NVIDIAのコンシューマーオフラインイベントが復活

2024年4月13日、NVIDIAは「5年…ぶり?(広報談)」にコンシューマー向けイベント「GeForce Day」をe-sports SQUARE AKIHABARAにて開催しました。ひさびさのイベントをレポートします。

  • e-sports SQUARE AKIHABARAにてGeForce Dayが開催されました

コロナ禍でNVIDIAもオフラインイベントを長らく凍結しており、先日のNVIDIA GTCがひさびさのフル仕様のオフラインイベントで日本でのコンシューマー向けオフラインイベントもひさびさの実施です。5年前という事でカレンダーを見たところ2019年1月23日に行われた「GeForce Game Night」以来という事でしょうか?

NVIDIAとしては久しぶりのオフラインイベントで様子見の予定だったようですが、蓋を開けてみるとNVIDIAに飢えた方々で溢れたイベントとなりました。今回のテーマは「RTX 40シリーズ搭載ノート」です。協賛会社(Acer、ASUS、Gigabyte、マウスコンピューター、MSI、THIRDWAVE)のRTX 40ノートが3製品ずつ展示され、ゲームやRTX対応アプリが試せる状態になっていました。

  • 入場して受付カウンターの下にノベルティがありました。ほとんどがじゃんけん大会の景品で、右上のGeForce RTX 4070 SUPER Founders Editionは抽選会景品です

  • 展示全景、今回は6社のRTX40ノートが展示

  • AcerはPREDATORノートを展示ですが、すべて後日発売の新製品となります

  • ASUSはROG製品を展示。デモがすべてAI寄りになっていたのが特徴的でした

  • GigaByteはボリュームゾーンの4060/4070製品を展示していました

  • マウスコンピューターは右側の2台が近日発売の新製品です

  • MSIはRTXノート以外に速度比較用の2-in-1も展示。一番左は14インチゲーミングPCで持ち運びには便利そうです

  • サードウェーブは4060/70/80とバランス志向の展示でした

  • RTX 40シリーズは14インチ製品も展開しているのが特徴。こちらはMSIのゲーミングノートで裏がシースルーデザインになっているのが特色。また、キーボードの右上がDELキーで電源ボタンが隣に配置されています

  • RTX 40シリーズはゲーミング以外にクリエイター向け製品もあります。こちらはASUSの14インチ製品で、左下にGeForce RTX Studioステッカーが張られており、グラフィックスドライバもSTUDIOドライバーとなります

  • Acer Predator Hellios 16は5月末の発売とちょっと先の製品です。会場全体で5つの未発売製品がありました

  • マウスコンピューターのG-Tune H6-I9G80BK-Bの横にあるのは……水冷ユニット! 水冷ユニットなしでも動作し、水冷ユニットをつければ静音化。こちらも近日発売予定

  • NVIDIAのオリジナルソフト「Chat with RTX」インターネット接続なしで言語生成AIが利用できるものです。タスクマネージャーを見るとGPUが動作しているのがわかります

  • コンシューマーイベントではあまり見かけないコンピュートビジョンのデモもありました。動画に対してオブジェクトの認識を行うものですが、CPUだけの場合はこの画面で一画面当たり平均348msと秒あたり3枚未満

  • 一方、GPUを使用するとこの画面で平均13msと30倍近い高速化を実現。60fpsの動画でもリアルタイム処理ができる計算になります

ステージはRTX 40シリーズの紹介から

ステージセッションは3つ行われました。一つ目はNVIDIA テクニカルマーケティング担当マネージャー 澤井理紀氏によるノートパソコンにおけるGeForce RTX 40シリーズを紹介です。この時点で立ち見が出るほど、想定を上回る来場者が詰めかけていました。

GeForce RTXを搭載したノートは現在急速に市場を拡大しており、過去4年間で5倍となり、世界中で5000万台以上のRTXノートが出荷されたとの事。

GeForceの名を冠するように本来はゲーム用ですが、内蔵されているハードウェア動画アクセラレーターがあるので動画用の処理も高速。そしてRTXになって搭載されたTensorFlowエンジンによって、AIもローカルで動かすことができるものです。

  • NVIDIA テクニカルマーケティング担当マネージャー 澤井理紀氏

  • GeForce RTX 40シリーズ使用ノートパソコンは順調に増えています

RTX 40シリーズは前世代と同程度の性能ならば1/3の消費電力で動作します。ノートパソコンで高性能GPUが使えるために活用されているのがMAX-Q。現在第5世代となっており、ノートパソコンでも最高の性能と最長のバッテリ寿命を両立させるための機能です。

従来ならば熱的に厳しい14インチノートパソコンにも、RTX 40シリーズを内蔵できるようになっています。

  • RTX 40シリーズはAda Lovalaceアーキテクチャで、前世代と同程度の速度なら1/3の電力消費となります

  • 消費電力を抑えるMAX-Qを使用することで「厚い重たい熱い」というゲーミングパソコンのイメージを覆すような製品も登場。MAX-Qは複数のテクノロジの集合体です

