パナソニック サイクルテックの子ども乗せ電動アシスト自転車「ギュット・アニーズ・DX・押し歩き」を発表、新たに「押し歩き機能」と「ずり下がり抑制機能」が搭載されました。押し歩きがキツい、坂からずり下がるという長年の悩みは解決するのか……試してみたいと思います。

  • 「ギュット・アニーズ・DX・押し歩き」の「押し歩き機能」と「ずり下がり抑制機能」を試しました

運転するよりも押し歩くほうが大変な子乗せ電動アシスト自転車

4月16日、パナソニック サイクルテック(以下、パナソニック)は国内初の「押し歩き機能」を搭載した幼児2人同乗用電動アシスト自転車「ギュット・アニーズ・DX・押し歩き」を6月下旬より順次発売することを発表しました。メーカー希望小売価格は183,000円(税込)です。

  • 6月下旬より順次発売される「ギュット・アニーズ・DX・押し歩き」

注目は「押し歩き機能」と「ずり下がり抑制機能」です。日本で独自に進化した子ども乗せ自転車は、電動自転車の重量、チャイルドシートの重量、子ども二人の重量、運転する大人の重量、手荷物の重量などをパワフルなモーターのアシストによってしっかりと支え、安定した走行を可能としています。

しかし、商店街や公園、歩道橋などの自転車走行が禁止されるシーンでは、当然ながら自転車を押して歩かなければなりません。パナソニック サイクルテックによると、その際の押し歩く重さは、自転車(約32kg)と子ども2人+荷物(合わせて30kgまで)、付属で装着する前用チャイルドシート(約3.4kg)によって最大約66kgにもなるケースがあるそうです。

実際、子どもや荷物を載せたまま商店街を押し歩き、へとへとになる経験をしたママ・パパは多いと思います(筆者もそのひとりです)。これが歩道橋になると坂が加わってさらに大変。しっかり自転車を支えていないと自転車がずり下がりそうになるから危険ですし、もう必死で自転車を押し上げています。

そんな子乗せ電動アシスト自転車の悩みに応えるべく、パナソニックが新たに提案するのが「ギュット・アニーズ・DX・押し歩き」です。

  • マットジェットブラック、ホワイトグレー、マットダークオリーブ、バーガンディ、マットシャインネイビーの5色が展開されます

子育て世代の声から生まれた「押し歩き機能」

この「押し歩き機能」は、子育て世代の女性社員の発案から生まれたそうです。2014年に開発に着手し、押し歩き機能を始めて搭載した電動アシスト自転車「ビビ・L・押し歩き」が2021年に発売。この「ビビ・L・押し歩き」は、わずか一カ月で年間の企画台数分を受注する大きなヒット商品になりました。

  • 2021年発売の「ビビ・L・押し歩き」は一カ月で年間企画台数分を受注したそうです

子乗せ電動アシスト自転車に「押し歩き機能」を搭載するにあたって、パナソニックでは安全面に考慮したさまざまな機構をプラスしました。その代表的な機能が、「サドル傾斜センサー」です。

「ギュット・アニーズ・DX・押し歩き」で「押し歩き機能」を使うためには、サドル後方のレバーを上にあげ、そのままサドルを引き上げてから、左ハンドルに取り付けられた押し歩きボタンを親指で押す必要があります。これは、乗車時に推し歩き機能が作動しないようにするための工夫です。また、誤ってサドル部に指を挟んでしまわないよう、可動部を樹脂カバーで覆われています。

  • サドル後方にレバーに指を掛け、サドルごと上に引き上げます

  • サドルを上げた状態。これで「押し歩き機能」が使える状態になりました

このような機構を採用した理由は、実は安全面だけにあるのではありません。押し歩き機能は「ボタンを押すことでモーターが自転車を走らせる機能」と言えます。現在の道路交通法において、車道で電動アシストを行える速度は時速24kmまでです。しかし、歩道を走行できる速度は6km以下と定められています。

よって、速度が時速6km以下であり、歩行者扱いとなる「歩道通行車」であることが周囲からでも分かる状態にしなければなりませんでした。サドルを押し上げることで物理的に「乗れない」状態にしているのは、そんな配慮でもあったのです。

押し歩き機能の効果を実感、モーターがグングン押してくれる!

では、「押し歩き機能」は実際にどれくらいの効果があるのか、試してみましょう。サドルを引き上げると、左ハンドルにある液晶画面が「オシアルキ」という表記に変わります。この状態で押し歩きボタンを押し続けている間、「押し歩き機能」が動作します。

押し歩きボタンを押している間は、自転車自身が前に進んでくれます。その速度は、時速3~5kmと、時速4~6kmの二段階です。人の大勢居る商店街や歩幅の小さい女性は1段階目、坂道を登るときや人のいないところでスイスイ歩きたいときは2段階目を利用すると良さそうです。

  • 押し歩きボタンと液晶画面。画面には「オシアルキ」という文字と2段階の速度が表示されます

とくにその効果が大きいのはやはり坂道です。押し歩き速度を2段階目にすると自転車の重さがスッと消え、安心感を持って坂を上ることができました。その力は思いのほか強力で、モーターがグングン前に押してくれることを実感できるでしょう。

  • 苦労する坂道もスイスイと登れます。負担軽減もさることながら、やはり安心感に大きな違いを感じました

この状況で怖いのは、押し歩きボタンから指を離してしまい、急に負荷が掛かってしまうことです。こういった危険を防ぐために「ずり下がり抑制機能」があります。

坂の途中でボタンから指が離れると、液晶画面に「10」「サガリヨクセイ」と表示され、一秒ごとに数字が減っていきます。これが「ずり下がり抑制機能」の作動を表しており、モーターによって10秒間だけずり下がるのを抑制してくれるのです。

  • 「ずり下がり抑制機能」が動作した際の液晶画面。一秒ごとに数字が減っていき、ゼロになると抑制が切れます

10秒というと案外短いように感じますが、押し歩きボタンを再び押せばカウントはリセットされ、再びボタンから指が離れると、また10秒間の「ずり下がり抑制機能」が作動します。重さを感じさせずに止まることができるのは、非常に心強いと感じました。

一方、平地では「押し歩き機能」の速度が速すぎ、自転車に引っ張られてしまう感覚を覚えることもあります。「ギュット・アニーズ・DX・押し歩き」は子育て世代をターゲットとしており、高齢者をターゲットにした「ビビ・L・押し歩き」よりも若干速度を早めているそうです。状況によってアシスト速度を切り替えることで安全に利用することができるでしょう。

子乗せ電動アシスト自転車の安全性を引き上げた一台

子乗せ電動アシスト自転車は、いまや日本の子育てシーンに欠かせないアイテムと言えます。しかし、その重量は成人男性が取り扱っても非常に重く、運転していない状態ではかえって安全に取り回せないため、可能な限り乗車した状態になる、という大きなジレンマを抱えていました。

「ギュット・アニーズ・DX・押し歩き」はそんな状況を変え、安全な押し歩きの実現に向けて一歩踏み出した一台と言えるでしょう。これから子乗せ電動アシスト自転車の購入を検討している方は、店頭などでぜひ一度その効果を体験してみてください。