5月6日、東京ドーム『Prime Video Presents Live Boxing 8』まで、あと2週間を切った。4団体(WBA、WBC、IBF、WBO)統一世界スーパーバンタム級タイトルマッチを闘う王者・井上尚弥(大橋)、挑戦者のルイス・ネリはともに最終調整に入っている。
4月21日に来日したネリは、その2日後の23日に帝拳ジムでメディアに練習を公開した。そこで彼が口にしたこととは? そして“番狂わせ”を起こすための秘策はあるのか?
■「いずれが勝つにせよKOで決まる」
「5カ月間しっかりと練習をしてきてMAXのコンディションだ。世界戦に必要なメニューをすべて消化してきた。ここまでに出来に満足している。減量も順調で、過去の試合前よりも10~20倍良くカラダが仕上がっている」
公開練習直前、顎に髭を蓄えたネリは落ち着いた口調でそう話した。
集まったメディアから、さまざまな質問が飛ぶ。
──ドーピング検査は受けたのか?
「3回受けて、すべて陰性で何の問題もない。最後に受けたのは20日前だ」
──井上に対する現在のあなたの評価は? 以前のインタビューでは「井上は過大評価されている」とも話していたが。
「イノウエは、グレートなボクサーだ。スピードがありパワフルでキャパシティもある。
それでも過大評価されているとは思う。(マーロン・)タパレス(フィリピン)を倒すのに10ラウンドまでかかってしまう選手に過ぎない。バスケットボール界におけるマイケル・ジョーダンのような特別な存在ではないということだ」
──今回、井上と闘うことにはどんな思いがあるのか?
「4年前からずっと、イノウエと闘いたいと思っていた。彼と闘うために3回も次期挑戦者決定戦をクリアしたのに実現しなかったからね。WBSS(ワールド・ボクシング・スーパーシリーズ/バンタム級で井上が優勝)への出場も希望したが出られず、凄く長く待った。ようやく闘える、とても嬉しい」
──「井上優位」の声が大きいが、それについては?
「当然だと思う。井上は無敗の世界王者だ。でも私にも勝機はある。2人にとって厳しい試合になるだろう。厳しさを感じるのは私だけではなくイノウエもだ。いずれが勝つにせよKO決着になる」
■「イノウエの弱点を見つけた」
挑発的な質問もあったが、ネリは至って冷静に受け答えをしていた。
そして、彼の隣に座ったチーフトレーナーのサニール・ロサーナ氏も幾つか発言している。興味深いと思ったのは次の件だ。
「5月6日、イノウエは驚くことだろう。彼のスパーリングパートナーを務めたメキシコ人選手から話を聞いて意見ももらった。研究は終えており、すでに幾つかの彼のウィークポイントも把握している」
ネリも言った。
「私たちが見つけたウィークポイントが何かは、いまは言えない。そこは試合でわかると思う。楽しみにしていて欲しい」
ネリ陣営が見つけた井上の弱点とは何か?
この日、帝拳ジムには大橋ジムの大橋秀行会長、井上尚弥の父・真吾トレーナーも姿を見せていた。
その前でネリは各1分のシャドーボクシングとミット打ちを披露。公開練習は短時間で終了した。
その直後、井上真吾氏は言った。
「(公開練習を)本気では動いていないと思いますけど、パワフルではあってもキレは感じませんでした」
弱点があると指摘されたことについても「みんな、そう言うんですよ」と一蹴。
さらにスパーリングパートナーから情報が漏れたとされることについても触れる。
「どうなんですかね。スパーリングパートナーが何か言ったのかどうかも知りませんが、そこは何とも思わないです」と意に介していない様子だった。
ネリ陣営が本当に井上の弱点を見出したのか、井上のスパーリングパートナーから情報提供があったのか…いずれも確かではない。
ただ一つ強く感じたのは、ネリの中に迷いがないこと。この日の落ち着いた様子から、すでにやるべきことを決めているように思えた。
ネリの「やるべきこと」とは何なのか? 井上のこれまでの対戦相手とネリは何処が違うのか? そして勝つのはどっちだ!?
次回(4月25日)、「井上尚弥vs.ルイス・ネリは、こうなる!『5・6東京ドーム決戦』」をお届けする。
▼井上真吾氏、ネリのミット打ちを視察し「キレとかは感じなかった」井上尚弥の現在の状態にも言及『Prime Video Presents Live Boxing 8』公開練習
文/近藤隆夫