1月1日に発生した令和6年能登半島地震では家屋が甚大な被害を受けましたが、電気や水道などのインフラも大きな打撃を受けました。発災当初、電気も水も使えない状況で自宅での避難を続けた被災者に人づてに寄せられたのがポータブル電源。被災者は「保存した電気を自宅に持ち帰って使える」「電気を備蓄できる」メリットを痛感していました。
短時間で充電でき、電気を自宅に持ち帰れるのが助かった
能登半島地震の発生から間もなく3カ月。大きな被害を受けた石川県珠洲市を3月中旬に訪れると、まだ元日のまま手つかずの状態の家屋が多く見られたほか、上下水道は復旧が遅れていて市街地でも断水が続いており、厳しい状況のなか多くの人が生活を続けていました。
電気はすでに多くの地域で復旧が済んでいましたが、発災からしばらくは停電が続きました。当時、優先的に電気が復旧した避難所や役所、学校などに行かないとスマホの充電ができず、在宅避難している人は明かりもなくテレビも見られずスマホの充電もできない状況で心細い思いをしたそうです。
珠洲市でキャンプ場を運営している濱野達也さんもその1人。年末年始をキャンプで過ごす客が数組訪れていたなかで地震が発生。キャンプ場に目立った被害はなかったものの、道路が寸断されたことで客が帰宅できなくなり、倒壊を免れたキャンプ場の事務所で客と一緒に在宅避難をすることに。キャンプ用の食料やカセットコンロがあったので食べ物には困らなかったものの、停電しているので夜は真っ暗になるのと、わざわざ学校に行かないとモバイルバッテリーやスマホが充電できないのが困ったそう。
不自由な状況のなか、キャンプつながりの知人から連絡があり、ポータブル電源が送られてくることに。EcoFlowが被災地に向けてポータブル電源の貸し出し先を募っていることを知った知人が、キャンプ場での窮状をEcoFlowに伝えたところ、貸し出しを快諾してくれたそうです。
「道路の寸断や渋滞があったので10時間ほどかかったそうですが、知人がEcoFlowから借り受けたDELTA Proをフル充電状態にして持ってきてくれました。ポータブル電源が来たことで明かりが取れ、スマホも充電でき、ちょっとした家電も使え、大いに助かりましたね。昼間、電気が復旧していた知り合いの店に持っていって充電させてもらい、夜に家に持ち帰って使っていました。1時間ほどしか充電する時間がなくても容量が相当回復でき、充電が速いのは大いに助かりました」
ほどなくして濱野さんの地域も電気が通じたので、EcoFlowに相談して許可をもらい、まだ停電していた地域の知り合いにポータブル電源を回したそう。「水や食料は避難所で分けてもらって自宅に持ち帰れるけど、電気はそうはいかないので、大いに喜ばれましたね。災害に備えて水や食料を備蓄している人は多いと思いますが、ポータブル電源も備えておいた方がいいと痛感しました」
珠洲市で瓦屋を営む濱野さん、これまで大きな地震が発生した時は瓦の修理依頼がすぐに来たものの、今回は修理依頼が少ないと感じているそう。「家がつぶれて避難している人が多く、それどころではないんでしょうね。僕もしんどい状況ですが、瓦の修理で頼ってくれる人がいるし、元日にいたお客さんからクラウドファンディングを提案されて、全国の人やキャンプ仲間が応援してくれています。珠洲で人と人をつなぐ場として、今後も頑張っていきたいと思います」と、珠洲の復興に向けて前を向いていました。
ポータブル電源で温水シャワーもバーバーチェアも使えた
珠洲市で4代続く理容店を営む瓶子明人さんの店舗兼住宅も震災で電気と水道が止まり、お店の営業ができない状態に。水だけは近くの井戸から確保できたものの、電気がなくて困っていたところにポータブル電源を貸与するという話が来て、運よくEcoFlowのDELTA Proを借りられたそうです。
避難所になっていた学校には電気がいち早く来ていたので、日中に学校にポータブル電源を運んで充電させてもらっていたそう。「スマホを充電している人がほとんどでしたが、私のほかにもポータブル電源を充電している人がいて、珠洲でも備えをしている人がいるんだと思いましたね」
停電が続いていた1月13日、常連客がお店を訪れてカットを依頼しに来たそう。「まだ停電しているしどうしようかと思ったんですが、髪を整えれば気分も晴れやかになってくれるだろうと思って」と快諾。ポータブル電源にLEDライトをつないで店内を明るくしつつ、汲んできた井戸水を温めて電動シャワーで洗髪し、ドライヤーで仕上げ。バーバーチェアもポータブル電源で動かせたと振り返ります。
「家族が7人と多いこともあって、7人分の食料や水は備蓄していました。ポータブル電源もキャンプやレジャーで使える小型のものを持っていましたが、防災の観点ではもっと大きいのが必要だと感じましたね」と語ります。
瓶子さんの店舗兼住宅は建て替えが必要なほどの大きな被害を受けてしまったそう。「いつか建て替えたいと思っていますが、近隣の住宅は多くがつぶれてしまい、戻ってこない人も多いのではと感じています。地域の人でまとまってどこかに移住してコンパクトシティを作るのか、ここで再建するのかはまだ決めていませんが、再建したらソーラーと蓄電池を付けることは決めました」と瓶子さんは語ります。