メルセデス・ベンツは4月24日、中国北京で「G580」を発表した。G580は、GクラスのEV版。2021年に発表された「コンセプトEQG」の市販型である。なお、Gクラスは今年3月に大幅改良版を発表したばかりで、そこにEV版の「G580」が加わることになる。
メルセデス・ベンツのEVといえば「EQA」、「EQB」、「EQC」といったように、「EQ」を車名に冠していた。しかし今回のGクラスEVは「EQG」ではなく「G580」。昨年からウワサされていた「EQ」ブランド廃止が決定的になったということだろうか。
そんなG580は、EVであろうとも本格オフローダーとしての伝統を守り続けている。内燃機モデル同様にラダーフレームを採用、サスペンションはフロントがダブルウイッシュボーン、リヤは新開発のリジッドタイプだ。
また、最低地上高は250mm、最大渡河性能は850mm、アプローチアングル32°/ディパーチャーアングル30.7°/ブレークオーバーハング20.3°を確保。最大安定斜角は35°だ。
駆動用リチウムイオンバッテリーの容量は116kWh。これをラダーフレームに組み込み、低重心化を図っている。なお、一充電走行距離は最大473km(WLTPモード)。このバッテリーは水などの侵入を防ぐために、強固なケースに納められ、車体に搭載される。また、カーボンを含むさまざまな素材で構成されたアンダーボディによって、衝撃からも保護するという。
駆動用モーターは4つ。各104kWを発生するモーターは、それぞれホイールの近くに配置され、個別に制御可能。合計最大出力は432kW(587ps)、合計最大トルクは1164Nmを発揮する。
G580は、4つのモーターによる革新的な駆動コンセプトも特徴。「G-TURN」や「G-STEERING」といったオフロード走行用のユニークな機能を有している。
G-TURNとは、ほぼその場でクルッと向きを変えられる機能。未舗装路などにおいて、思った方向に最大2回転まで車両旋回が行えるという。例えば前方に障害物があり前進できない、もしくは切り返しが難しいときなどに便利だろう。これは4つのモーターにより4つのタイヤが独立して駆動可能で、車両の右側と左側のタイヤを反対方向に回転できるから。戦車のような動きになるわけだ。
G-STEERINGは、オフロードなどを走行する際に小回りを効かせる機能のこと。車両の向きを変えながら、個々の駆動輪トルクを制御することで、角度のきつい曲がり角などで効果を発揮する。この機能は、25km/hまで使用可能だ。
そしてEVながらG580はサウンドにもこだわっている。「G-ROAR」と呼ばれ、V8サウンドからインスピレーションを得た。それはほかのメルセデスEVとは意図的に差別化され、深みのある低音を轟かせるという。「コンフォート」モードでは控えめなサウンドだが、「スポーツ」モードを選ぶと力強くエモーショナルな音になる。
エクステリアは、誰がどう見ても「Gクラス」。内燃機モデルとの識別点は、水平方向に4つのルーバーを備えたラジエーターグリルに加えて、わずかに盛り上がったボンネットと後輪アーチ部の「エアカーテン」など。また、5本のツインスポークデザインの18インチアルミホイールは、空力にも配慮されたデザインとなっている。
後部ドアにオプションのボックスを用意しているのもG580の特徴だ。このボックスに、充電ケーブル、工具などのアイテムを簡単に収納可能だ。もちろん、おなじみのスペアタイヤ(カバー付き)も選択できる。
インテリアも典型的なGクラスデザイン。12.3インチのMBUXインフォテインメントシステムが標準装備で、「ヘイ、メルセデス」と言わなくても特定のアクションを起動させられるようになったのも特徴である。
価格は、発売時の特別モデル「EDITION ONE」が19,2524.15ユーロ(1ユーロ:165円換算で約3177万円)。生産は、オーストリアのマグナ・シュタイアーで行われる。日本への導入について現時点で確報はないがは、早くても2025年中といったところだろうか。
〈文=ドライバーWeb編集部〉