カナダのアウトドアブランド「アークテリクス」。ウェアの印象が強く、ファッションブランドのイメージがありますが、創業の原点は登山で使うハーネスで、本社では「自分たちはアウトドアギアのブランド」と常々言っているそうです。

そんなアークテリクスが4月20日~5月5日、初のブランド・エクスペリエンスイベント「ARC’TERYX MUSEUM」を原宿のキャットストリートで開催。前日の内覧会で会場を見てきました。

  • ブランド・エクスペリエンスイベント「ARC’TERYX MUSEUM」

アークテリクスの世界観を知る

ブランドパーパス「LEAVE IT BETTER(この世界を、より美しく。)」をテーマに3フロアで構成され、3階は映像インスタレーションにより、アークテリクスの世界観を伝え、2階はHarness、Backpack、Hard Shell Jacketがどのように開発されて現在に至っているのか、その変選を巡れる内容です。

  • 3階の映像インスタレーション

そして1階は「One hundred ARC'HIVES」として、アークテリクスと縁のある山岳ガイド、スキーガイド、さらには一般の利用者から借りたプロダクトが100点以上展示されています。

  • リアルユーザーの実際に使用したプロダクトを展示

  • 100点以上がズラリと並ぶのは圧巻

アーカイブは90年代から現在に至るまでのプロダクトで、実際に使用されたものたちという点では唯一無二の存在感を醸し出しているのが分かります。

  • 使い込まれたプロダクトの風格

  • 持ち主のコメントも面白い

ジャケットとバックパックの進化を学ぶ

各フロアとも興味深いですが、筆者が「推し」たいのが2階の展示。特にジャケットは自身も所有しているし、バックパックはギア好きでしたら気になるところではないでしょうか。

  • ALPHA SV JACKETの進化

  • バックパックの進化

それぞれの機能性の進化について、詳しく説明してもらいました。

「アークテリクスの原点はハーネスですが、その技術をバックパックにも生かしています。例えば、クライミングでハーネスに自重がかかる際、均一ではなく特定の部分に重さの圧力がかかるとつらいです。そこでアークテリクスでは金型を作り、それを熱成型して立体的にしし、体にフィットさせるテクノロジーを採用しました。それをバックパックにも応用しています」

実際のバックパックで説明すると、背中に接触する部分の「腹筋」のようなバックパネルとショルダー、ヒップベルト部分に先ほどのハーネスの「熟成型の3Dフォーム」が採用されているのです。

「バックパックの中の荷物の荷重を分散させ、より長く歩けるようにできています」

  • 熱成型の3Dフォーム

2017年からは背中のパネルを熱成形の「TEGRIS」にアップグレードするなど、背負い心地を向上させているそうです。

  • 「TEGRIS」にアップグレード

そしてジャケットですが、ちょうど比較する形で展示されています。左側の赤いものが1998年に誕生した「アルファSVジャケット」で、右が2023年に出た最新モデル。

  • 初代と最新モデルの比較

分かりやすい違いが3つあり、「シームテープ※の幅」「素材」「フードの形状」となります。※生地の継ぎ目から浸水を防ぐためのディテール

  • シームテープの違い

特にシームテープは初期が19ミリ、最新モデルは8ミリまで進化しています。この進化による違いを次のように説明してくれました。

「縫い目を覆う部分は防水でないといけません。縫い目から水が入ると困るので。ただ、防水ということは透湿性が無いことでもある。つまり、シームテープの面積が小さくなればなるほど、ウェア全体の透湿性は高まるのです。とにかく薄くし、細くするというのがシームテープの歴史なのです」

シームテープの重要性はスノーボードをする筆者も分かっていますが、「薄く、細く」という熱意までは理解不足。開発にかける姿勢を旧モデルと比較して知れたのは良い機会でした。

なおフードの形状でいうと、以前と比較して「頭の動きに追従する」仕様となっているそうです。頭を動かしてフードが視界を遮るというストレスを軽減できるのでしょう。

  • フードの形状も進化

マニアックなディテールですが、こうした細かい違いを知れるのが本イベントの醍醐味です。

ブランドの世界観を堪能するもよし、各ギアの進化を学ぶもよし、実際のユーザーの声とアイテムを楽しむもよし。充実した内容の展示にお腹いっぱいの筆者でした。

「ARC'TERYX MUSEUM(アークテリクスミュージアム)」
開催期間:4月20日~5月5日
開催時間:11:00~19:00
入場料金:無料 
開催場所:6142HARAJUKU(原宿キャットストリート)