オール・タイム・ロウが語る、結成20周年を祝うライブへの想い、ポップパンクの可能性

オール・タイム・ロウが2023年のジャパン・ツアーの振替公演で5月に来日する。オール・タイム・ロウと言えば、ポップパンク・シーンから登場、キャッチーなメロディと圧倒的な楽曲の良さ、精力的なライブ活動とで、世界中で熱狂的なファンに支持されてきたバンドだ。2020年の8thアルバム『Wake Up, Sunshine』、2023年の9thアルバム『Tell Me I'm Alive』では、ポップ・パンクの枠を超えたサウンドを聴かせながらも、オール・タイム・ロウらしさを失うことなく進化を続けている。今回のツアーは「All Time Low Forever」と謳って、結成20周年を祝うものらしい。ボーカル&ギターのアレックス・ガスカースに話を聞いた。

【写真を見る】アメリカでのライブの様子

ー実は2009年5月に来日した時にインタビューをしているのですが、あの時は初来日でしたよね。初来日は覚えていますか?

東京はとにかく大きな街だったから飛ばされたね。同時にいろいろなことが起きてる感じだった。渋谷の近くにある小さなホテルに泊まってて、外に出てコーヒーを探しに行ったのを覚えてるよ。すぐに迷子になってしまったけれど、道に迷いながらも日本の都会に驚き、夢中になっていった。角を曲がるといつだってクールなものが待ち構えてる感じだったから。

ーこれまで日本には何度も来ていますよね。PUNKSPRINGでも来ているし、サマーソニックには二度出演しているし、普通にツアーでも来ていますね。その中で特に思い出深いものはありますか?

サマーソニックはいつだってスペシャルだね。世界中からいろいろなバンドが出演してるし、一緒にツアーを回ったアメリカの友達のバンドもいるし、自分のお気に入りの日本のバンドを見つけるのも楽しみの一つなんだ。ONE OK ROCKは今では僕の友達なんだけど、最初に観たのはサマーソニックだった。それに、サマーソニックはお客さんも素晴らしい。あと、PUNKSPRINGの時にオフスプリングの単独公演があって、僕たちはオープニングを務めたんだよね。あれもスペシャルだった。日本に限らずオフスプリングと共演したのはあれが初めてだったんだ。自分の家から遠く離れたところで憧れのバンドと共演できたのはクールだったよ。

ーONE THOUSAND MILES TOUR 2016では、ONE OK ROCK、PVRISとともにツアーを回りましよね。2017年にはWATERPARKSとのジャパン・ツアーもありました。

ONE OK ROCKはアメリカに来て、僕たちのツアーのオープニングを務めてくれたんだ(2015年のBack To The Future Hearts Tour)。それで彼らは僕たちを日本に呼んでくれて、僕たちがオープニングを務めることになった。Takaが日本で人気者なのは知ってたけれど、あそこまでスゴい人気だというのはその時までわからなかった。Takaと一緒に歩いてると、10歩も歩かないうちに大勢の人に囲まれるんだ。あのツアーもスゴく楽しかったし、WATERPARKSとのツアーも楽しかった。そう考えると、日本で悪い思いをしたことって全くないんだよね。日本はいつだって僕たちにとって最高の場所だから。日本のファンはそれこそ草の根的なレベルから僕たちのことをサポートしてくれてるし、新しい曲も昔の曲も好きでいてくれるから素晴らしいよ。僕たちはスゴくラッキーだと思うね。

ー今回の来日ツアーは、「All Time Low Forever」と謳って、結成20周年を祝うものですよね。しかも今回は日本を皮切りにアジア・ツアーとして他のアジアの国も回ります。特別なツアーになりそうですね。

間違いないね。20年間バンドを続けられたことについては非常に誇りを持ってる。20年前にバンドを組んだ同じ4人のメンバーで今もやれてるんだからね。だからあらゆるところで20周年のお祝いをしたいんだ。どの場所も僕たちにとっては重要だからなんだ。さっきも話に出たけれど、日本に初めて行ったのは2009年だった。オール・タイム・ロウというバンドがどこに向かうのか、何を成し遂げたいのか、まだ試行錯誤をしてた本当の初期だったんだ。それでも最初からライブも盛り上がったし、僕たちにとって重要な場所になったから、何度も行くことになったんだ。行くたびに僕たちの進化した姿をオーディエンスに見せたいというのもあったしね。結成20周年をお祝いしようというアイデアが出てきた時、日本に行ってプレイするのは完璧だと思ったんだよね。

ー20年前の自分に今の自分が何かアドバイスをするとしたら、何になりますか?

