旬とは?

果物の旬とは、その果物の味が最もよい食べごろの時期で、栄養価も高くなります。収穫がピークを迎え、スーパーや直売所などに出回る量も多くなるので安い価格で、おいしく栄養価の高い状態の果物を手に入れることができます。また、貯蔵されて食べごろを迎えた果物も、その時期が旬といえるでしょう。

4月が「走り」の果物

ハウス栽培のスイカやメロン、ビワなどが出回り、早くも初夏を感じさせてくれます。さらにひと足先に初夏を迎えた沖縄からはパッションフルーツが届き、走りの果物が季節をぐんと進めてくれます。初物はまずそのまま生で味わってみましょう。

メロン

初夏から夏にかけて旬を迎えるメロン。現在はハウス栽培が主流で4月~6月に収穫したものが通称「春メロン」として出回ります。皮に網目があるネットメロンと網目のないノーネットメロンに大別され、前者は「アールス」「クインシー」「アンデス」など、後者には露地栽培品種の「プリンス」などがあります。さらに果肉の色から「青肉」「赤肉」「白肉」に分類されます。栄養はカリウム、ビタミンCを比較的多く含んでいます。熟すまでは常温で保存し、カットしたものはラップをかけて冷蔵庫の野菜室へ。

調理例:メロンのトライフル、メロンゼリー、メロンと生ハムのサラダ

ビワ

初夏の訪れを告げるビワ。長崎ではハウス栽培が盛んで、露地ものよりひと足早く出荷時期を迎えます。果肉はやわらかく、酸味が少なく、みずみずしい味わいが特徴。食べ方は生食が主流ですが、ジャムやゼリーにすることも。栄養面ではカロテンが豊富で、マンガンやマグネシウムなどのミネラルも含んでいます。傷みやすいので、常温で保存して早めに食べましょう。冷やしたい場合は食べる数時間前に冷蔵庫へ。

調理例:ビワのコンポート、ビワゼリー、ビワジャム

スイカ

夏の果物の代表格ですが、ハウス栽培のスイカは4月が出荷の最盛期。「春スイカ」と呼ばれ、熊本県と群馬県などが主な産地です。一般的なスイカよりも少し糖度が高く、大玉はシャリシャリとした食感、小玉は果肉はやわらかめで、皮が薄いのが特徴。90%以上が水分で、カリウムと利尿作用のあるシトルリン(アミノ酸の一種)が含まれ、赤い果肉にはカロテンとリコピンが含まれています。保存は丸のままなら風通しのよい場所で、カットしたものはラップをかけて冷蔵庫の野菜室へ。

調理例:皮を器にフルーツポンチ、スイカゼリー、スイカのマリネ

パッションフルーツ

南国フルーツの一つで夏が最盛期ですが、沖縄産のものが3月末ごろから出回り始めています。果汁が多く、独特の甘い香りと、甘酸っぱい味が特徴。小さな種子のまわりのゼリー状の果肉を食べます。ジュース、ゼリー、シャーベットなどにすることも。栄養価が高く、ビタミンA・C、葉酸、各種ミネラルを多く含んでいます。未熟なものは常温で追熟させて果皮の表面にシワができたら食べごろ。完熟したら冷蔵庫の野菜室へ。

調理例:ゼリー、シャーベット、ドレッシング

4月が「盛り」の果物

4月の果物の主役は中晩柑(ちゅうばんかん)類。温州(うんしゅう)ミカンに代わって年明けから種類豊富に出回っています。和製グレープフルーツと呼ばれる河内晩柑(かわちばんかん)、突然変異種の甘夏(あまなつ)、ミカンとオレンジを掛け合わせた清見(きよみ)などが出荷の最盛期。味がよく価格が手頃な盛りの柑橘は、生食やデザートはもちろん、料理や保存食など、いろいろな食べ方を試してみてはいかがでしょう。

河内晩柑

熊本県で発見されたブンタンの自然雑種。4月〜7月に旬を迎えます。果皮は黄色で果肉はやわらかく、酸味と苦みは穏やかで、果汁が多いのが特徴。産地等によって、ジューシーオレンジ、愛南ゴールド(愛媛県愛南町)、宇和ゴールド(愛媛県宇和島市)、美生柑(みしょうかん)(JAえひめ南、マルエムフルーツアイランド)などの名称で出荷されています。栄養は、ビタミンCが豊富で、果皮に含まれる機能性成分オーラプテンは記憶力の維持を助けると期待されています。保存は風通しのよい冷暗所で2〜3週間。室温が高い場合はラップに包んで冷蔵庫へ。

