4月9日、山形県中山町は10月2日を「い・も・に」と読むことで「芋煮会の日」とする発表会を行い、日本記念日協会から記念日登録証が授与された。同時に「未来の芋煮レシピコンテスト2024」の開催が宣言され、全国からレシピの募集を開始した。
中山町が「芋煮会発祥の地」と呼ばれる由縁
全国各地にさまざまなバリエーションが存在する「芋煮」。なかでも山形県や宮城県などの東北南部においてはコミュニケーションとして「芋煮会」が活発だ。そんな“芋煮会発祥の地”といわれている場所が、山形県中山町にある。
山形県を流れる最上川は古来より東北の物流を担う重要な舟路であり、酒田港から北国廻船を通して全国と貿易を行ってきた。中山町にある旧・長崎町地域は、最上川の灌漑が発達するまで長らく舟運の終着点であり、船着き場として栄えた町だ。
船頭たちは荷物の積み下ろしの待ち時間に川岸の松の枝に鍋を掛け、運んできた棒だらとこの町の里芋を煮込んだ鍋料理「芋棒煮」を楽しんでいた。同町の「ひまわり温泉ゆ・ら・ら」には5代目となる「鍋掛松」がいまも残されており、当時の風景を振り返ることができる。これが中山町が芋煮発祥の地といわれる由縁だ。
毎年10月2日(い・も・に)を「芋煮会の日」に!!
そんな中山町が10月2日を「い・も・に」と読み、「芋煮会の日」とする発表会を4月9日に開催した。日本記念日協会からの認定を受けた正式な記念日であり、当日は同協会の事務局長、田宮智康氏から中山町の町長、佐藤俊晴氏に記念日登録証が手渡された。
佐藤氏は、芋煮会を「山形県民のソウルフードであり、かつ最高のコミュニケーションツール」と表現し、「芋煮会の日」を県内および県外に広く芋煮会文化を伝えていくきっかけとしたいと述べる。
芋煮レシピコンテストを同時開催
同時に、旧・長崎町と旧・豊田村の合併により中山町が誕生し、今年10月1日に70周年を迎えることを記念して、「未来の芋煮レシピコンテスト2024」の開催が宣言された。
募集期間は4月9日17:00~8月30日23:59まで。材料に里芋を使用することを唯一の条件とし、食材や味付けに関しての規定は一切無い。
応募は山形県中山町 観光協会Webページの応募フォームにオリジナルのレシピと完成した画像、料理名や食材、調理時間、作り方、PRポイントなどを投稿することで行える。
応募されたレシピから、中山町役場「未来の芋煮コンテスト」プロジェクトチームによる厳正な一次審査のもと3作品を選考。その3作品を10月13日に開催される「第13回 元祖芋煮会 in 中山町」の会場で来場者に試食してもらい、投票で最優秀作品と優秀作品を決定する。
なお、最優秀作品には「芋煮アンバサダー認定証」とともに、「ひまわり温泉ゆ・ら・ら」のペア宿泊券と、5万円分の中山町季節の特産品が、優秀作品には1万円分の中山町季節の特産品が贈られる予定だ。
伝統的な芋棒煮を再現した「北前いも煮」
中山町を芋煮会発祥の地としてアピールを続ける町長の佐藤氏は「中山町は通りすぎの町、何もない町と言われており、悔しくて仕方ないと常々感じており、3年前から芋煮会発祥の地としてブランディングを行ってきました」と話す。
現在、東北で食べられている芋煮は牛肉や豚肉を使い、しょうゆや味噌で味付けしたものが主流。中山町でも日頃は牛肉を使い、ネギがたっぷりと入れたすき焼き風の芋煮が食されている。だが中山町は「芋煮会発祥の地」として「芋棒煮」の復刻に挑戦。棒だらを使った伝統的なレシピの再現に取り組んできた。
その集大成となったのが、2022年の「第13回 元祖芋煮会 in 中山町」において発表された「北前いも煮」だ。臭みが強くなりがちでクセの強い棒だら芋煮を現代風にアレンジ。 棒だらとやわらかな里芋を昆布やかつお出汁ベースでじっくり煮込み、さっぱりした味わいに仕上げた。この「北前いも煮」はどなたでも簡単に楽しめるレトルト商品として販売されており、同町の名物のひとつとなっている。
「日本三大芋煮」がレシピのヒントに?
とはいえ、美味しい芋煮があるのは中山町だけではない。山形県中山町と並び「日本三大芋煮」と呼ばれているのが、島根県津和野町の芋煮、愛媛県大洲市のいもたきだ。この3市町は「日本三大芋煮会」として連携しながらPRを行っている。
島根県津和野町の芋煮は、炙った小鯛の出汁と火山灰地で育ったきめ細やかな里芋から作るすまし汁仕立てで、柚子皮を薬味に添えたもの。出汁本来の旨みに柚子が香る、風味豊かで上品な一品となっている。
愛媛県大洲市のいもたきは、鶏肉と粘り気がありホクホクした里芋を中心に、干し椎茸・こんにゃく・油揚げを加えた具だくさんの芋煮。出汁はもともと鮎だったが、現在は鶏ガラが主流で、醤油ベースの甘めのスープが特徴だ。
こういった全国の芋煮が、未来の芋煮レシピの参考になるかもしれない。興味のある方は、ぜひレシピ作りに挑戦して欲しい。
中山町 町長の佐藤氏は、最後に感謝を込めて「たかが芋煮会、されど芋煮会。ここから人々の話が広がり、地域が活性化していくのであればすばらしいと思っています。300年の歴史を持つ文化が、また未来の文化、未来の味付けを作っていくと期待しております」とメッセージを送った。