熊本・宇城市の日本海洋資格センター (JML)九州海技学院は、内燃機関六級海技士(機関)第一種養成講習の開講式を4月9日に実施。内航船員を目指す10~50代の生徒28名が出席した。
■内航船員は夢のある仕事
石炭の需要の高まりを受け、19世紀後半に開港した三角西港。最盛期には、旅館、商店などが建ち並び、役所、簡易裁判所、税関などの主要な公的機関も置かれるなど”近代港湾都市”として大変なにぎわいをみせた。大正期にはその役割を終えたが、町には現在も華やかなりし時代をしのばせる洋風建築の建物群が残されている。
日本海洋資格センター 九州海技学院は、そんな三角西港に設置された施設。小高い丘の上に建つ、旧宇土郡役所(世界文化遺産)のレトロな建物が再利用されている。
開講式の冒頭、日本海洋資格センター 九州海技学院の中野隆学院長が登壇し、入講生1人ひとりの名前を呼んで入講許可を宣言。そして4月10日より9月9日まで行われる第23回 内燃機関六級海技士(機関)第一種養成講習の内容について説明した。
本講習は船員未経験者を対象としたもので、座学85日、乗船実習49日、工場実習14日のカリキュラムが組まれている。受講生は出力装置、プロペラ装置、甲板機械、燃料や潤滑剤などを学び、救命や消化、また海事法令についても必要な知識を身につけていく。
中野学院長は、ヘレン・ケラーの『ひとつの幸せの扉が閉じると、別の扉が開く』という言葉を紹介。「人生は長く続いていきます。ひとつの幸せの扉の中だけで生活しようと思わずに、就職・転職という機会をきっかけに、次の幸せの扉に向かってほしい。これから皆さんが内航海運において活躍されることを心より願っております」と激励した。
続いて来賓が挨拶。第十管区 海上保安本部 熊本海上保安部 次長の近藤竜一郎氏は「船員としての素養を身につけながら、責任感、倫理観を大切に養ってください。そして、決して基本を疎かにしないでください」と呼びかける。貨物船の事故を調査すると、その原因の8割が人為的ミスによるものだそう。そこで「仕事に慣れたとき、気が緩んだときに事故が起こります」と近藤氏。安全運航の心がけを忘れず、基本を忠実に守ることを身につけてください、と繰り返した。
また日本内航海運組合 総連合会 理事長の河村俊信氏は「船員になることに将来を託してもらえたことに感謝いたします。内航船員は、とても夢のある、やりがいのある仕事です。海という大自然を相手にして、船やエンジンを操り、日本全国を駆け回ることができます。身につけた知識や技能で、一生、仕事を続けられます」とする。
本講習より、内航総連、海洋共育センター、海技教育財団が連携した新たな“奨学金制度”がスタートした。入講生の7名が1人最大100万円の奨学金を利用している。これをふまえ、河村理事長は「皆さんは第1号ということになります。後輩のためにも、これから始まる講習でしっかりと知識と技能を身につけてください。資格の取得後は、私たちと共に内航海運を支えていただければと思います」とした。
このほか九州運輸局 熊本運輸支局 次長の吉岡嘉春氏、熊本県海運組合 理事長の坂田英雄氏が来賓挨拶。海洋共育センター 理事長の畝河内毅氏は祝電を寄せた。
なお、三角西港の対岸に広がる上天草市では、海運業の振興と担い手の育成を目的とした海運振興対策も行っている。上級海技士の免許取得補助金や、市内海運事業者に就職した転入者への家賃補助金、海技士資格を所有する転入者・新規学卒者が市内海運事業者に就職した際の祝金など、就業のサポートも手厚い。
内航船員を目指し九州海技学院での学びをスタートした受講生たちは、4.5カ月の講習を受けたのち、船員としての就職・乗船を行い、国家試験を経て内燃機関六級海技士(機関)第一種の資格を取得、海運業で活躍していく。