北陸新幹線が延伸開業し、盛り上がりを見せる北陸。都内からのアクセスが便利になった今、ぜひ訪れてほしいのが複数の温泉地を有する加賀温泉駅だ。ライドシェアも始まり注目を集めるこの駅で、湯めぐり旅を楽しんでみた。
めぐったのは片山津温泉・山代温泉・山中温泉の3つの温泉街。いずれも加賀温泉駅からバスやタクシーを使って訪れることのできる場所にあり、北陸の温泉地ならではの公共浴場「総湯」が存在する。今回は、この総湯をめぐりつつ、旅には欠かせない地元グルメを堪能する。
■湯めぐりアイテム
出発前に……みなさんに忘れず持っておいてほしいアイテムが、総湯や足湯で使用する「タオル」。フェイスタオルだけでも問題ないが、バスタオルも1枚あると安心だ。各総湯でも販売しているので、忘れた人はその場で購入を!
また、総湯にはシャンプーなど備え付けのアメニティはないので、必要な人は持って行くのを忘れずに。それでは湯めぐり旅へ出発~!
■「加賀温泉郷パスポート」をゲットしよう
総湯めぐりを考える人は、加賀市観光情報センターでお得な観光パスポート「加賀温泉郷パスポート」(800円)を手に入れよう。この旅で訪れる公共浴場「総湯」をはじめ、美術館や科学館など決められた施設22カ所の中から、好きな施設を3カ所選んで利用できるパスポートになっている。
また、「加賀温泉郷パスポート」と加賀周遊バス「キャン・バス」の2日間乗車券がセットになった「キャンバス乗車券セット」(1,500円)もあるが、周遊バスは本数が限られているので、行きたい場所や時間をチェックした上での購入がおすすめだ。
ちなみに、本パスポートは、加賀市観光情報センター以外でも観光スポットなどで購入できる(詳細は専用サイトにて)。
■加賀温泉駅の鉄板スイーツ
バスやタクシーに乗る前に、まずは駅から徒歩1分の場所にあるぷりん専門店「かがの湯ぷりん」に行ってみてはどうだろう。
同店は、地元の厳選素材を生かして作られた新鮮なプリンを提供するお店。その中でも人気の「湯けむりぷりんソフト」(680円)は、ミルク感たっぷりのソフトクリームと濃厚プリンが織り成す絶妙な味わいがたまらない!
そのほか、カスタード風味の泡がのっている「泡プリン」(460円)や季節限定プリンなどもあるので、お土産としてテイクアウトするのもよいだろう。
■名峰を望める片山津温泉
片山津温泉は、北陸「加賀温泉郷」の一つとして全国に名をはせる名湯で、霊峰白山を望む柴山潟の湖畔に位置し、加賀温泉駅からは車で約10~15分の場所にある。
・片山津温泉 総湯
片山津温泉の総湯は、"美術館かな?"と見間違えるほどの芸術的な見た目が特徴。世界的建築家 谷口吉生氏の設計で、外観はそのほとんどがガラス張りになっている。柴山潟、空、森など周辺の自然に溶け込み、建物からは雄大な白山連峰を望むことができる。
浴室は、柴山潟につかっているような感覚を覚える「潟の湯」と、森の景色に安らぎを感じる「森の湯」の2つがあり、定期的に男女を入れ替えているという。
筆者が訪れた際は、「潟の湯」に入浴。温泉から望める柴山潟では、カモが気持ちよさそうにぷかぷかと泳いでおり、その光景を眺めながら温泉に体をあずけゆらゆら。なんともゆったりした時間が流れ、日々の喧騒を忘れることができた。
・足の湯 えんがわ
余裕があればぜひ訪れてみてほしいのが、総湯から歩いて4~5分の場所にある砂走(すなはせ)公園の足湯「えんがわ」だ。片山津温泉の源泉は塩分を多く含む塩化物泉で、保温効果がとても高く冷え症や関節痛に効果的だと言われている。
その源泉100%を堪能できるのが、ここ「足の湯 えんがわ」。 少し熱めのお湯に足をいれると、全身の血流がよくなったのか上半身まであったか~い。旅のエネルギーチャージをしてくれる場所だった。
■文化人も愛した山代温泉
加賀温泉駅から車で10~15分の位置にあるに山代温泉は、725年に高僧・行基が霊峰白山へ向かう途中で発見したと言われる温泉地。約1300年という長い歴史の間には、明智光秀や北大路魯山人、与謝野晶子も訪れたとされ、文化人や偉人に愛された場所としても有名だ。
「弱アルカリ性」でとろみのある山代温泉の泉質も、保温や保湿効果が高いとされる塩化物泉を含んでいることから、別名"美人の湯"と言われている。
・古総湯
古総湯は、明治時代の総湯を復元し、外観や内装だけでなく「湯あみ」という温泉につかって楽しむだけの当時の入浴方法も再現している。ちなみに、ここは湯あみだけなので石けんやシャンプーなどは使用できないのでご注意を!
