「結構毛だらけ猫灰だらけ」は、落語や寅さんの売り口上として有名です。しかしそもそもどんな意味なのかや、成り立ちまでは知らないという人も多いでしょう。
そこで本記事では「結構毛だらけ猫灰だらけ」の意味や語源、寅さんの売り口上の続きを紹介します。
「結構毛だらけ猫灰だらけ」の意味とは
「結構毛だらけ猫灰だらけ」とは、「大変結構だ」という意味の言葉遊びです。
「『け』っこう」と「『け』だらけ」のように、同音で始まる語を重ねることで、そのまま言うよりもテンポ良く、洒落っ気を加えることができるのです。
映画『男はつらいよ』の寅さんの売り口上の全文は?
この「結構毛だらけ猫灰だらけ」という言い回しは古くからあり、落語にも使用されています。
それをさらに有名にしたのが、山田洋次原作・監督、渥美清主演の『男はつらいよ』シリーズにおける、寅さんの売り口上と言えるでしょう。
露天商人である寅さんは、クスっと笑える売り口上を、人々がほれぼれするような、よどみない口調で高らかに述べるのです。その売り口上は、落語から一部を拝借したり即興で語呂合わせをしたりしながら、寅さんのセンスによって生み出された、まさに「芸」と言えるものです。
この売り口上にはいくつかのパターンがあり、状況によっても変わるため毎回違いがありますが、「結構毛だらけ猫灰だらけ」を含むフレーズの続きの一つを見てみましょう。
結構毛だらけ猫灰だらけ、お尻のまわりはクソだらけってね!
タコはイボイボ、ニワトリは二十(はたち)、イモ虫は十九で嫁に行くときた!
黒い黒いは何見てわかる、色が黒くてもらい手なけりゃ、山のカラスは後家ばかり、どう?
せっかくなので、その他の口上の一部もご紹介しましょう。
もうやけくそ! やけのやんぱち、日焼けのなすび、
色が黒くて食いつきたいが、あたしゃ入れ歯でよう歯が立たん! つうやつだよこれ!
あなた百までわしゃ九十九(くじゅうく)まで、
ともにシラミのたかるまでときやがった、どうだい、ちくしょう!
さあ、どうだい!
四谷赤坂麹町、チャラチャラ流れるお茶の水、粋な姉ちゃん立小便!
白く咲いたが百合の花、四角四面は豆腐屋の娘、色は白いが水臭いときやがったら!
少々品に欠ける言葉もあるものの、軽快なリズムで口上を述べる寅さんが、周りに集まったお客さんを魅了している姿が目に浮かびますね。
「結構毛だらけ猫灰だらけ」の語源
さてここで一つ疑問が浮かびます。「結構毛だらけ」が「け」つながりで語呂が良いことから生まれたことはわかりますが、「猫灰だらけ」とはどういう意味なのでしょうか。
実はかつて、猫が灰だらけになることは冬の風物詩だったのです。家庭にかまどがあった頃、人が火の始末をした後に、暖を取ろうとかまどの灰の中に猫がもぐりこむことが多かったため、このような言葉ができました。
この様子を指した、「竈猫(かまどねこ)」という冬の季語もあるくらいです。
現代ではかまどがある家庭はほとんどないでしょうが、こたつで暖を取る猫を指して「炬燵猫(こたつねこ)」という季語もありますよ。
「結構毛だらけ猫灰だらけ」は洒落の効いた言葉遊び
「結構毛だらけ猫灰だらけ」とは、「大変結構だ」という意味で、語呂を合わせて面白おかしくした言い回しです。
寅さんの売り口上はもちろん、ラップで韻を踏むことや、ことわざをもじって面白くするなど、世の中にはいろいろな言葉遊びがあります。
ストレートに伝えると味気ないというときや空気を和ませたいときに、こういった言葉遊びを上手に使えると、コミュニケーションの潤滑油となるでしょう。