MAX-Qテクノロジは複数の技術の総称で、AI制御によるGPU/CPUの最適な電力使用、最適な画質とフレームレートを調節するBatery Boost、静音性を向上させるWhisperModeと必要な時に電力を供給するDynamic Boost等が含まれていますが、説明中に「え?これってまだあったの?」と思ったのがAdvanced Optimus技術。

Optimusは2010年に、Intelのノート用内蔵グラフィックスではまともにゲームができない頃にゲーム性能と電力消費を抑えるために開発された技術です。普段はiGPUを使用しており、必要と判断した時に自動的にGPUが動作。GPUの生成した画面データをiGPUに送って表示させるという二人羽織な技術でした

現在のAdvanced Optimusではハードウェアベースのダイナミックディスプレイスイッチを導入することで、iGPUとGPUの画像出力を切り替えられるようになっています。並んでいた製品の中にはIntel CPUだけでなくRyzen AIを使用した製品もあり、複数社のCPUに対応するにはこちらのほうが都合がよさそうです(Core Ultraの製品もあり、「CPU+GPU+NPU+GPU」という構成となっていました)。

対応ゲームではDLSS 3が利用できる点もポイント。DLSSは元々AIを使用した超解像度技術で、対応ゲームは超高解像でレンダリングした「遅いけどキレイな画像」と現実的な解像度で64倍のスーパーサンプリングをかけたレンダリング結果を使って「このシチュエーションではこう補正するとより正しい」という学習を行います(このため対応ゲームタイトルは事前に膨大な学習が必要です)。

DLSS 2ではゲームの画像だけでなく映像の動きのデータも加えることで火や水のようなエフェクトにも対応。そしてDLSS 3はフレーム間の自動生成。「DLSS 3を適用すると見ている映像の7/8はAIが生成したピクセル」とゲームアプリの負担が減り、フレームレート向上につながり、DLSSやレイトレーシングに対応したRTXタイトルは現在500以上と対応の幅もアピールしていました。

ゲームに関しての最後にNVIDIA Reflexを紹介。Reflexをザックリ説明するとGPUを「描画全集中」から「入力操作を考慮する動作」にシフトさせることでプレイヤーの操作ラグを減らすというもの。ラグ低減と言っても一瞬ですが、ラグ低減が勝利に直結するゲームでは死活問題。対応ゲームは100を超え、人気シューターゲームの多くがサポートしています。

  • DLSSは超解像度によってフレームレートを上げる仕組みですが、DLSS 3になってからはフレーム間の画像も生成するので、ゲームエンジンの負担が減り高fpsとなります

  • DLSS 3やRayTracingを使用したRTXタイトルは続々登場。現在500タイトル以上がRTX対応。今回説明がなかったのですが、Ray Tracingの画質を向上させるDLSS 3.5も登場しています

  • NVIDIA Reflexはシステム応答速度を上げることで「一瞬のチャンス」をよりよく提供するもの

GeForceはゲームだけでなく、クリエイター向けのパソコンでも活躍。3DレンダリングでGPUパワーが活躍するだけでなく、RTXシリーズが持つTensor Flowを活用したAIツール、内蔵されているAV1エンコーダーによって映像処理も短時間で終了します。

  • クリエイターにもGeForceは活躍。3Dレンダリングだけでなく、AIやハードウェアエンコードがサポートします。中央のヘッドフォンが光っているのはAIを使用したエフェクトです

AIツールとして特筆すべきものとして高い演算性能を生かしたChatRTXがあります。これはLLMを使用したチャットボットですが、ChatRTXはパソコン内部のGPUで動作するため、インターネット接続がなくても利用できるのが魅力です。

GeForceはNVIDIA Studioドライバーというクリエイター向けアプリケーションに最適化されたドライバソフトが用意されているのも魅力。NVIDIA STUDIOステッカーがついているノートパソコンがクリエイター向けと説明していました。

  • DLSSやRT対応のゲームだけでなく、多くのAIツールもサポートし、NVIDIA自身もAIツールをリリースしている先進性がGeForceの魅力でしょう

  • ステージの第二部では参加企業によるトークセッションもありました

堀内華央理さんだけでなくふり~ださんもビックリのRTXのAI機能

イベントの最後はスペシャルゲストとしてeスポーツタレントである堀内華央理さんと澤井理紀氏によるライブデモを実施。この時の会場は椅子をすべて撤去して、それでも何度も前に詰めてくださいとアナウンスが入るぐらいの超満員状態でした。

  • ステージ第三部はeスポーツタレントである堀内華央理さんとNVIDIA澤井、そしてMCのふり~だ氏によるでもセッションでした

  • ご覧の通り超満員でした。次回はもっと広い場所でやりましょう!

