伊藤園お~いお茶杯第65期王位戦(主催:新聞三社連合、日本将棋連盟)は挑戦者決定リーグが進行中。3月25日(月)には白組の羽生善治九段―渡辺明九段戦が東京・将棋会館で行われました。対局の結果、横歩取りの短期決戦を68手で制した羽生九段が2勝目を挙げました。
83度目のゴールデンカード
白組は2局を終えた段階で渡辺九段と木村一基九段が2連勝。1勝1敗でこの二人を追う羽生九段にとっては早くも勝負どころです。渡辺九段の先手で始まった本局は羽生九段の誘導で横歩取りへ。流行の青野流ではなくクラシカルな持久戦を選んだのは渡辺九段の趣向です。
類型的な中盤戦のなかで渡辺九段が工夫を見せます。3筋の歩を突いて右桂の活用を見せたのは自然なようで主張のある手。放置すれば先手は遊び駒のない好形を実現できます。実戦はこれを許しては不満と見た羽生九段が反発、右辺での激しい攻防戦が始まりました。
羽生九段快勝で白星先行
1枚の歩をはさんで両者の飛車が向かい合う勢力争いを抜け出したのは後手の羽生九段でした。積極的な桂の跳ね出しで飛車のさばきを目指したのが読みの衝突を恐れない好手。受けて立つ渡辺九段は数手後に待つ反撃の筋が不発に終わったのが大きな誤算でした。
優位に立ってからの羽生九段の指し手は冷静でした。丁寧に持ち駒の銀を投入して先手の攻めを余しに行ったのが決め手。玉の薄い先手は一度攻めが切れると粘りが利きません。終局時刻は17時47分、形勢の開きを認めた渡辺九段の投了で羽生九段の勝利が決まりました。
これで勝った羽生九段、敗れた渡辺九段ともに2勝1敗となっています。
水留啓(将棋情報局)