藤井聡太名人に豊島将之九段が挑戦する第82期名人戦七番勝負(主催:毎日新聞社・朝日新聞社)は、第2局が4月23日(火)・24日(水)に千葉県成田市の「成田山 新勝寺」で行われました。相掛かりのねじり合いに進んだ対局は、終盤で一瞬の隙を突いて逆転に成功した藤井名人が126手で勝利。開幕2連勝として防衛に大きく前進しました。
豊島九段のひねり飛車
黒星発進の豊島九段ですが、前日の会見では「第1局の手ごたえを生かして頑張りたい」とやる気十分。先手番で迎えた本局でひねり飛車に組んだのが用意の策でした。序盤はともにスローペースで進展、左辺で桂交換が行われたところで豊島九段が封じ手としました。
立会人の森内俊之九段の合図で対局再開。開かれた封じ手は自陣のスキを消す堅実な歩打ちでしたが、後手の藤井名人はこれに対し機敏に反応。怒涛の攻めで主導権を握ります。右辺の端攻めで桂を入手したのが好着想で、この桂を首尾よく飛車との交換に持ち込みました。
豊島九段が抜け出すも...
先攻を許した豊島九段も辛抱強く指して決め手を与えません。むしろ桂跳ねで後手の攻めの拠点を払ったのは手ごたえの一手で、これを着手する豊島九段の落ち着いた手つきと、藤井名人のうなだれた場面が好対照に。盤上にはにわかに攻守逆転の雰囲気が出てきました。
難解な押し引きから抜け出した豊島九段は手番を握って敵陣に食いつきます。千日手に持ち込む権利もありますが、これを打開して竜のにらみを生かした寄せが決まるのは時間の問題かと思われました。しかし両者一分将棋を目前に控えた最終盤で問題の一手が出ます。
待っていたドラマ
後手玉への寄せに目が行きそうな局面で、豊島九段が一転して受けに回ったのが控室を騒然とさせた手。これによって純粋に攻め合いの速度が一手逆転しています。九死に一生を得た藤井名人は先手陣に角を打ち込み反撃開始。続く桂打ちが詰めろとなっては一転して後手優勢です。
終局時刻は21時19分、豊島九段が投了。豊島九段は局後、千日手になるかわからなかったこと、打開してもその後の攻め筋に自信が持てなかったことを明かしました。第3局は5月8日(水)・9日(木)に東京都大田区の「羽田空港第1ターミナル」で行われます。
水留啓(将棋情報局)