調理例:寒天ゼリー、河内晩柑と新タマネギのサラダ、河内晩柑とホタテのカルパッチョ

甘夏

大分県で発見された夏ミカンの突然変異種。鹿児島県で多く生産されています。夏ミカンより早生(わせ)で1月中旬ごろから5月まで出回ります。また、夏ミカンと比べて酸味が少なく、甘く感じられます。栄養は、ビタミンCとクエン酸が豊富で、カリウムなどのミネラルも含まれています。保存は冷暗所で2〜3週間。室温が高い場合はラップに包んで冷蔵庫へ。

調理例:甘夏と春ダイコンのなます、甘夏のハチミツ漬け、ドレッシング

清見タンゴール

日本初のタンゴール(ミカンとオレンジの交配種)。宮川早生(わせ)とトロビタオレンジを掛け合わせたもので1979年に品種登録されました。果肉は濃橙色で柔らかくジューシー。オレンジの甘い香りがします。主な産地は、愛媛県、和歌山県、佐賀県など。3月中旬から下旬が熟期で5月ごろまで出回ります。保存は冷暗所で。

調理例:生搾りジュース、シャーベット、清見と甘夏の寒天寄せ

4月が「名残」の果物

果物売場を彩ってきたイチゴもいよいよシーズン後半。柑橘では、樹上で冬を越して甘みとコクを増した樹上完熟(木なり)の中晩柑類が食べごろを迎えています。熟した名残の果物は、冷凍保存やジャム、マーマレードなどへの加工にも向いています。

ハッサク

広島県尾道市の因島で生まれた柑橘。一般的に1月中旬ごろに収穫が始まり、半月から1カ月ほど貯蔵して追熟させ、酸味を抜いて出荷されます。ほのかな苦みが特徴。名残の時期には、3月~4月ごろまで樹上完熟させた木なりハッサクが出回ります。貯蔵追熟したものより糖度が高く濃厚な味わい。ビタミンCとクエン酸が豊富です。保存は風通しのよい常温で。室温が高い場合はラップに包んで冷蔵庫へ。冷凍保存は、皮と薄皮をむいた果肉を冷凍用保存袋に並べて冷凍庫で約1カ月。

調理例:ハッサクとキャベツのサラダ、ハッサクビネガー、マーマレード

イチゴ

ビタミンCが豊富なイチゴもいよいよシーズン終盤。栄養価が高く、ビタミンCが豊富で、葉酸や食物繊維、腸の働きを助けるペクチンも多く含まれています。大粒のイチゴが手ごろな価格で手に入り、小粒のものも流通するので、いろいろな食べ方を試してみてはいかがでしょう。保存は洗わずにパックごとラップに包んで冷蔵庫の野菜室へ。冷凍保存はヘタを取り全体に砂糖をまぶして冷凍用保存袋に並べて冷凍庫で約1カ月。

調理例:冷凍イチゴのスムージー、ジャム、ピューレ

まとめ

冬からずっと楽しんできたイチゴや柑橘類もそろそろ旬の終盤です。これらは冷凍保存しやすく、凍った状態で使いやすい果物です。おいしい時期に冷凍保存しておけば、出回り時期が終わっても、料理やデザート、スムージーなどのドリンクで楽しむことができます。イチゴは冷凍すると甘みが消えてしまうので砂糖をまぶしておくことがポイント。食べたいときの少量のジャムづくりにもおすすめです。食べた柑橘は皮を冷凍しておくとマーマレードやピールづくりに役立ちます。冷凍したいろいろな品種の柑橘をミックスしてつくるのもいいかもしれません。旬の国産果物を余すことなく楽しみましょう。

冷凍用保存袋に並べて冷凍した甘夏(写真左)、イチゴ(右)、甘夏の皮(奥)

参考書籍
からだにおいしい野菜の便利帳(板木利隆監修|髙橋書店発行)
草土花図鑑シリーズ4 野菜+果物(芦澤正和、内田正宏、小崎格監修|草土出版発行)
新食品成分表FOODS2023(進食品成分編集委員会編|東京法令出版株式会社発行)