「自分の直感を信じろ」だね。自分の直感に耳を傾けること。外部の影響に流されないこと。何年もバンドをやってきたから、大きなレーベルのエグゼクティブが登場することもあったし、人々が僕たちを利用しようとするようなこともあった。でもそういうのは僕たちのやり方とは合わなかったんだ。僕たちは常に最高の音楽を作ってきたと思うし、それはすべて自分たちの中から生まれたものだし、自分たちの直感を信じて、自分たちのハートに耳を傾けて、バンドにとって何が正しいのかを自分たちで感じ取ってやってきたことだったんだ。

手前左がボーカル&ギターのアレックス・ガスカース

世代を超えて広がる、オール・タイム・ロウの音楽

ー最近のライブのセットリストを見たのですが、1曲目は「Lost in Stereo」で、ラストの曲は「Dear Maria, Count Me In」というのが多いですね。この2曲は超クラシックな曲だと思いますが、バンドにとってはやはり重要な曲なんですね。

面白いのは、「Lost in Stereo」はシングルにもならなかったし、ラジオでもかからなかった曲なんだ。リリース後もしばらくはライブで「Lost in Stereo」をプレイすることもなかった。この曲は世界中のファンから愛されてきた曲なんだ。今となってはシングルにしておけば良かったと思うね(笑)。でもそれくらい僕たちのキャリアにとって大きな意味を持つ曲だ。それは「Dear Maria, Count Me In」も同じことで。この曲はシングルでリリースしたんだけど、大ヒットしたわけじゃなかった。それが何年か経った時にバイラルヒットしたんだ。ポップパンク、ポップロックのリバイバルによって、全く新しい世代のファンの間で人気になって。今ではポップパンクを代表する曲として、バンドの人気を超えたロック・ミュージックの一つになってしまったよ。

ーちなみに、「Dear Maria, Count Me In」に出てくるマリアというのはどういう女性なんですか?

マリアは地元の友達のダンサーなんだ。マリアのストーリーを曲にして、彼女を世界一有名にしたいと思ったんだ(笑)。

ーセットリストの中には最新アルバム『Tell Me I'm Alive』からの曲も多いと思いますが、セットリストはどのように考えていますか?

今回のツアーは何と言っても20周年のお祝いだからね。3週間ぐらいセットリストを考えてたよ。スゴく長いセットリストになったけれど、どの時代のオール・タイム・ロウも入ってる。昔の曲でもお祝いしたいし、新しい曲でもお祝いしたい。それをオーディエンスと一緒になってやれるわけだから、僕たちはスゴくラッキーだと思う。僕たちが今回のツアーでやりたいのは、今までのキャリアすべてに向けたオマージュなんだ。最近、共演した他のバンドから、「君たちのバンドを15年前に見た」とか、「最初に行ったライブはワープド・ツアーなんだ。これがうちの子供なんだけど、『Monsters』が好きなんだよ」とか言われるんだ。クールだよね。本当、世代を超えてきたという感じがするよ。

ー最新アルバム『Tell Me I'm Alive』のことも聞かせてください。自分がやっていることも、周りがやっていることも何も変わらぬままだけれど、自分的にはそれではOKだと思えないし、かと言って何か新しい行動を起こすわけでもない。そういうもやもやした感情が描かれていて、非常に共感を覚えたのですが、あれはコロナ禍以降、誰もが感じた感情だと思うんです。

