ヤマハ発動機が「フォーミュラE」(ABB FIA フォーミュラE選手権)に参戦する。3月28日に東京都内で開いた記者会見で表明した。タッグを組むのは英国の名門レーシングカーコンストラクター「ローラ」(Lola Cars Ltd)。2025年シーズンからの参戦を目指す。
フォーミュラE参戦の狙いは?
「最先端電動技術獲得に向けたLola Carsとヤマハ発動機の提携について」と題された記者会見に登壇したヤマハ発動機の丸山平二常務は「今回当社は、イギリスの名門レーシングカー開発会社のローラ社とフォーミュラE規格のパワートレインの開発・供給に関するテクニカルパートナーシップ契約を締結いたしました。この技術提携により当社は、ローラ社と協力しながら電動パワートレーンの開発を行い、ローラ社はその動力ユニットを搭載した車体パッケージの開発を進めることで、2025年からフォーミュラE参戦チームへの供給を開始します」とあいさつした。
ついで「2050年までのカーボンニュートラルの達成を目指すヤマハは、その実現に向けてサステナビリティに寄与するさまざまな研究、技術開発を加速させていますが、フォーミュラEを通じてより高度なエネルギーマネジメント技術を獲得し、全社、全事業における電動技術の底上げに結びつけていきたいと考えています」と参戦の意義を語った。
ヤマハは1955年の富士登山レース(二輪レース)以来、モトGP参戦やF1へのエンジン供給など、さまざまなレース活動を通じて技術や人材、経験、知見を獲得し、ネットワークを広げてきている。今回のプロジェクトでも「情熱的なチャレンジを続けることで、世界最高のエネルギーマネジメントシステムを開発したい」とした。
今回、ヤマハが担当する分野は、フォーミュラE規格のモーター、インバーター、エネルギー制御ソフトの3つだという。
ローラがヤマハと組んだ理由は?
一方、車体のパッケージングを担当するローラからは、モータースポーツディレクターのマーク・プレストン氏が会見に臨み、「東京でローラ復活の発表ができてうれしく思います。日本ではF1をはじめとしたローラのモータースポーツでの成功がうまく刻み込まれています。ローラの再生には3つの柱があります。電化、水素、持続可能性です。その電化の柱を形作るのが、まさにヤマハとのパードナーシップです」とあいさつ。「フォーミュラEは電動モータースポーツの頂点で、350kWのパワートレインを最先端のソフトウェアによって作動させる超効率性を追求したものであり、持続可能性にもフォーカスしたチャンピオンシップ」であるとしたうえで、「ヤマハは高いレベルでのモータースポーツの経験と複数の世界チャンピオンシップを獲得したヘリテージのある会社。両社で新たな道乗りを歩んでいきたい」と話した。
会場に設置された画面には、1970年代にあのジャッキー・スチュワートがドライブして活躍したローラ「T260」や、ラルース・ローラ・ランボルギーニ「LC90」を駆って1990年の日本GPで3位に入賞した鈴木亜久里選手の懐かしい映像が流れ、往年のローラ社の活躍の様子を見ることができた。
両社は2025年シーズンから参戦する「GEN3 EVO」のフォーミュラEマシンの画像を披露。鮮やかなイエローとブルーのボディには「YAMAHA」と「LOLA」のロゴが描かれていた。ただし、今回の会見ではマシンを供給するチーム名は明かされなかった。
会見にはフォーミュラEホールディングスのジェフ・ドッズCEOとアルベルト・ロンゴ共同創設者も同席し、両者の技術提携を歓迎していた。