ワーク・ライフバランスは3月22日、「企業の働き方改革に関する実態調査」の結果を発表した。調査は2023年1月30日~2024年1月31日、全国の20歳~70歳のビジネスパーソン1,143名を対象にインターネットで行われた。
「子どもを産み育てたい」と思える理想的な労働時間は?
「子どもを産み育てたい」「子どもをさらに持ちたい」と思える理想的な労働時間を聞いたところ、1日「5時間以上~7時間未満」に回答が集中。また、労働時間を短くすればするほどよい、というわけではなく、理想の労働時間が「5時間未満」であった場合、追加で欲しい子どもの数は比較的少なかったことから、子どもをさらに欲しいと思えるためには、適度な労働時間(により必要な収入を自力で得られる自信を持てること)が求められていることがうかがえた。
管理職になりたいと思えるようになるために必要なもの
次に、管理職になりたいと思えるようになるために必要と考えるものを教えてもらったところ、全体では「適切な評価がある」(女性53.6%、男性57.4%)が最多に。しかし、幼児期の子育てをしながら家事もこなす30代以下の女性においては「労働時間が1日6時間程度」が最も多く、長時間労働が管理職になる大きなハードルであることが明らかに。昨今注目される女性活躍推進には、適切な評価があることに加え、適切な労働時間が影響を持つ可能性が高いことがわかった。
一方、30代以下の男性においては、労働時間よりも「適切な評価がある」ことを重視する傾向に。管理職になるための労働時間に対しての課題感は女性に比べて小さいよう。その背景には、女性へ家事・育児の負担がのしかかっていることが考えられ、性別役割分担意識の解消のための行動が望まれる結果となった。
離職率が低下した企業が実践していた取り組み
次に、離職率が低下した企業が実践していた取り組みを調べたところ、「各部署で今後の働き方に関する議論の時間の設定」(43.6%)や「情報共有の仕組みづくり」(40.0%)が上位に。
2023年度内に取り組んだ働き方改革の内容を聞いたところ、「社員のスキルアップ等を目的とした研修の充実」(33.5%、昨年比+0.9%)や「管理職のマネジメントスキル向上を目的とした研修の充実」(28.6%、昨年比+4.0%)が多く、昨年と同様に社員のスキルアップに取り組んだ企業が多いよう。
増減率に着目すると、2022年度と比較して最も増加したのは「勤務間インターバル制度の導入」(24.5%)で昨年比7.2%増。2019年4月の労働基準法改正により、勤務終了から次の勤務開始まで一定の休息時間を設ける“勤務間インターバル制度”の導入が努力義務となったが、この法律には「5年後見直し」の規定がある。5年後である2024年が同制度についてさらに検討が進むことが考えられることから、各企業がそれを先取りして導入に動いていると考えられる。
また、「社員同士のコミュニケーションの場づくり」(23.8%、昨年比+6.5%)でも増加率が高く、コロナ禍に進んだテレワークを維持しながらも、業務が円滑に進むスタイルを模索していることがうかがえた。なお、反対に最も減少幅が大きかった取り組みは「時間単位有給など有給取得の取得強化」(19.0%、昨年比-6.1%)や「在宅勤務など勤務場所の柔軟性」(21.8%、昨年比-5.4%)だった。
採用がスムーズになった企業が実践していた取り組み
次に、採用がスムーズになった企業が実践していた取り組みを集計したところ、最も多かった取り組みは「勤務間インターバル制度の導入」と「特定の人への業務集中を防ぐための情報共有の仕組みづくり」(ともに38.1%)だった。
長時間労働に陥りやすい業界や、深夜の業務がある業界ほど採用が難しい中で、その業界を目指す人材に対し、「勤務間インターバル制度の導入」によって11時間の休息を保証し、7時間睡眠のとれる生活を目指している企業姿勢を見せることが、同じ業界の中での大きな差別化になっているよう。
また、「特定の人への業務集中を防ぐための情報共有の仕組みづくり」が出来ている企業ほど、有休を取得したり、男性が育児休業を取得することが可能になるため、全社的な働きやすさを実現し、採用時にPRできていると考えられる。
一方、採用において効果が高いと考えられる「基本給、賞与アップ」(17.6%)はワースト2位。トップとの差は2倍以上と意外な結果となった。
業績が向上した企業で実践していた取り組み
続いて、業績が向上した企業で実践していた取り組みを聞いたところ、最も多かったのは「部門間連携を強化する取り組み」で45.1%。次いで「特定の人への業務集中を防ぐための情報共有の仕組みづくり」(42.9%)が2位という結果に。
「採用がスムーズになった企業が実践していた取り組み」「離職率が低下した企業が実践していた取り組み」と同じくして、業績の向上にもつながる属人化の解消は、働き方改革における万能薬といっても過言ではないよう。反対にワースト3位までの項目である「残業削減に向けた数値目標の設置」(26.6%)や「不要な業務の削除」(24.5%)、「ノー残業デーや定時退社の促進」(24.0%)といった取り組みは、業績向上には結びついていないことが伺える結果となった。
2024年に取り組みたい施策
2024年に取り組む予定の施策または取り組みたいと思う施策を教えてもらったところ、「残業削減」(27.0%、昨年比-2.8%)が1位に。増加率が大きかったのは「時間単位取得可能な有給制度の導入」(19.4%、昨年比+4.6%)や「インターバル制度の導入」(14.6%、昨年比+3.9%)、「男性の育児休業の取得・促進」(23.4%、昨年比+3.0%)で、さらに仕事と家庭の両立を図りたいという労働者側の望みが伺える結果に。
特に、「男性の育児休業の取得・促進」については、取得率が年々増加。男性の育児休業取得率を高めるために、大企業だけでなく中小企業においても、24年度の早い時期から「育児休業・産後パパ育休に関する研修の実施」や「自社の労働者の育児休業・産後パパ育休取得事例の収集・提供」など、育休取得率・日数の向上に取り組むことが重要といえる結果となった。