あのアルバムにはたくさんの悲しみが込められてるね。描かれてるのは孤独であり、それに対するあまり良くない対処の仕方だったりするんだ。自分が前進してると感じるために必要なことをしたいよね。でもそれに伴う代償もあるんだ。究極を言うと、あのアルバムは暗い時期を乗り越えることを描いてて、乗り越えた先に行くまでの旅でもあるんだ。アルバムのラスト曲「Lost Along The Way」は、僕たちが乗り越えた先の向こう側に行けたという曲なんだ。だからあのアルバムの制作は僕たちにとって浄化作用みたいなものになった。コロナ禍以降はバンド活動も、ライブもできない状況で、メンバーの誰もがずっと重荷を背負ってたんだ。オール・タイム・ロウにとっては重いアルバムになってしまったけれど、僕たちが経験してきたことを的確に反映したものになったと思ってる。

ーテーマは重いですが、名曲ばかりですよね。サウンド的にはポップパンクの枠を超えて、よりロックというか、普遍的なグッドミュージックを追求しているように思いました。それでいてオール・タイム・ロウらしさは全く失っていないんですよね。制作はオープンマインドな姿勢で行われたのですか?

とにかくいろんなことをやりたかったんだ(笑)。僕たちのバックグラウンド、やりたかったことは間違いなくパンク・ロック・バンドだった。ブリンク182、グリーン・デイ、オフスプリングに憧れてたし、ラウドでファストな音楽をやりたかった。でもバンド活動を続けていくうちに、それが自分たちのやりたいことのほんの一面でしかないことに気がついたんだよね。いろいろなジャンルの音楽を聴いてたから、他のサウンドの要素も取り入れたくなったんだ。もちろんどのアルバムも、そのコアにはラウドでファストなパンク・ロックがある。ただそこに、パンク・ロック以外からの影響も取り入れたいと思ったんだ。『Tell Me I'm Alive』に関しては、僕が好きで聴いてるビートルズからの影響が入ってる。それで今回初めてピアノを入れたんだ。20年もやってると、新しいことをやりたくなるんだよね(笑)。

ーパンク・ロック以外からの影響についても聞きたいのですが、お父さんも大の音楽好きだったし、ギターを習った先生からはクラシック・ロックの洗礼も受けたんですよね。

僕が子供の時、父は音響の仕事をしてたから、家では常に音楽が流れてたんだ。父はジェネシス、ビートルズ、ピンク・フロイド、ニック・カーショウが好きだった。僕は80年代終わりに生まれ、90年代に育ったから、父の好きな音楽も90年代の音楽も聴いてた。クラシック・ロックを聴いてたら、いきなりニルヴァーナ、オフスプリングが出てきた感じさ。だからそういうものすべてが僕たちの音楽には入ってると思う。僕がギターを始めた時は、グリーン・デイの曲が弾ければそれでいいと思ってた。でもギターの先生からは、グリーン・デイ以上のことを練習しなきゃダメだって言われて、メタリカのようなバンドの曲も練習してたんだ。

ーそこは僕も同じですね。いろいろな音楽を聴いていましたが、パンク・ロックに出会った時、ギターの練習をしなくてすむと思いましたから(笑)。

そこなんだよ!(笑) でも同時に、それが理由でヴィルトゥオーソ(※きわめて高度な演奏技術をもつ演奏家を意味する言葉)のギター・プレイヤーとしての道を諦めることにもなった。パワーコードで曲が作れるってわかったら、練習よりも曲作りをやりたくなるからね(笑)。ギターは上手くならなかったけど、曲作りは上手くなったから、それはそれで良かったんだけど。

サウンド作りの秘訣

ー『Tell Me I'm Alive』では、アレックス自身がクリエイティブ・ディレクションと共同プロデュースを手がけていますよね。プロデュースにザック・セルヴィーニとアンドリュー・ゴールドスタインを迎えているのも、前作の『Wake Up, Sunshine』同様です。このチームでどのようにサウンド作りを追求していったのですか?

