大学生の就職観や働き方に対する価値観は、その時々の時代背景や経済環境に応じて常に変化しています。

近年の新卒者に関する就職環境は、長期的な人材不足を背景に学生優位の売り手市場の傾向が強まっていますが、そのような環境の中で、現在の学生はどのような視点や価値観をもって企業を選択しているのか、2024年4月に発表された「マイナビ2025年卒大学生就職意識調査」を基に探っていきます。

高まる大手企業志向。2年ぶりに半数を超える

まず注目したいのは、大手企業志向が高まっている点です。

「絶対に大手企業がよい」と「自分のやりたい仕事ができるのであれば大手企業がよい」の合計、いわゆる大手企業志向の数値が53.7%となり、2年ぶりに半数を超えました。

この数値は、2021年卒に過去最高の55.1%を記録していましたが、その後、2年連続で数値が下がり、2023年卒では48.5%、2024年卒は48.9%と、ともに50%を切る結果となっていました。

逆に、「やりがいのある仕事であれば中堅・中小企業でもよい」と「中堅・中小企業がよい」の合計は、2023年卒から2年連続で減少。2025年卒では42.9%となっています。

  • 企業志向(大手志向と中堅・中小志向) 出典:マイナビ 2025年卒大学生就職意識調査

企業選択で重視するのは「安定性」、「給与」に対する関心も上昇

企業選択のポイントでは、「安定している会社」が4 年連続で増加し、6 年連続で最多となっています。また、同じように上昇傾向なのが「給料の良い会社」で、3年連続で増加し23.6%となりました。

昨年から今年にかけて、さまざまな商品の値上げが続き、賃上げに関するニュースが大きく報じられるなかで、初任給や待遇に対する就活生の関心も高まっている様子がうかがえます。

逆に、長期的に下降傾向にあるのが「自分のやりたい仕事(職種)ができる会社」。2013年卒では44.5%でしたが、それ以降は年々減少し続け、2025年卒では28.6%にまで下降。あと数年もすれば、「給料の良い会社」と順位が入れ替わる可能性もありそうです。

  • 企業選択のポイント推移(02年卒~25年卒) 出典:マイナビ 2025年卒大学生就職意識調査

行きたくない会社のベスト3は、ノルマ、転勤、暗い雰囲気

一方、行きたくない会社についても質問への回答ベスト3は、「ノルマのきつそうな会社」、「転勤が多い会社」、「暗い雰囲気の会社」。「ノルマのきつそうな会社」については、過去8年、継続して上昇し、2025年卒では前年比0.7ポイント増の38.9%となりました。

また、「転勤が多い会社」についても傾向は同じで、2018年卒では18.1%でしたが、その後の7年で12.2ポイント増加。2025年卒では30.3%と初めて3割を超えました。

男女共同参画社会への意識が高まる中で、結婚後も仕事を継続したいと考える若い世代が増えているようです。できれば転勤は避けたいと思うのは、正直な気持ちと言えそうです。

逆に、ここ数年、減少傾向なのが「暗い雰囲気の会社」で、2012年卒では44.6%となっていましたが、それ以降は右肩下がりで数値は減少し、2025年卒では24.1%となっています。

実際に職場環境の改善が進んだからなのか、あるいは他の項目と比較して重要視されなくなったからなのか、要因は定かではありませんが、会社の雰囲気を心配する就活生は年々少なくなっているようです。

  • 行きたくない会社(04年卒~25年卒) 出典:マイナビ 2025年卒大学生就職意識調査

3年ぶりに増加も、盛り上がらない海外勤務志向

日本企業や日本社会のグローバル化が声高に叫ばれる中で、意外に盛り上がらないのが学生の海外勤務志向です。

「仕事内容に関わらず海外で勤務したい」「やりたい仕事があるので海外で勤務したい」「希望する勤務地なら海外で勤務したい」の合計が、2025年卒では40.0%。2019年卒と比較すると18.9ポイントも低下しています。

OECD(経済協力開発機構)や文部科学省の調査によると、日本人の海外留学生数は2004年をピークに減少し続けているようで、その要因として若者の「内向き志向」があるのではという分析をしている専門家もいます。

その傾向は企業選択の際にも共通しているのか、海外勤務に積極的ではない就活生の傾向が見て取れそうです。

  • 海外勤務志向について出典:マイナビ 2025年卒大学生就職意識調査

今回は、「マイナビ2025年卒大学生就職意識調査」を基に、2015年卒の就活生の就職観や企業選択で重視するポイントを整理しました。

学生優位の売り手市場の就職環境で、大手企業志向が高まり、仕事内容よりも安定&給与を求める傾向が強まっている傾向が見えてきました。