フキノトウとは?
フキノトウとは厳密に言うと植物の種類を指す言葉ではなく、フキ(蕗)という植物が持つ若い花茎部分のことです。
単に「フキ」と呼ぶ場合は、植物全体あるいは葉の部分を表すので覚えておきましょう。
フキは日本原産の植物であり、キク科フキ属の多年草に分類されています。
全国各地で獲れる山菜なので、幅広い地域で親しまれていると言えるでしょう。
雪解けと共に芽が地表へ顔を出すため、古くから春の訪れを知らせる植物としても知られています。
フキノトウにはどんな栄養が含まれている?
食材として利用する上で栄養素が気になるという人も少なくないでしょう。
フキノトウ100gあたりに含まれている主な栄養素は、「生」「ゆで」それぞれ以下の通りです。
生 | ゆで | |
---|---|---|
エネルギー | 38kcal | 31kcal |
たんぱく質 | 2.5g | 2.5g |
炭水化物 | 10.0g | 7.0g |
食物繊維 | 6.4g | 4.2g |
カリウム | 740mg | 440mg |
鉄 | 1.3mg | 0.7mg |
ビタミンE (α-トコフェロール) |
3.2mg | 2.4mg |
ビタミンK | 92μg | 69μg |
葉酸 | 160μg | 83μg |
フキノトウが豊富に含んでいるカリウムは人体の塩分過多を防ぐ働きがあり、高血圧やむくみの改善に効果が期待できます。
腸内細菌のバランスを整える食物繊維や、貧血・動脈硬化の予防に効果的な葉酸も豊富です。
ビタミンEは血行促進や免疫維持、ビタミンKは健康的な骨・血管の維持に有効とされています。
フキノトウは美味しいだけでなく、健康や美容をサポートする栄養素が詰まった食材なのです。
フキノトウの旬の時期は?
フキノトウの旬は一般的に初春と言われていますが、実際は地域や栽培方法によって若干異なります。
西日本では1月下旬~2月、関東地方では2~3月、東北地方や北海道では4~5月にフキノトウを収穫します。
フキノトウには「天然もの」と「ハウス栽培」の2種類があり、天然ものは各地方の旬によりますが、室内を温暖に保てるハウス栽培はやや早めに商品を出荷することができます。ハウス栽培のフキノトウは12月頃から出回ることもあります。
ハウス栽培ものは一足早く春を感じることができますが、天然ものはより香りが強いのだそうです。
フキノトウを美味しく食べる方法は?
定番のフキノトウ料理は天ぷら
フキノトウは日本原産の植物ということもあり、和食との相性が抜群です。
フキノトウの美味しい食べ方として最もポピュラーと言えるのは、やはり天ぷらでしょう。
おかずとしてはもちろんお酒のツマミとしても優秀なので、居酒屋や和食料理店でも人気です。
サクっとした衣を噛むとフキノトウのほろ苦い風味が口いっぱいに広がります。
ごはんのお供にするには味噌和え・白和えといったメニューもおすすめです。
ヘルシーなだけでなく比較的手軽に作れるのでご家庭向きですよ。
アレンジ次第では洋風メニューもGOOD
和食のイメージが強いフキノトウですが、調理の仕方次第では洋風メニューでも美味しく食べることができます。
例えばフキノトウの程よい苦みを生かして、ベーコンや牛肉に合わせてサッと炒めるだけでも立派なご馳走です。
特有の苦みがお肉の旨味を引き立ててくれる味わいはクセになりますよ。
海鮮やお肉と一緒にパスタにしても美味しいですし、変わったところではアヒージョにしてワインと一緒に楽しむのもおすすめです。
フキノトウはあく抜きするべき?