古総湯の特徴はなんと言っても、鮮やかにきらめくステンドグラス! 水面に映るカラフルな光は幻想的で、一度入ったら忘れられない印象的な温泉だ。ちなみにお湯は熱めなので、かけ湯でしっかりと体を慣らせてから入ってほしい。入浴後は2階にある休憩処で、水を飲みながらほっと一息つくのがおすすめ。
・山代温泉 総湯
古総湯の目の前にあり、赤瓦に板張りの外壁の「総湯」は、洗髪などもできる共同浴場。浴室の壁は九谷焼作家たちによる手描きタイルで彩られ、入浴時間を心はずむものにしてくれる。
女湯には2つの温泉があり、筆者が訪れたときは、入口奥側の温泉が手前よりも熱めのお湯になっていた。包みこむようなとろっとしたお湯につかれば、体はぽかぽか、肌はしっとり。ちょっぴり美人になれた……ような気がした(笑)。
・濃厚な温泉たまごをぺろり
お風呂から出たあとは、売店で販売される「温泉たまご(赤玉)」(100円)をいただきます。源泉かけ流しの中に約8時間つけたという温泉たまごは、白身はトロっと、黄身はほどよいかたさで、濃厚な味わいを楽しめるなんとも乙な味。売店ではソフトクリームなども販売しているので、気分にあわせてセレクトを!
・Monta-Yu(モンターユ) 加賀
温泉でさっぱりしたあとは、甘いもので糖分補給。訪れたのは、総湯から歩いて1分の距離にあるオシャレな店構えの「Monta-Yu(モンターユ) 加賀」。
店名はフランス語「Montagne=山」と「Yu=湯・遊・癒」かけあわせたもの。同店は、地元特産の加賀野菜・五郎島金時芋を使用して作ったモンブランやさつまいもスイーツを提供する。
おすすめは、注文後に作り始める「絞りたてモンブラン -五郎島金時-」(700円)。サクサクした自家製メレンゲやふわっとしたモンブランクリームは、軽やかで上品な味わいを演出する。さらに上からレモンの皮をトッピングすることで、さわやかな酸味をプラスした繊細な味わいに。
■芭蕉ゆかりの山中温泉
1300年の歴史を持つ山中温泉は、松尾芭蕉が奥の細道の途中で訪れ、山中の湯を有馬・草津と並ぶ「扶桑(ふそう)の三名湯」と称賛したことでも知られている。ちなみに、加賀温泉駅からは車で15~20分程度で行くことができる。
・山中温泉 菊の湯
芭蕉の句にあやかり「菊の湯」と名付けられている総湯は、男女で建物が異なっている。男性浴場は緑色の変り瓦をふいた天平風の優雅な建物、その向かいにある女性浴場は華麗で優美な造りが特徴だ。
女湯は、深めになっているスペースがあり、そこでは立ったままストレッチや体をのばして入浴する人がちらほら。またぶくぶくと泡が出るスペースもあり、これまでの2つの総湯とは違ったスタイルを楽しめた。
お風呂から出たあとは、菊の湯の隣にある山中座で販売されていた「菊の湯アイスキャンディー」(250円)を頬張り気分をさっぱり! 山中温泉の湯から作ったというアイスキャンディーは、写真に収めたくなるようなかわいい菊の形が印象的だ。
・ぶらり食べ歩き
温泉につかったあとは、お腹を満たすとしよう! 加賀・山中温泉の祖、長谷部神社を中心に広がる「ゆげ街道」やその周辺は、食べ歩きやお土産選びにぴったりな店が軒を連ねている。
