英Nothing Technologyから新型スマートフォン「Nothing Phone (2a)」が登場し、日本でも先行予約者向けの出荷が開始されました。
2022年8月発売の「Nothing Phone (1)」、2023年7月発売の「Nothing Phone (2)」に続く同社としては3機種目となるスマートフォンですが、Phone (2)と同クラスの後継機ではなく、廉価版にあたります。ちょうど同じような命名規則を採用しているGoogle Pixelシリーズのa付きモデル、すなわち「Pixel 6a」や「Pixel 7a」のような立ち位置といえばわかりやすいでしょうか。
しかし、Phone (2a)はただPhone (2)よりも安いだけの機種ではありません。Nothingブランドを象徴する個性的なデザインを受け継ぎつつ、待望のFeliCa(おサイフケータイ)対応も果たした新機種の魅力に迫ります。
透明デザインとLEDを継承、樹脂製になってもクオリティは十分
やはりNothingの製品といえばそのルックスに惹かれて選ぶ人が多いでしょうから、まずは外観からチェックしてみましょう。
透明な背面パネルから中身が見えるというのはPhone (1)やPhone (2)と同様ですが、カメラが角から中央に移動したこと、そしてワイヤレス充電機能が省略されたことによってその表情は少し変わっています。充電コイルが無くなった空き地を埋めるべく、意味のある機能部品が見えているというよりは演出のための“それらしい何か”を見せられている印象が強まってしまった気はしますが、そこにツッコむのは野暮というものでしょう。
従来機の外装は強化ガラス製の背面パネルとアルミ製フレームで構成された高級感のあるものでしたが、Phone (2a)は背面・側面ともに樹脂製。価格相応の違いがあると言ってしまえばそれまでですが、樹脂ボディのスマートフォンとしてはなかなかに質感が高く面白味もある作りで、決して安っぽくは感じませんでした。
価格を抑えた機種でも上下左右のベゼルを均等に揃える手間やコストをかけている美意識の高さはNothingらしいところ。
フレーム部分はほど良いグリップ感のある仕上げで実用的ですし、背面パネルも樹脂製になったことを活かして角やフチをなめらかに丸めて側面へとつなげてあり手に馴染みます。
また、今回試用したカラーはブラックですが、もう1色の「ミルク」は背面だけでなく側面も白色で、銀色のフレームに囲まれた従来機の白系のカラーバリエーションとは一味違ったかわいらしさのあるデザインとなっています。
透明デザインと並ぶ外見上のもうひとつの特徴は、「Glyph Interface」と呼ばれる背面のLEDライトです。単なる装飾ではなく、画面を伏せてスマートフォンを置いた状態でも通知を見分けられたり、タイマーの残り時間を可視化できたりと、スマートフォンの画面を見すぎず視覚的に情報を得られる機能となっています。Phone (2a)ではライトの搭載数が削減され、カメラ部分を囲むように3本だけ配置されていますが、できることは従来通りです。
専用チップ「Dimensity 7200 Pro」搭載で動作は快適
Nothing Phone (2a)の価格は、先行発売されているメモリ12GB+ストレージ256GBモデルが55,800円、後日発売予定の8GB+128GBモデルが49,800円。ミドルハイ~ハイエンドに位置していた従来の2機種と比べると手頃な価格設定といえます。
Phone (1)はSnapdragon 778G+、Phone (2)はSnapdragon 8+ Gen 1といずれもQualcomm製SoCを採用していましたが、Phone (2a)では初めてMediaTek製SoCが採用されました。
Nothingはデザインや独自の世界観を売りにするブランドではありますが高級志向というわけではなく、性能・価格面では意外と現実的なバランス感を持ってユーザーに寄り添った製品作りをしている面もあります。
これまでミドルハイのSnapdragon 778G+や準ハイエンドのSnapdragon 8+ Gen 1を選んできたのもユーザーの要求性能を満たしつつ妥当な価格に抑えるための「過剰すぎない」選択であり、Phone (2a)ではもう一回り下の価格帯で十分なパフォーマンスの製品を作るにあたって、Snapdragon 7s Gen 2/Snapdragon 782Gと比較検討したうえでMediaTek製SoCを選定したことが公式動画で明かされています。
Phone (2a)に搭載されるDimensity 7200 Proは通常のラインナップにはないもので、MediaTekと共同開発されたNothing専用のカスタムチップです。TSMCの第2世代4nmプロセスで製造され、最大2.8GHzの8コアCPUなどで構成されます。詳細は明かされていませんが、Dimensity 7200の強化版と思われます。
ベンチマークスコアでは先に挙げたSnapdragon 7s Gen 2やSnapdragon 782Gを上回り、5万円クラスのスマートフォンとしては強力。電力効率に優れたSoCの採用と合わせて歴代最大となる5,000mAhのバッテリーを搭載しており、電池持ちも良好です。見た目でピンと来た人に限らず、手の届きやすい価格帯で快適に使える機種をお探しの方にもおすすめできます。
ソフトウェアは従来通り、Glyph Interface周りや独自デザインのウィジェット・アイコンパックなどを除けば素のAndroidに近いクリーンなソフトウェア構成となっています。
機能面での注目点はNothingのスマートフォンとして初めておサイフケータイに対応したことで、次世代以降は上位機種への拡大にも期待したいところです。
SIMはnanoSIM×2のデュアルSIM対応で、最近はミドルレンジ以上では減少傾向にあるので、物理SIMを2枚使いたいユーザーにとっては貴重な選択肢となるでしょう。一方で、通信事業者側の対応が進んできたことを考えるとそろそろeSIM対応を望む人も多そうです。
Phone (2)に近いカメラ性能、新機能「Ultra XDR」も追加
Nothing Phone (2a)のカメラの仕様は、メインの広角カメラが1/1.56型の50MPセンサーにF1.88のレンズ(光学式/電子式手ぶれ補正対応)、超広角カメラは1/2.76型の50MPセンサーにF2.2のレンズ(画角114°)、インカメラは1/2.74型の32MPセンサーにF2.2のレンズとなっています。
上位機種のPhone (2)と違い、搭載されているイメージセンサーが公表されていないのですが、Phone (2)のカメラの仕様が1/1.56型 50MP F1.88(広角)+1/2.76型 50MP F2.2(超広角114°)と見事に一致しているのを見ると、そう大きな性能差はないと思われます。
参考までに、デバイス情報を確認できるツールで調査した限りでは、メインの広角カメラがソニーのIMX890からサムスンのISOCELL GN9に変更され、超広角カメラはPhone (2)と同じISOCELL JN1、インカメラもPhone (2)と同じIMX615が使われているようです。
基本的には素直な写りで、ほどよく鮮やか。十分きれいに撮れる使いやすいスマートフォンカメラといえます。最大8枚の写真を合成処理するUltra XDRという新機能が追加されており、HDR撮影した写真をプリインストールされている「Google フォト」アプリで見るとPixel 8シリーズなどのUltra HDR写真と同等に扱われるようになっていました。
画質に不満はないものの、ちょっと困ったのが「シャッター音」。他のシステムサウンドと同様に特徴的な電子音が使われており、甲高い音色でよく響くため飲食店の店内などでは気をつかいます。発売後最初のアップデート(2024年4月のセキュリティパッチなどを含む回)で若干音量が絞られたようなので忘れず適用しておきましょう。