“採用のプロ”が教える「農業の始め方」
本書の著者は、「新・農業人フェア」(農林水産省補助事業)の元運営責任者であり、同省へ農業人材確保の提案も行ってきた農業キャリアコンサルタント・深瀬貴範(ふかせ・たかのり)さん。リクルートグループで長年人事を務めた“採用のプロ”でもある著者が、セカンドキャリアに農業を考えるすべての人へ、農業の始め方をわかりやすく解説します。
本書では「農業の始め方」「情報の集め方」「行動のしかた」と順を追って紹介しています。農業を仕事にするためのマインドから、押さえておきたい基礎知識など、初心者が知りたい情報が網羅されています。
深瀬さん自身、仕事で農業と関わるようになったのは50歳を過ぎた頃。「専門用語やむずかしい言葉が多い」と感じた自身の経験をもとに、とっつきにくい専門用語は使わずに解説しています。
また、実際に「50歳前後で農業へキャリアチェンジした先輩のインタビュー」も、7人分掲載されており、農業の始め方を具体的にイメージしやすいのも特長です。
著者は農業コンサルタントの深瀬貴範さん
現在、農業キャリアコンサルタントして活躍する深瀬貴範さんは、もともと“採用のプロ”として働いていました。1985年、株式会社リクルートフロムエー(現 株式会社リクルート)に入社。人事マネージャーとして自社の新卒採用や中途採用を担当してきました。そのほか営業においては、大手企業を担当するグループのマネージャーとして採用の提案などを行ってきました。
農業との出会いは2011年。農林水産省、経済産業省、地方自治体向けに営業を行い、各地域で地方創生や農業人材確保に取り組んできました。2013年〜2019年までは、農林水産省補助事業「新・農業人フェア」の責任者を務めました。
リクルートを定年退職した現在も、個人事業主として同イベントのセミナーや地方行政の農業活性化事業に携わっています。
どんな農業人になりたいかを明確にするステップ
本書は3部構成。第1部では「まずは農業に触れよう」と題し、「農業を始めたい」と思ったらやることを紹介しています。第2部では「さらに農業を深めよう」をテーマに、情報の集め方を中心に解説。第3部ではこれまでの情報をもとに、自分自身がどんな農業人になりたいかをより具体的に考えるヒントをまとめています。
まずは農業に触れよう
初心者が参入しにくいイメージがある農業界。本書では、まずは農業のイメージをつかむことをおすすめしています。「クワもカマも持ったことがありません。それでもできますか?」「実際いくらかかるの?」「失敗しないか不安です」など、深瀬さんが実際にイベントで聞いた声から、初心者が本当に知りたいことについて解説しています。
また、現役農家が発信するSNSや、農家のリアルな声がわかるメディアを見ることもすすめています。その中で 「マイナビ農業」は栽培技術や新規就農者へのインタビュー、経営のノウハウなどが掲載されていることから「いろんな角度から農業について知ることができる」サイトとして触れられています。他にも松本自然農園を営む松本直之 (まつもと・なおゆき)さんのYouTube チャンネル「農Tube委員会 」などが紹介されています。
イメージがつかめたら、実際に農業をスタート。本書では「レンタル農園」や「週末農業」、庭やベランダでの家庭菜園など、今の暮らしをしながらでも始められることを紹介しています。
情報を集め、さらに農業を深めよう
より本格的に農業に参入するためのステップも紹介。「農業インターンシップ」や「週末農業アルバイト」など、プロから学ぶ方法を伝えています。
また、将来的に独立を考えているなら、農業法人への就職も一つの方法。本書でまとめられている農業法人への就職の仕方や、転職時のアドバイスはきっと役立つことでしょう。
さらに、情報が取りやすいイベントとして紹介されているのが「新・農業人フェア」。さまざまな団体が相談ブースを出展しており、目的に応じて効率的に情報を収集することができます。
本書では、農業法人に就職したいと考えている人はもちろん、独立して農業を始めたい人、農業の勉強をしたい人、農業に興味がある初心者など、それぞれ目的別にどのように情報を得ればいいかポイントを紹介しています。「新・農業人フェア」はかなり規模が大きいイベント。効率よく情報を集めるためにも、知りたい情報や参加する目的を整理して臨みましょう。
「農業を始めたい」と思ったらまず読んでみよう
未経験から農業を始める方が抱くよくある不安をふまえ、「自分のやりたい農業」をイメージするコツ、農地の借り方、国からの支援、独立自営就農や法人雇用就農など、多岐にわたる内容が書かれた本書。週末農業や家庭菜園などから無理のない範囲で「農のある暮らし」をしたい人、本格的に農業を営みたい人まで、「農業を始めたい」という多くの人に役立つことでしょう。「マイナビ農業」や「新・農業人フェア」などによる効率のよい情報収集術までを網羅しているため、具体的に動き出すきっかけの一つとして、本書を活用してみてはいかがでしょうか。
(編集協力:三坂輝プロダクション)