肉のいづみやでコロッケを頬張る
ちょっとした腹ごしらえにぴったりなのが、肉のいづみやの「手作りコロッケ」(150円)! 外はサクサク、中はホクホク! ゴロっとした大きなジャガイモが入った俵型のコロッケは、どこか昔懐かしい味がする。ボリューム満点なので、1個でも満足度は高め。
加賀地酒蔵 辻酒販 本店で日本酒飲み比べ
「加賀地酒蔵 辻酒販 本店」は、石川県の地酒を中心に、郷土の銘菓や工芸品を取り扱う酒屋。お酒を購入するだけでなく、試飲(有料)ができるのも魅力で、筆者が訪れた日は約10種類の地酒が、グラス一杯300円~用意されていた(種類は日によって異なる)。
この日は加賀の酒蔵である「松浦酒造」「鹿野酒造」の酒に加え、日本最高峰の醸造家といわれる農口尚彦氏の技術継承を目的に誕生した小松市の酒蔵「野口尚彦研究所」の酒、計3種類をセレクト。
店内には座れるスペースがあったので、腰掛けさせてもらい、ゆるりと酒を味わう。米の旨みをしっかり感じるものから、キレイで上品なお酒まで異なる3タイプを堪能。お土産のお酒もちゃっかり手に入れ、お店をあとにした。
Amu Shop&Cafeで地元土産をゲット
オシャレな外観に引き寄せられ立ち寄ったのは、セレクトショップ&カフェ「Amu Shop&Cafe」。加賀地方をはじめ石川県全体のお土産がずらりと並ぶ店内には、女性がときめくような感度の高いアイテムがそろう。
笑顔がステキな店員さんに、おすすめなども教えてもらいながら女友達への贈り物を購入。センスのいいお土産や旅の記念アイテムを買うならぜひこちらのお店をチェックしてほしい。
山中石川屋の娘娘万頭(にゃあにゃあまんじゅう)
山中温泉を代表とする和菓子といえば「娘娘万頭」。明治38年創業の山中石川屋が手掛ける小判型のかわいらしいまんじゅうには、北海道小豆のあんがぎっしり詰められている。黒糖と地産みそのほのかな香りがほどよく調和した、優しい味の一口まんじゅうは食べ歩きにもぴったりだ。1個130円とお手頃価格なのでぜひ、試してみてはいかがだろう。
・足湯「笠の露」で旅の疲れを癒やす
最後は、疲れた足を癒やすため、菊の湯の前にある足湯「笠の露」にちゃぷん。少し熱めのお湯に、くぅーっと思わず声がもれでる。数分もつかれば足だけでなく、体もぽかぽかにしてくれる足湯で、手軽に旅の疲れを癒やしてみては?
今回新幹線開業前の3月中旬に現地を訪れた筆者。行く前は、旅ができるのか少々不安に思ったが、能登半島地震の影響はさほど感じられなかった。地震によって隆起した場所や亀裂が入った場所をいくつか目にしたものの、筆者がバスやタクシーで通った道は問題なく、観光もスムーズにできた。
地元のタクシー運転手も、「もともと被害は大きくなかった。日常に戻っていると思いますよ」と話してくれた。
複数の温泉地をめぐれる加賀温泉駅は、その土地の伝統や魅力をたっぷり味わえる場所。地元民が会話を繰り広げる総湯をめぐれば、リフレッシュできるだけでなく地元気分も楽しめるだろう。体だけでなく心も温まる加賀温泉駅の湯めぐり旅に、ぜひあなたも出かけてみては?