三菱ふそうトラック・バスは2024年4月15日、コロナ禍前後のバス事業の動向に関する説明会を開催した。
三菱ふそうのバスは、三菱ふそうトラック・バスの川崎工場でエンジンやトランスミッションなどのコンポーネントを生産し、富山にある工場(三菱ふそうバス製造)で車体の製造を行っている。
2020年から2022年のコロナ禍では、観光業の深刻なダメージを受けてバスの需要は大きく落ち込み、特に大型観光バスはコロナ禍前2019年の総需要1947台に対して2022年は191台にまで激しく落ち込んだ。だが2023年には479台と回復基調となっている。このカテゴリーに属する三菱ふそうのモデルは、エアロクィーンやエアロエースで、2023年のシェアは両車合わせて64%である。
大型路線バスは2019年の総需要1617台が2021年に659台まで落ち込んだが、その後、回復基調を示し、2023年には1229台まで回復。大型路線バスは通勤・通学などに使われるため、代替え需要も一定数あるようである。三菱ふそうではエアロスターが大型路線バスの需要を担い、2023年のシェアは38%。
小型バスはコロナ禍前の2019年は総需要が5142台だったのに対して、2022年は1551台まで落ち込み、2023年には2606台まで回復している。コロナ禍が明け、人流が戻ることによってシャトルバスの需要が増えていることが影響しているようだ。三菱ふそうの小型バスはローザが担い、2023年のシェアは54%である。ちなみに、ローザは海外約80カ国に輸出を行っており、スクールバスなどの需要が堅調。生産台数は国内向けの約4倍あり、2019年の生産台数比で18%減(2023年)とコロナ禍前の水準に近づきつつある。
■コロナ禍を契機に新たな事業を開拓
さて、コロナ禍のなかで、三菱ふそうが行ったのは、バスの車内換気性能の啓蒙活動、そのほか抗ウイルス剤の室内塗布、運転席仕切りや窓開け換気用のバイザーといったコロナ感染防止用品の開発と販売であった。
また、バスの受注が激減したなかで、三菱ふそうバス製造は「ピンチをチャンスに変えよう」を合い言葉に、培ってきた技術を生かした新事業にチャレンジ。バスの内外装のリニューアルやボディプリントといった事業を新規開拓した。なかでも注目は、工場が近くにある光岡自動車との協業。トヨタRAV4をベースにしたSUV、バディへの再組み立てを三菱ふそうバス製造が行っているのである。
その経緯について三菱ふそうバス製造の藤岡佳一郎社長は次のように話している。
「きっかけは当社と光岡自動車さんの物理的なロケーションが近かったことです。5〜6年ほど前に、私たちの塗装工場で一部の部品の塗装をやっていたということがあり、そのご縁が始まりでした。コロナ禍になって生産台数が少なくなり、生産設備も余剰になってしまう一方で、光岡自動車さんのバディが爆発的に受注をし、バックオーダーを多く抱えているという状況のなかで、たまたまお会いしたときにその話になって、これは“ウィン-ウィンの関係”でできるのではないかと。ということで、いろいろと試作するなど模索したところ、先方のニーズと私たちの状況がマッチしてビジネスとしてやっていけるのではないかということになりました。このように地元のつながりというのが始まりになっています」
今後の見通しについては、先に述べたように大型路線バスや小型バスはコロナ禍前の水準近くまで回復。大型観光バスもインバウンドやさまざまなイベントが再開され、需要回復が見込まれるなかで、ユーザー(バス事業者)の要望を聞きながら適切なタイミングで車両を供給できるように取り組んでいくという。また、部品供給の課題に対応するために、生産計画での部品内示精度の向上とフレキシブルな生産対応を実施していくとのことである。
そのほか、ドライバー不足や2024年4月以降のドライバー稼働時間短縮などバス事業者が抱える課題に対処するため、三菱ふそうバス製造の人材をバスドライバーとして事業者に派遣する事業も検討しているという。
バス事業を取り巻く環境も回復に向かうなかで、三菱ふそうの取り組みにも注目したい。
〈文=ドライバーWeb編集部〉