メルシャンは、「おいしい酸化防止剤※無添加ワイン ※亜硫酸塩」の味わい・パッケージを1月中旬にリニューアル。同シリーズは、2003年の発売以来累計2億本(メルシャン出荷実績)を販売する、国内製造ワインを代表するブランドだ。また、同社調べによると、ワイン新規購入者の大多数約8割程度が国内製造ワイン、そのうち約5割が「酸化防止剤無添加ワイン」を選んでいるという。
今回は「おいしい酸化防止剤無添加ワイン」の歴史と開発へのこだわりについて、メルシャン 生産・SCM本部 技術部 商品開発グループの鈴木由美子さんと橋本優香さんに話を聞いた。
■「おいしい酸化防止剤無添加ワイン」が誕生するまで
「おいしい酸化防止剤無添加ワイン」は2003年に誕生。あえて酸化防止剤(亜硫酸塩)を添加せずに、収穫後24時間以内に搾汁した果汁を使用した丁寧な味わいが楽しめるのはもちろん、1本500円前後というお手頃価格も長年愛される理由だろう。
1987年頃、ボージョレヌーボーの誕生をきっかけにワインを食卓で飲む人が増えたが、当時は最低でも1本1,000円が当たり前。低価格ワインは、1994年のメルシャン「ボンマルシェ」が始まりだったという。その後1997年から赤ワインブームとなり、ワインが身近な商品になった。
「当時は既に『酸化防止剤無添加ワイン』は市場にあったのですが、いざ飲んでみると、とても甘く、酸化しているようなちょっと焦げたにおいがすることもありました。私たちワインメーカーとしては、日本の食事に合う、そして酸化していない健全なワインをお届けしたいと思い、2003年に『おいしい酸化防止剤無添加ワイン』が誕生しました。藤沢工場では、通年変わらぬ味わいをお届けすることを大事なミッションとしています」(鈴木さん)
しかし、2000年頃はコンセプトに合った果汁がなかなか見つからず苦労したそう。鈴木さんは「どんな果汁を使って、どういう酵母を使ったらいいのか……何度もトライアンドエラーを繰り返しました。質と価格、この両方を兼ね備えた果汁の組み合わせにはとても苦労しましたね」と当時を振り返る。
お酒造りに不可欠な存在である酵母は、世界中で販売されている酵母を毎回確認し、コンセプトに合ったアルコール度数や香り、味わいを作る酵母を選び抜く。さらに、後から果汁で甘みをつけることで、すっきりとした味わいやまろやかな味わいなど味を調整しているそう。そうした苦労を重ね、通年変わらぬ味わいを実現しているのだ。
発酵後は、酵母を取り除くと酸化が始まる可能性がある。そのため充填の仕方も注意しているそうで、低温にしたり、なるべく早くボトリングまで済ませるといった酸化しないような工夫も行っている。
「『酸化防止剤無添加ワイン』は、在庫状況を確認しながら都度発酵を開始するため、いつも同じ味わいを楽しんでいただけます。店頭にはなるべく鮮度の高いものを置いておく、ここがポイントですね」(鈴木さん)
■メルシャン藤沢工場に潜入!
取材に伺ったメルシャン藤沢工場では、「おいしい酸化防止剤無添加ワイン」シリーズや「ビストロ」シリーズといった主力のデイリーワインを生産している。同日は、「おいしい酸化防止剤無添加ワイン」の「ふくよか」を製造しているとのことで、現場を見学させてもらった。
720mlボトルには、2022年3月より同社史上最軽量となるワイン用ペットボトルを採用。特殊なコーティング技術を施したペットボトルとなっている。
ペットボトルは、中を水洗いした後、酸化しないよう工夫がされたうえで、ワインが注がれていく。
その後、キャップシールを巻く工程に。帯状になっているものから、1本1本カットし、ミシン目を入れながら装着。熱で収縮させて、ペットボトルとキャップを密着させる。
最後は、ラベルが貼られ、ダンボールに箱詰めされていく。この製造ラインでは、1分間で200本製造できるという。
■「おいしい酸化防止剤無添加ワイン」シリーズ、リニューアルのポイントは?
「おいしい酸化防止剤無添加ワイン」シリーズは、現在「スタンダード」「シードル」「濃厚ストロング」「厳選素材 プレミアム」の4つのラインナップだが、今回リニューアルしたのは、スタンダードシリーズ。ちなみに、同日工場で製造されていた、「ふくよか」は濃いめのしっかりとした味わいが楽しめるということで、メルシャンの中でも最も人気の商品だそう。
リニューアルした同シリーズは、収穫後24時間以内の搾汁果汁を使用し、ブドウ本来のみずみずしさを保ちながらも、もっと濃い味わいでブドウのおいしさを味わえる。
「メルシャンの技術を応用して作った『濃厚ブドウ果汁』をブレンドして作っています。そうすることで、ブドウ本来の濃い果実味をアップすることができます」と橋本さん。この技術は現在特許出願中だそう。
従来の商品は、ブドウ果汁をブレンドして甘みをつけていたが、それとはまた違う濃厚ブドウ果汁をさらにブレンド。そのひと手間が今回のポイントだと橋本さんはいう。
そもそもなぜ今回"濃厚"に着目して、リニューアルしたのかー。今回のリニューアルは、鈴木さんと橋本さんの雑談の中で出たアイディアだったそう。鈴木さんは、「すっきりとした味わいのワインは物足りなさ、飲みごたえが足りないと感じてしまうこともあります。もう少し濃い味わいがほしい。その濃さってどうやって作ろうか」ということを常に考えていると話す。
単純に濃い果汁を使うとなると、価格も高くなってしまう。「おいしい酸化防止剤無添加ワイン」は、1本500円以下のワインでありながらも、シャトーメルシャンなどにも通じる満足度の高いワインを造っていくことを追及している。
「人によって甘いのが好き、辛いのが好き、渋いのが好きなど好みはそれぞれだと思います。1つ飲んでみて、もっと違うのも飲んでみたいと思っていただき、さまざまなワインに広がっていけると私たちとしてはとても嬉しいですね」(鈴木さん)
初めてワインを飲む人は、何かしら食事と一緒に楽しむ人がほとんど。「おいしい酸化防止剤無添加ワイン」シリーズだけでなく、メルシャンのワインはみりんや砂糖などを使う日本の家庭食に合うことを意識しながら、造り分けているという。
開発の過程では、ワインと食事の組み合わせも何度も試すそう。橋本さんは「この前感動したのが『ふくよか』と『バターチキンカレー』の組み合わせ。『ふくよか』はチョコ系の味わいが感じられるのですが、それがうまくマッチしてカフェラテのような味わいになるんですよね」と開発の裏側を語ってくれた。
低価格でありながら、飲みごたえのある味わいを提供し続けてくれる「おいしい酸化防止剤無添加ワイン」。ぜひ好みにあったワインを見つけて、日常にワインを取り入れてみてはいかがだろうか。