大河ドラマ『光る君へ』(NHK総合 毎週日曜20:00~ほか)で、藤原道長の次兄・藤原道兼を好演している玉置玲央。道兼のヒールっぷり、そして心情の変化とともに見せるさまざまな表情で注目を浴びている。玉置にインタビューし、SNSの反響をどのように受け止め、ヒール役のやりがいをどのように感じているのか話を聞いた。
大河ドラマ第63作となる『光る君へ』は、平安時代を舞台に、のちに世界最古の長編小説といわれる『源氏物語』を生み出した紫式部の人生を描く物語。主人公・紫式部(まひろ)を吉高由里子、まひろの生涯のソウルメイト・藤原道長を柄本佑が演じ、脚本は大石静氏が手掛けている。
平安時代ということで戦のない平和な物語になると想像していた人も多いと思うが、第1回で道兼がまひろの母・ちやは(国仲涼子)を殺害するという衝撃展開に。このシーンについて玉置はプレッシャーもあったと明かす。
「過去の大河ドラマを見てもあまりない流れで、『おもろいじゃないか』と思ったので、これをその先の物語や道兼の人物像にどうつなげていけるだろうかという意識でした。ただ、1話がこういう描写で終わり、こういう話が続くようなら今回は見なくていいやと思われてしまうのも嫌だなと。そうなってしまうとしたら自分の所業がきっかけなので、そういう意味ではプレッシャーはありました」
返り血を浴びた道兼の姿も衝撃的だった。玉置も「自分でも、返り血を浴びた顔を見て『コイツこわっ!』と思いました」と振り返る。
ヒール役を演じる不安を尋ねると、やはり第1回の衝撃展開で視聴者が離れてしまわないかという部分で心配があったという。
「1話で切られてしまうというのが一番不安でした。僕は100人見てくださる方がいたとしたら100人全員に見てもらいたい。そこに至れるんだったら何でもやろうと思いますし、面白いと思っていただけることについても妥協したくないので、そういう考えを持っている人間にとって、1話の流れで1人でも減ったら嫌だなと。それはプレッシャーでした」
実際、SNSでも大きな反響を呼んだ同シーン。玉置は肯定的な反応に安心したという。
「もちろん離れてしまった方もいらっしゃると思いますが、物語の流れとして、そして道長とまひろの運命として、ものすごく大事な出来事でしたし、視聴者の方の反応、あと心強かったのは、共演者の皆さんやスタッフの皆さんがものすごく肯定してくれて。自分の中で『大丈夫だろうか』と思っていたからこそ、肯定的な言葉をもらうとありがたかったです」
また、スタッフとの打ち合わせを重ねる中で吹っ切れた部分も大きかったそうで、「1話で離れてしまう方がいても仕方ないと思えたので、このまま道兼というヒール、ヴィランをきちんと全うしようと思えました」と語る。
道兼を演じたことで「まだいろんなクズ役がやれるんだなと思えた」
父・兼家(段田安則)の命令に従い、汚れ仕事を担ってきた道兼だが、第14回で兼家は後継者に道隆(井浦新)を指名。道兼は激高し、「この老いぼれが……とっとと死ね!」と暴言を吐き捨てた。
そんなヒールっぷりを楽しみながら演じたという玉置は、「僕は殺人犯やクズの役が多くて、クズ役はお手の物なんです(笑)。大石先生からも『玉置さんに今回ぴったりの役があるのよ』といただいた役なので、『よしやるぞ!』という気持ちがありました」と胸を張る。
とはいえ、台本を読んだ時は「なかなかじゃないか」と想像以上のヒールっぷりに驚いたようで、「これをやるのか」と不安になったり、「それでいいんだよ」と肯定してもらったり、気持ちがジェットコースターのように揺れ動いたという。
そして、道兼を演じたことで「クズ役はもっといっぱいやれるな」という思いが芽生え、クズ役のやりがいを改めて感じたと告白。
「数をこなしたいという意味ではなく、いろんなやり方があるんだなという意味で、自分はまだいろんなクズ役がやれるんだなと思えて、それはある種の今後のやりがいになりますし、この作品の中でもやりがいだったなと感じています」と話すと、「本当はいい人の役をやりたいんですよ!」と加えて笑いを誘った。