フキノトウを調理する上で気を付けたいのが「あく」についてです。
ここからはフキノトウを美味しく食べるために必要なあく抜きの知識を身に付けていきましょう。
フキノトウのあく抜きは調理法に合わせて
フキノトウはあくが強い山菜としても知られており、生で食べることはできません。
調理する上ではあく抜き処理が必要になるので留意しておきましょう。
フキノトウには「ペタシテニン(別名フキノトキシン)」と呼ばれる物質が含まれており、これが苦みの原因となっています。
ペタシテニンは過剰摂取すると肝機能に悪影響を及ぼすとされており、健康への配慮や苦み抑制の観点からあく抜きが行われるのです。
また、フキノトウには「ピロリジジンアルカロイド」という天然毒素も含まれています。
天然毒素と聞くと怖いイメージを抱くかもしれませんが、日本では2024年2月時点でフキノトウに含まれるピロリジジンアルカロイドに起因する健康被害は報告がありません。
大量摂取すると下痢や嘔吐といった症状を引き起こす危険がありますが、少量であれば問題ありません。
ピロリジジンアルカロイドもまた苦み・えぐ味の原因となるため、フキノトウを食べる際にはあく抜きで取り除くのが望ましいです。
例外的にフキノトウをあく抜きせず調理するのは、天ぷらにする場合です。
天ぷらは高温の油でフキノトウ全体がコーティングされるため、あくによるえぐ味が抑えられます。
ただし、天然毒素のことを考慮して、一度に多くを食べるのは控えておきましょう。
苦みを抑えたい場合はあく抜き処理を施してから天ぷらにすることもよいでしょう。
フキノトウをあく抜きする方法
フキノトウのあく抜きは熱湯で加熱する方法が一般的です。
あくはフキノトウの根元に多く含まれているので、まずは下処理として黒ずんでいる根元の部分を薄く切り落としておきましょう。
外側の葉に黒ずんでいるところがあれば同様に取り除いてください。
下処理したフキノトウは軽く水洗いします。
お鍋にたっぷりのお湯(フキノトウ100gに対して1~1.5リットル)を沸かしたら、大さじ1の塩を加えてフキノトウを投入してください。
より効果的に苦みを取り除きたい場合は、塩を小さじ1の重曹に代えるのがおすすめです。
火が通るまではフキノトウが浮かんで来るので、さいばしなどで適宜沈めてあげると良いでしょう。
3分ほど経過したらフキノトウをザルにあけて、変色を防ぐためにすぐさま流水で冷やします。
あく抜きを進めるために、15分ほど常温で置いてください。
キッチンペーパーなどで水気をよく拭き取ったら準備完了です。
フキノトウの保存方法は?
フキノトウは冷蔵保存で1週間程度、冷凍保存なら1ヶ月程度日持ちします。
常温で放置しておくとあっという間に傷んでしまうので、冷蔵・冷凍のどちらかで保存するようにしましょう。
冷蔵保存する場合は乾燥を防ぐために軽く濡らして、キッチンペーパーで全体を包んだ上で保存用ジップやビニールに入れておきます。
冷凍する場合は生のままだと変色してしまうので、あく抜き処理したものを保存用ジップに入れてできるだけ空気を抜いてください。
ポイントはしっかり水気を切っておくことです。
フキノトウの栽培方法は?
フキは「直射日光」と「乾燥」を苦手としているので、栽培する場合は半日陰で適度な湿気がある場所を用意しましょう。
適切な育成温度は20℃。プランター栽培であれば、一般的な野菜栽培用の培養土で問題ありません。
畑で育てる場合は堆肥や元肥を入れる2週間ほど前に石灰を撒いて耕します。
植え付けは3月頃に行うのが一般的ですが、9月に行うことも可能です。
基本的に収穫は2年目からとなるので、1年間は土壌の準備・定期的な肥料や水やりなどを行い丁寧に株を育てることを意識しましょう。
また、収穫が終わったら梅雨以降に備えてお礼肥を施すのが一般的です。
天敵となる害虫はアブラムシやヨトウムシなので、必要に応じて殺虫剤などで対策しましょう。
まとめ
フキノトウは日本で古くから愛されている山菜の1つで、全国どこでも手軽に入手可能となっています。
特有の苦みが苦手な人でも、丁寧にあくを取り除けば食べやすくなりますよ。
また、自家栽培も可能なので家庭菜園を趣味にしている人にもおすすめの植物です。
天ぷらをはじめとする和食がポピュラーですが、洋風な味付けもマッチするので色々なテイストが楽しめます。
季節を感じさせてくれるフキノトウをぜひ味わってみてください。