スズキが2024年の「鈴鹿8時間耐久ロードレース」(鈴鹿8耐)に参戦するマシンを公開した。燃料をはじめ、「サステナブル」な工夫やアイテムを盛り込んだバイクに仕上がっているというが、具体的には? そもそもレースでサステナブルを目指す意味は? 実車を確認してきた。
スズキのバイクは持続可能?
スズキは2023年に発表した「2030年度に向けた成長戦略」の中で、通勤や通学、買い物などのいわゆる「生活の足」として使用される小型・中型二輪については「バッテリーEV対応にする」との目標を掲げている。2030年までに全世界で8モデルのバッテリーEVを投入する方針だ。
一方、趣味性の高い大型二輪については、内燃機関を継続してカーボンニュートラル燃料での対応を進め、マルチパスウェイでカーボンニュートラルに取り組むとしている。
その一環としてスズキは、2022年シーズンをもって撤退していたレースへの復帰を決断。今年の鈴鹿8耐に「チームスズキCNチャレンジ」で参戦することを表明した。参加するのは実験的クラスとして認定されている「エクスペリメンタルクラス」だ。
今年の鈴鹿8耐でスズキは、「決勝に向けてしっかりと完走すること」「次のステップに向けて新たな目標を定めるためにサステナブルアイテムを検証し、課題を抽出すること」の2つを目標に掲げる。
このことから、勝敗よりも環境性能の技術開発に関するデータ収集を優先するスズキの意図が読み取れる。それもあって、参戦マシンにはバイオ由来原料を配合したサステナブル燃料をはじめとするサステナブルアイテムを複数搭載している。
今年のスズキは8耐優勝を狙わない?
今回は、プロジェクトリーダーを務める佐原伸一さんに、サステナブルマシンで鈴鹿8耐に挑む意義や現時点でのマシンの完成度、心境などを聞くことができた。
――鈴鹿8耐をチャレンジの場に選んだ理由は?
佐原さん:耐久レースでは単に速く走る性能だけではなく、燃費もすごく重要なファクターになります。そういう意味で我々自身にハードルを課すというか、課題を持って取り組んでいくんだという思いの表れですね。このチャレンジはまだスタートしたばかりです。これから2年、3年、4年、5年と取り組んでいくなかで、だんだん目標を高くしていくのが我々の現時点での計画です。
――サステナブルアイテムをフル装備した状態で、すでにコース走行はされていますか?
佐原さん:すべてを組み合わせた状態ではこれからとなりますが、部品ごとでは現段階で問題があるアイテムはありません。これから本番に向けて確認事項はたくさんあるわけですが、安全に関わるものについては、危険だと判断すれば、いくらテーマがサステナブルへの挑戦であっても使えませんので、そこは線引きさせてもらおうと思っています。
――成分の40%がバイオ由来原料の燃料を使うそうですが、通常のガソリンとは違ってエンジンに負荷などがかかったりしませんか?
佐原さん:エルフの『Moto R 40 FIM』はよくあるアルコールが混ざっている燃料ではなく、例えばアルコールを抜き出した植物をハイドロカーボンに変えてガソリンと混合するなどの工夫を盛り込んだ燃料です。そのため、普通のバイクに入れてもハードウエア的に何か問題が生じるというものではありません。ただ、セッティングによって理想の燃焼が変わるという可能性はあります。
――プロジェクトの目的からして、今回の鈴鹿8耐では、本当にトップを狙わないんですか?
佐原さん:そうなりますね。今年の鈴鹿8耐における目標については、チームの公式文書でもリザルトを載せていないんです。ただ、私も含めて、元々レース部門に長くいた人間が関わっています。そういう意味では、与えられた環境とリソースのなかで最良のリザルトを狙っていくことは間違いありません。じゃあ、それがどのくらいなのかというのは、今後テストをしていかなければはっきりとは言えないというところです。
――将来的にはサステナブルマシンでの鈴鹿8耐優勝が目標になりますか?
佐原さん:すでに私のなかではいろいろと描いているのですが、今ここでお話しすることはやめておきます(笑)。