日産自動車が建設中の全固体電池パイロット生産ラインを公開した。全固体電池は電気自動車(EV)の性能向上と価格低減のカギを握る期待の技術だが、ここへきて、その電池を積むEV自体の需要が減速し、EV市場は「踊り場」に差し掛かっているとの話をよく聞くようになってきた。日産の見解は?

  • 日産の全固体電池パイロット生産ライン

    日産が建設中の全固体電池パイロット生産ラインを公開! 見に行ってきた

全固体電池搭載EVは2028年度までに発売予定

日産は創業の地・横浜工場(横浜市神奈川区)で全固体電池のパイロット生産ラインを建設中。現在はクリーンルーム付帯装置関連の工事が進んでいる。現場で聞いたところ、今は大きな除湿器を設置するための土台を組んだりしているようだ。

  • 日産の全固体電池パイロット生産ライン

    これが除湿器の土台部分。デカい!

今後は2024年8月に各工程の設備の搬入・設置を開始し、2025年3月には稼働を開始する計画だ。全固体電池搭載EVについては2026年度に試作車の公道テストを始め、2028年度までに新型車として発売する予定。

  • 日産の全固体電池開発プロセス

    全固体電池自体は開発中の技術だが、日産によれば「生産実現に向けたビジビリティが見えてきた」ため、進捗状況の公開を決めたそうだ

全固体電池は「従来比約2倍の高いエネルギー密度」「優れた充放電性能による大幅な充電時間の短縮」「安価な材料の組み合わせによるバッテリーコストの低減」などを特徴とする。パイロット生産ラインの公開に合わせて日産が開催した説明会には同社の坂本秀行副社長(チーフモノづくりオフィサー)が登壇。全固体電池について「EVを爆発的に普及させるゲームチェンジャー」だと説明した。

  • 日産の坂本秀行副社長

    日産の坂本秀行副社長

EVは踊り場! 日産副社長の見解は

とはいえ、最近はEV市場の成長が「踊り場」に差し掛かっており、自動車販売のメインはハイブリッド車であり続けるといった見方も強まっている。はたして今は、全固体電池の生産に向けた準備を急ぐべき状況なのだろうか。現状を見て計画を変更するつもりはないのか。そのあたりについての坂本副社長の見解は以下の通りだ。

「『踊り場』という話はありますが、正直にいいますと、EVは我々が想定だにしなかった早さで普及しているというのが事実です。中国をのぞくグローバルの市場を見ますと、平均的には、ほぼ、日産の想定通りのペースで普及しています。なので、ビジネスの展開を変えるつもりは、今はありません。もともと、ICE(内燃機関搭載車)、e-POWER(シリーズ式ハイブリッド車)、EVの技術に応じて、うまくわけて展開しようと考えていました。踊り場だからといって、何かを急に、あわててやるということもありません」