが、宝石鑑定士に国家資格はありません。ただし、宝石を見極めるための知識やスキルは必須です。また、海外や国内に鑑定士資格を発行する団体がいくつかあり、それらの団体から認定を受けると民間資格を得ることができます。
中でも、GIA(米国宝石学会)が発行する「G.G」やGem-A(英国宝石協会)が発行する「FGA」は、宝石鑑定士としての信頼性が特に高いとされています。
・「G.G」(Graduate Gemologist)
「G.G」はGIA(米国宝石学会)が発行しており、世界で最も認められている宝石鑑定士資格と言えます。米国宝石学会は、ダイヤモンドの品質を決める「4C」の基準を作ったことでも知られています。
G.Gを取得するには、GIA独自のカリキュラムに従い、ダイヤモンド・カラーストーンそれぞれの全ての宝石学を習得しなければなりません。
・「FGA」(Fellow of the Gemmological Association)
「FGA」はGem-A(英国宝石協会)が認定・発行する宝石鑑定士資格です。G.Gと並び、世界的に知名度の高い資格となっています。
FGAを取得するには、ダイヤモンドとカラーストーンについて幅広い知識を身に付け、基礎試験と応用試験の両方に合格する必要があります。
これら海外の鑑定士資格でも、日本のビジネススクールを利用して取得が可能ですが、簡単に合格することはできない難しい資格です。この2つの資格のほかにもさまざまな資格があり、たとえば日本では、ジュエリービジネススクールが「JBS宝石・ジュエリー鑑定士」の資格を発行しています。
<宝石鑑定士になるには>
宝石鑑定士は、宝石を査定し、その価値を判断することが仕事です。買取店の場合、宝石が持ち込まれたら、まずはその品物が本物かどうか見極めます。本物だった場合、次は宝石のグレードについて調べていきます。
たとえば、カラーストーンの場合、後から着色されたようなものは天然の石と比べて価値が下がりますので、このような見極めを行うのも宝石鑑定士の大事な仕事です。また、ダイヤモンドの場合、重さのカラット、カラー、透明度を表すクラリティ、カットの「4つのC」において正しく判断する必要があります。
さらに、カラーストーンやダイヤモンドの鑑定書や鑑別書を作るのも宝石鑑定士の仕事です。
宝石鑑定士として働いている多くの人は、地道に勉強し、長い時間をかけて資格を取得しています。独学でも学べますが、通信講座やビジネススクールを活用すると効率的でしょう。
金・貴金属と同じく、宝石にも一定の需要があり、宝石鑑定士にも多くの求人が出ています。宝石鑑定士には若い人から高齢の方まで幅広い年齢層の人がいて、何歳からでも働けますが、募集に条件が設けられている場合もあるため注意が必要です。
■「ブランド品鑑定士」に有利な資格とは
<必要な資格やスキル>
ブランド品鑑定士とは、リサイクルショップや質屋などブランド品を買い取る店舗において、買取を依頼されたブランド品が本物か判断し、その価値を見極める仕事です。また、品物の状態や市場における需要から、買取価格の設定も行います。
ブランド品鑑定士も、金・貴金属や宝石の鑑定士と同様、資格が必要なわけではありません。ただし、「協会基準判定士」という資格があると、ブランド品鑑定士になるのに有利と言われています。
協会基準判定士とは、並行輸入ブランド品、中古ブランド品を扱うために必要な知識を習得することを目的とした資格です。一般社団法人 日本流通自主管理協会が実施している研修や試験をクリアすることで取得できます。
研修は、オンライン講習による「ソフト研修」と実地研修を含む「ハード研修」からなり、ブランド品を扱うための知識を総合的に学ぶことができます。
ただし、協会基準判定士になるには、日本流通自主管理協会の会員企業に属していることが必要ですので、気を付けましょう。
<ブランド品鑑定士になるには>
ブランド品鑑定士として働くには、ブランド品買取店に就職するのが一番の近道です。金・貴金属や宝石の鑑定などにも通じますが、鑑定士として活躍するためには、一つでも多くのブランド品を鑑定する環境に身を置き、経験を積むことが大切でしょう。
「資格がなくても就職できる? 」と心配になるかもしれませんが、「未経験可」とするブランド品買取店も多くあります。そうした店舗では研修制度が設けられており、ブランド品の鑑定・査定方法について教育が受けられます。
研修制度のあるブランド品買取店なら、未経験でもブランド品鑑定士として活躍するチャンスがありますので、研修の有無を確認して求人に応募するといいでしょう。
■買取店の営業には「古物商許可」が必要
これまでご紹介してきた鑑定士には、民間資格や持っていると有利な資格は存在しますが、必ずしも資格がなくても鑑定士として働くことは可能です。ただし、買取店を営業するには、「古物商許可」を取得しなければなりません。
古物商許可は、中古品(新品未開封含む)を扱う業者として開業する場合に必要なもので、営業所を管轄する警察署に申請を行います。無許可で営業を行うと、「懲役3年または100万円以下の罰金」が課せられます。
古物商許可の有無は、信頼できる店舗かどうかを見極める1つのポイントになります。買取店への就職を希望する場合、念のため、古物商許可を取っているか確認しておきましょう。
■鑑定士の経験が積める職場を目指そう
「鑑定士」と聞くと、「資格がないとできない仕事」というイメージがありますが、金・貴金属や宝石、ブランド品を鑑定するのに必ずしも資格は必要ありません。ただし、宝石には民間資格があり、特に「G.G」や「FGA」を持っていると信頼度が高まると言われています。また、ブランド品の扱いについて学べる「協会基準判定士」という資格もあります。
鑑定士として活躍するには、こうした資格取得も視野に入れつつ、実際に鑑定の経験が積める職場への就職を目指しましょう。