マウスコンピューターは2024年3月19日、報道機関に対して広島県のGLP 広島II内に設置したマウスコンピューター広島サービスセンター(以下広島SC)を報道陣に公開。今後のサービス体制に関しての説明を行いました。

  • 2023年11月に拡大移転したマウスコンピューター 広島SC。GLP 広島II内にあります。同所のテナントに佐川急便も入っているため、運送日数の削減にも貢献

    2023年11月に拡大移転したマウスコンピューター 広島SC。GLP 広島II内にあります。同所のテナントに佐川急便も入っているため、運送日数の削減にも貢献

広島サービスセンターを昨年11月に移転し、徐々に増強中

マウスコンピューター 常務取締役の軣秀樹氏によると、マウスコンピューターの修理部門は2002年に埼玉で設立。現在は春日部市の埼玉SCがメインサポート拠点となっています。対して広島SCはエディオン向けのサブサポート拠点として2007年に2名体制で開設し16年かけて8名体制に拡充しました。これを2023年11月に西日本全域に広げるべく、広島市内のGLP 広島IIに移転しています。

  • 事務所スペースは将来コールセンターも設置予定でサポートとコールセンターオペレーターの距離も縮まります

  • マウスコンピューター 常務取締役の軣秀樹氏。サービス本部長ということでサポートセンターだけでなく、コールセンターも担当になります

GLP 広島IIは日本GLP株式会社が昨年2月に竣工したマルチテナント型の物流施設となっており、マウスコンピューターはそのうちの1080平方メートルを使用しています。興味深かったのは物流施設に設置したことにより従業員が不在時の営業時間外でも荷物の積み降ろしができる置き配バースを導入していること。イメージ的にはテナントの玄関口に置き配されている感じです。

また、メザニン付き休憩所やテラスを設置(無人コンビニ機能もあり)と働く人にもやさしい環境になっているのも特徴です。

  • マウスコンピューターの現在のサービス・サポート拠点。生産は飯山工場で、修理が埼玉と広島。コールセンターは沖縄がメインで米子にもあり、サービスセンターにもコールセンターを設置します

現在の広島SCの従業員数は24名で、現在徐々に増強中。最終的には50名体制にするとのこと。現在は九州・沖縄エリアのみの対応ですが、今年4月から中国四国地方、7月からは大阪府を除いた近畿エリアに広げ、年末までに西日本全域に対応エリアを拡大する計画とのこと。大阪府を除いているのは「大阪は非常に多くのユーザーがいらっしゃるので、広島SCの増強を行ってから対応する(軣氏)」。

  • サポート拠点の沿革。修理部門は埼玉からスタートして、広島はエディオン向けでスタート。この広島が大きく拡大したのが昨年11月。コールセンターは以前外注だったのを自社化したそうです

  • 広島はエディオン専用としてスタートで場所もエディオンの物流拠点を間借り。その人員と設備を2023年11月に移転して、規模を拡張したのが新拠点となります

  • 現在徐々に範囲を拡大している最中で、今年年末をめどに西日本全域をカバーする予定。大阪が最後になるのは、大阪のお客さんは多いので一気に広げられないためだそう

  • 共有ながら休憩スペースはかなり充実しています

働き方改革の一環としてクラウドコールセンターの構築が行われており、在宅勤務やコールセンターの連携が可能な作りしています。

このため去年8月の台風で沖縄のコールセンターが停電で二日間稼働しなかった際も「コール率は落ちたもののコールセンターは止めなかった(軣氏)」と分散化のメリットがあるとのこと。

従来スタッフはそのまま、雇用にも向く新拠点へ

広島SCの詳細に関しては広島サービスセンター長の亀井賢氏が説明。GLP 広島IIを選んだ理由として、旧拠点からあまり離れていないので従来のスタッフがそのまま通勤できる拠点であることに加えて、新拠点となる広島市の人口は旧拠点の10倍以上で求人面とセンター増強に向いていたと説明。さらにGLP 広島IIが新設された設備でセキュリティ面も高く、施設そのもののも働きやすさを考慮した作りになっているということを挙げていました。

