子供用の自転車は買うタイミングを見極めるのが難しい。なぜなら子供の身体の成長と運転技術の両方を見極める必要があるからだ。ゆえに、ちゃんとした自転車に乗せたいと思っても、どのように選んだらいいのか分からない人が多い。
本格的なキッズバイクが販売されはじめたのは、ここ数年の話。ヨーロッパでも専門メーカーが誕生し、注目を集めている。そこで、もっと子供が自転車好きになる選び方を学んでみよう。
■適正サイズの選び方
さて、子供用自転車を選ぶときに、もっとも大切なのはナニか? それは「子供用だから」という気持ちを忘れること。想像してみてほしい、洋服でもスニーカーでもサイズが合わないと不快だろう。それは大人も子供も一緒。大は小を兼ねないし、その逆もそう。きちんと身体に合ったサイズの自転車を探すのがもっとも大切なのだ。
では、具体的にキッズバイク選びをはじめよう。地面を蹴って進むキックバイクを卒業したら、次の自転車は脚の長さを基準にサイズを決める。
ホイールの大きさを気にする人もいるが、車輪の大きさから自転車のサイズを考えるのは間違い。身体のサイズに合った自転車を選んでいけば、成長するに従ってホイールも大きくなる。で、肝心の脚長の計測方法は以下の通り。
1.壁を背にして子供を壁際に立たせる。
2.小さな本を足の間に置き、不快にならない高さまで上げる。
3.本の上部から床までの長さを測る。
慣れないうちは着地がおぼつかないと不安になるので、サドルをいちばん低くして、両足がしっかりと地面に着地するか確認する。また、慣れてくると、停車時はトップチューブに跨がって着地するので、股間に十分なスペースがあるかもチェックしておく。
■扱いやすいブレーキが最優先
サイズが決まれば、次はブレーキのタイプをチェックしよう。キッズバイクにはペダルを逆転させると減速するコースターブレーキと、一般的なハンドブレーキの2種類がある。キックバイクを卒業したばかりなら直感的に操作できるコースターブレーキもいいが、ブレーキレバーがしっかりと握れるようならハンドブレーキを選ぼう。
大人用でもそうだが、スピードコントロールが自在にできるとサイクリングは一気に楽しくなる。その鍵を握るのがブレーキ性能。どのレバーも同じように見えるが、ちょっとした違いで操作性が大きく変わるので、本人にレバーを握らせて感触を聞いてみよう。
■ペダリングしやすいクランクを
ペダルを漕ぎやすい自転車と、そうでない自転車がある。必ずしも理由は1つではないが、その大半はペダルが取り付けられているクランクの長さが最適化されると解決することが多い。
クランク長の違いを理解するのに、ヒントとなるのが階段の段差(蹴上)だ。1段ずつの段差が大き過ぎても、小さ過ぎても登りづらい。ペダリング中も足を上下させるが、クランクが長くなると段差が大きくなるのと同じで、ペダルを漕ぎにくくなる。
大人用のクランクは160㎜から2.5㎜刻みで177.5㎜まである。クランク長は半径になるので、2.5㎜の違いは1回転させると5㎜の違いになる。わずか2.5㎜の違いでも、ペダリングのしやすさは大きく変わる。
一般的にクランク長の目安は身長の10分の1程度と言われているが、子供用のクランクはサイズ展開が乏しく、長過ぎるクランクが装着されている場合が多い。高価なキッズバイクは、そうした細かな寸法まできっちり考えられており、価格なりの違いがあるのだ。
■変速機は必要か
キックバイクを卒業したばかりの子供に、最初から変速機を使えというのは無理というもの。しかし自宅の周辺に坂が多いのであれば、やはり変速機は着いていた方がいい。坂の多いエリアは自転車に乗れない人が多いものだが、ギアを積極的に変えて乗れば坂道もラクに走れる。子供の頃から変速機を使い慣れることも大切だ。
■重量は少しでも軽く
キッズバイクを手にして、多くの人が「思ったよりも重い」と感じる。大人が持っても重いのだから、子供が扱うとなれば、彼らはさらに重く感じる。ヨツバサイクルやフロッグバイクのようなキッズバイク専門メーカーや、スポーツバイクメーカーが手掛ける自転車が軽いのは、フレーム素材や部品に工夫を凝らしているからだ。
■小まめにメンテナンスする
子供にとって自転車はハードに使用する実用品。それ故、キッズバイクの99%はメンテナンス不足だ。子供が成長すれば、サドル高も比例して高くなるし、乗る回数が多ければタイヤはすり減り、ブレーキパッドなどの消耗品も減る。
しかし、買ったままサドル高の調整もせず、注油もされないキッズバイクがほとんどである。小さくても、速度が遅くても子供はキッズバイクに命を預けて乗っている。
子供と一緒に走りたいサイクリストが増えたことで、キッズバイクの需要は高まっている。しっかりと整備されてコンディションのいいキッズバイクは高価で取引されているので、手を抜かずに整備し、子供の成長と共に乗り換えていくのが正解だ。
文/菊地武洋 写真提供/ダートフリーク、ポディウム