  • デモセッションは澤井氏がゲストの堀内氏に説明する、というスタイル

  • と思ったらMCのふり~だ氏も発言していました。手に持っているのはじゃんけん大会の景品の1つのゲーミングマウスパッド(キーボードの下にまで敷ける長いバージョン)

デモはまずDLSS 3から。今回使用したゲームはCyberPunk 2077。Ray TracingもOverDriveモードに設定し、最高画質でもDLSS 3が有効だと150fps程度出ていたのに対し、DLSS 3を無効にしたとたんに60fps未満と1/3近くになり「DLSSを無効にする理由がない」という結論になりました。

  • まずはDLSS 3の効果を確かめる内容。これはONの状態でRTも画質の高い状態ですが、これでも155fps出ています

  • しかしDLSS OFFにするとCPUの使用率が減り、fpsも半分以下。1/3近くに落ちます

そのあと堀内氏がゲームプレイをするのですが……車から運転手を引きずり出して車両を強奪したり、ゲートにぶつかって警備の銃撃を受ける、パトカーも出てくるとグランドセフトオートみたいな運転となってしまいました。

  • 堀内氏がCyberPunk 2077をプレイ。カオスなプレイでした

次に行ったのがAI体験ということで、まずNVIDIA CANVASを実行。これはオブジェクトを指定してなぞると、その場所にAIがオブジェクトを生成するというお絵かきです。堀内さんは、まず雲を描き、山、花、川と追加してスゴイと連呼。絵心がなくてもすごい見た目になるので、幼稚園児に渡したら一日中お絵かきしていそうな感じです。

  • NVIDIA CANVAS。右上のマテリアルを選択して、左のように適当に描くと、右に画像が生成される仕組み。左上に雲、下に山と指定するとご覧の通り

  • さらに川と花を追加したのですが、湖から山が突き出しているようにも見えます

二つ目のAI体験としてNVIDIA Broadcastを実行。これは配信者向けの機能で、まず背景切り抜きをデモ。堀内さんは「グリーンバックもないのに女性の髪の毛も含めてきれいに抜けている」と画質に気に入っただけでなく、「普段の配信だと、グリーンバックを出してきてシワを伸ばさないといけない」と普段グリーンバックを使った配信を行っているならではの発言も。

次は「オートトラッキング」人物を常時中心に表示してくれる機能で「これならビョイーンとリアクションしてもカメラがついてきてくれる」とコメント。最後にアイコンタクト(よそ見をしていても表示上はカメラ目線)ですが、これは自分で効果を見る事ができず。

でも「リスナーのコメントを見たり、カンペを見ても配信ではわからない」と効果を語っていました。このデモはノートパソコンのカメラだけで行っており、配信以外にもWeb会議等でも活躍しそう。

  • NVIDIA Broadcast。この画面はオートフレームにアイコンタクトを追加していますが、当人は効果をチェックしずらい様子。ですが、配信時やWeb会議でよそ見をしても気づかれないでしょう

最後に行ったのが統合型ポストプロダクションソフトウェアの有償版、DaVinci Resolve Studioが持つAI機能を紹介しようとすると、MCのふり~だ氏が反応し「イベントでVlog撮る際にスタッフの機材を映してはいけないのでモザイクかけないといけないのですが、その指定が凄く面倒。マスクをしてモザイクかけると、作業効率が悪いのか30~60分かかる。人物が動くとマスクもやり直し」とコメント。

そこで澤井氏はマジックマスク機能を紹介、大体この辺をマスクとざっとなぞるだけでマスクを自動生成し、動画なので対象が移動しても自動追従します。これにはふり~だ氏も「今まで30分かかっていたのが0.5秒でできる」と驚きのコメント。仕事で動画編集をする人には必須な感じを受けました。

  • DaVinci Resolve Studioのマジックマスクのデモ。中央の画像で緑色の線が見えていて、これで「大体これ」と指定しています

  • 人物がアップになっても周囲にモザイクがかかっています

  • 顔の向きを変えても大丈夫。手動でマスクするよりも効率大幅アップです

各イベントの最後には恒例のじゃんけん大会を実施していたほか、最後には日本では買えないGeForce RTX 4070 SUPER Founders Editionが当たる抽選会を実施。人数が多すぎたせいで抽選券も途中で配布終了になった中、堀内さんは下一桁から読み上げる盛り上げぶりを見せ、熱狂のうちにイベントは終了しました。

  • イベントの最後にGeForce RTX 4070 SUPER Founders Editionが当たる抽選会を実施。堀内氏が来場者に中身を見せようとしています

  • 商品ゲットのガッツポーズ

今回のイベントはコロナ禍で長らく中断していたオフラインイベントの再開とあって、ステージもやや少なめのイメージでした。アンケートに回答するとノベルティがもらえたのですが、これも途中で品切れになるほど。この盛り上がりならば次回はもっと拡大したイベントになるのではないでしょうか?