  • マウスコンピューター 広島サービスセンター長の亀井賢氏。近隣県出身ということもあり、エディオン向けの修理部門ができた際に埼玉SCからUターン

  • 広島サービスセンターはGLP広島II内にテナントとして入居し、スタッフは50名体制まで増強する予定

広島SCは西日本を担当エリアにしますが、サービスレベルは埼玉SCと同様の品質を保つそう。そのために埼玉SCのメンバーが一時期広島に来たり、逆に広島のメンバーが埼玉に研修をするなどの交流が行われたとのことです。

西日本のユーザーから見た場合は、距離的にSCが近くなることから、修理品の配送にかかる時間が短縮される分、より短い期間で修理完了するというメリットが挙げられます。これによって埼玉SCの担当エリアが狭くなりますが、埼玉のスタッフ削減は行わず、コールセンター同様にBCP対策の一環ともなっているそう。

広島SCは広いスペースを活用して保守に必要なパーツを収納。現在は埼玉SCでは保守パーツを格納しきれず、外部倉庫を使用していますが、最終的には外部倉庫に頼らず自社施設のみに保守部品を保管することによって、迅速な修理体制にするといいます。

マウスコンピューターは昨年標準無償保証期間を3年に延長し、ビジネスPCならば有償で5年保証にも対応しています。このためには必要な保守部品を保持する仕組みが不可欠で、SC内に保守部品を保持することによって修理期間の短縮化を狙う目論見があります。

保守パーツに関しても、箱に積み重ねておくと不良発生の原因になることもあり、マザーボードは特製の袋に入れて吊り下げる仕組みを用意していました。

  • 新拠点は広島市内にあり、旧拠点の廿日市市からからも通勤可能で広島市の人口が多いため雇用確保にも有利。また、新建屋なので働きやすくセキュリティ的にもよいとのこと

  • 広島SCは埼玉SCと同様の高い品質で西日本エリア顧客の不具合を解決するのが目標

  • 従来西日本エリアから埼玉に輸送するために2日要していたが、これが一日となりサポートにかかる日数を削減でき、物流費も下がる。また物流拠点一体で佐川との連携が容易

  • 広さを生かして、84パレット分の在庫の倉庫としても活躍。現在埼玉SCだけでは保守部品が格納しきれず外部倉庫を使用しますが、これをなくす方向だそうです

  • 実際のサービスセンターのテナント外の荷受けスペース。荷受けスペースから荷物用の大型エレベーターで輸送され、朝には修理依頼品が届く仕組み

  • こちらが実際のサービスセンター。左側に見えるのが倉庫機能として使うためのネステナー。中央が保守部品の棚で、右側に見える机は修理品のチェックを行う受付スペース。倉庫ゆえに天井が高い