ザック・セルヴィーニは『Future Hearts』でジョン・フェルドマンの下で働いてて、『Wake Up, Sunshine』ではプロデューサーとして関わってくれた。彼はオール・タイム・ロウを聴いて育ったファンなんだよ。これ以上プロデュースに適任の人はいないよね。よくあるのは、プロデューサーが後からバンドの音楽について勉強を始めたり、プロデューサーがサウンドの方向性を最終的に決めたりすることなんだ。でもザックは元々ファンだから、オール・タイム・ロウらしさだけを考えてサウンドを追求してくれるんだよ。僕たちは常に新しいことをやりたいわけだから、オール・タイム・ロウをわかってくれてる人が横にいるのは本当にありがたいんだ。しかもファン目線でオール・タイム・ロウのサウンドを見てくれるから、そこは予想以上にヤバいことだと思ったね。

ーポップパンクについても聞きたいのですが、今は新世代も出てきていますし、リバイバルで盛り上がっていますよね。でもそういう中、オール・タイム・ロウはそこには寄せないで、我が道を突き進んでいるというイメージです。

今の盛り上がりを見るとうれしいと思うし、新世代のアーティストからもたくさん刺激をもらえてる。ウィローは素晴らしいアーティストだし、ナックル・パックのアルバムも素晴らしかった。でも素晴らしいアーティストがたくさんいるからこそ、僕たちがそこに戻って、また同じサウンドをやる必要はないんだよね(笑)。僕たちは前に突き進むのみだから。

ー何日か前でInstagramでスタジオの映像とともに「Coming soon foreal」とアップされていましたが、何を発表するつもりですか?

昔の曲をアップデートしたらどうなるんだろうと思ったんだ。15年前の曲は今の曲とはサウンドが違うからね。ライブで昔の曲をプレイしてる時も、その曲が『Wake Up, Sunshine』 とか『Tell Me I'm Alive』に入ってたら、どういうサウンドになるんだろう?って考えるんだ。僕たちは前よりも大人になったし、前よりも良いミュージシャンになった。今の僕たちがソングライター、レコーディング・アーティストとして持ってる新しい技を昔の曲に注入したら、昔の曲をまたどこか違うところに連れていけるんじゃないかと思ってて。まあどうなるかはわからないけれど、何らかの形でリリースするんじゃないかな。

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ーこのバンドが20年続いた秘訣は何かありますか? 今まで誰か他のメンバーを追い出そうと思ったことはなかったんですか?(笑)

なかったよ(笑)。でもそれが長く続いた秘訣なんじゃないかな。他のオプションは考えたこともなかったから。僕たちはお互いをブラザーだと思ってるし、このバンドはファミリーなんだ。問題が起こればしっかり解決するし、常に考えてたのは次のステップに行くことばかりだった。だから僕たちは常に前を向いて進むことができたんだと思う。

<INFORMATION>

ALL TIME LOW

Japan Tour 2024

東京

2024年5月7日(火)SHIBUYA Spotify O -EAST

OPEN 18:00 / START 19:00  TICKETS ¥7,500 (税込/All Standing /1ドリンク代別途必要)

※本公演は延期となった2023年4月25日(火)、26日(水)SHIBUYA Spotify O-EAST公演の振替公演となります。

クリエイティブマン:03-3499-6669

 

愛知

2024年5月8日(水)名古屋CLUB QUATTRO

OPEN 18:00 / START 19:00  TICKETS ¥7,500(税込/All Standing / 1ドリンク代別途必要)

※本公演は延期となった2023年4月28日(金)名古屋DIAMOND HALL公演の振替公演となります。

※名古屋の振替公演は公演会場が変更になっていますので、ご注意ください。

サンデーフォークプロモーション:052-320-9100

 

大阪

2024年5月9日(木)GORILLA HALL OSAKA

OPEN 17:00 →18:00 / START 18:00 →19:00 TICKETS ¥7,500(税込/All Standing / 1ドリンク代別途必要)

※本公演は延期となった大阪2023年4月29日(土)GORILLA HALL OSAKA公演の振替公演となります。

※大阪の振替公演はOpen/Start 時間が変更になります。ご注意ください。

キョードーインフォメーション:0570-200-888

 

https://www.creativeman.co.jp/event/all-time-low_2024/