  • こちらが実際の修理作業スペース

  • 修理品は内容を確認し、必要に応じて同梱品の写真を撮影

  • 同梱品のチェックシートはこんな感じ。製造工程でのペーパーレス化は実現しているものの、修理部門はまだ紙が残っているので、このペーパーレス化が将来の課題

  • お客様の不具合を確認しているところ。再現できないこともあるのが悩みとのことで「こういう状況だと確実に再現する」ということを書いてもらえると助かるとのこと

  • 確認した不具合をもとに、部品交換による修理作業

  • ドライバ類の再インストール。場合によってはOSも再インストール

  • 修理作業のチェックシートはこのような感じ。こちらはノートパソコン用でデスクトップ用も用意されています

  • 保守パーツの保管方法はさまざま。こちらは一つ一つ箱に入っているタイプ

  • ビデオカード類は段ボールにまとめて格納

  • ノートパソコンのマザーボードを積み上げると故障の原因となるため、袋に入れて吊り下げるというのがユニーク

  • お客様から届けられた箱はこちらで保管。基本的に届けられた梱包材をそのまま使用して返却します

  • GLP 広島IIは働きやすさにつながる仕掛けがいくつか用意されています。大股で歩きましょうという健康ステップウォーキング

  • 歩幅の目安が床の模様で描かれています。62.5/75cmは20代の女性/男性の目安

  • エレベーター脇には「たまには階段を使いましょう」の掲示

  • 喫煙室は電子タバコと紙巻きたばこの二段階。見学時は紙巻きたばこ派が数名利用中でした

  • 休憩スペースとなるカフェテリア。結構広いうえに、カウンタータイプの席は電源あり

  • お昼時ではなかったので、休憩者は少なかったです。奥に見えるのが無人コンビニ

  • コンビニはセルフレジ専用。ドリンク、お菓子以外に冷凍弁当も用意されています。SHINKO 24 STOREは企業内売店で使われています

  • カフェテリアにはミーティングスペースも

  • 蔵書スペースも用意されていました

高い質のサポートを二拠点体制に。働き方改革の説明も

軣氏からは、そのほかの取り組みや実績に関しても説明がありました。働き方・休み方改革として、コールセンターをクラウド化することで在宅勤務を可能にしたほか、先に紹介したように災害時のBCP対策にもなりました。

面白い取り組みとしては「有給休暇の時間単位取得」が可能なこと。「子どもを迎えに行くのに数時間有給を取る」という使い方ができるというのはなかなか有意義なものを感じます(現在、就業規則への記載と労使協定を結べば一時間単位の有給取得が法律上認められています)。

さらにインフルエンザ予防接種の支援を本人だけでなく、家族にも行うとのこと。子育てサポートとしては次世代育成支援対策推進法に基づく「くるみん認定」も取得しています

  • マウスコンピューターの働き方・休み方改革。コールセンターシステムのクラウド化は在宅勤務のほかBCP対策にも役立ったそうです。また有給が時間単位でとれるのはよさそう([労使協定を結ぶと時間単位が可能](https://www.mhlw.go.jp/content/000560872.pdf))

サービス関係に関しては具体的な数値も示されました。コールセンターに関しては受電率、一次解決率、平均応答時間、アンケートスコアすべて2022年実績よりも向上。サービスセンターにおいては5年間の修理可能率と再返却率は向上していますが、平均修理納期は目標は達成しているものの昨年よりも時間が伸びています。これに関しては「(再修理にならないように)直すことを優先したため」と説明がありました。

  • サービス本部はコールセンター、サービスセンターともに不具合解消のために設置。対応時間の目安はサイトで公開

  • 電話比率が半分以上なので、これを下げたいとのこと。「まだAIの活用が不十分」なのが今の課題とのことです

  • コールセンターのKPIはまだ目標には達していないものの、昨年よりもすべて向上

  • 取り組みとしてはチーム・他部門連携のほか、各種勉強会。改善のためのミーティングやAIの活用も今後挑戦

  • サービスセンターのKPIはおおむね目標を達成。平均修理納期が昨年よりも時間がかかっているのは「再返却率を下げるため」とのこと。5年間の修理可能率も「一部のタブレット製品以外は対応した」

  • 法人向けに関しては下取り以外に買取サービスも実施。また、自営保守契約も拡大中

  • こちらもチームや部門間連携に加え、情報共有や勉強会。作業スタッフのジョブローテーションを実施。サービスセンターのペーパーレス化と法人向け自営オンサイト修理に挑戦中

最近のWindowsOSの場合、マイクロソフトアカウントがないと内部を見ることができないこともあり、これを顧客に尋ねることも修理期間が延びてしまう原因になっているとのこと。また、SCで不具合が確認できない場合もあり、これらの顧客への再確認に時間がかかるケースがあるという説明があり、スムーズな修理はなかなか難しいと思います。サポート拠点にコールセンターを用意するのはオペレーターとエンジニアの距離を縮める意味でよいと思いますが、可能ならばエンジニアが電話対応できる手段や電話以外のやり取りも求められる感もあります。

直営のサポート以外に販売代理店による自営保守契約も行っており、オンライントレーニングを行って現在13社程度が対応しているとのことですが、ノートパソコンのバッテリー交換などのセンシティブなものはサービスセンターのみの対応とのことでした。