パナソニック エレクトリックワークス社(以下、パナソニックEW)は、2月10日~11日に佐賀県のSAGAアリーナで開催された「2023-24 V.LEAGUE DIVISION1 WOMEN」の試合において、ユーザー参加型演出の実証実験を行いました。ゲームは「久光スプリングス × 東レアローズ」および「久光スプリングス × 埼玉上尾メディックス」です。洗練された光と音の演出を加えることで、スポーツ観戦はこんなにも変わる!
ベースとなるのは、パナソニックEWが手がける「街演出クラウド YOI-en(ヨイエン)」です。これは照明を使って街を演出するソリューション。これまで、さいたま市大宮盆栽美術館や京都の平安神宮、東京有明のパナソニックセンター東京など、いろいろな場所を照らしてきました。
YOI-enは単に観光施設やオフィスビルなどに照明を当てるだけではありません。動きのある光演出、照明で人間の行動を促すアフォーダンスライティング、一般参加者によるスマホアプリからの照明操作といった体験を提供することで、エリアの価値を高めることが大きな目的の1つです。
各種の照明機材やセンサー類、ネットなどから入ってくる情報をクラウドプラットフォーム上で一括管理・処理して、多彩な機材や外部アプリを連動。複数の場所の演出をまとめて行えます。比較的小規模なエリアから、東京と大阪といった離れた場所同市でも、照明演出を連動させられます。
観客の情熱を可視化して最大8400人の熱狂を生み出したい
YOI-enを用いた演出を導入したのは、佐賀市に拠点を置く女子バレーボールチームの久光スプリングスです。2023年10月から練習拠点を佐賀県鳥栖市に移し、SAGAアリーナでのホームゲームが始まりました。
久光スプリングスでGM補佐を務める小早川さんは、最大収容人数が8,400人と規模が大きいSAGAアリーナに拠点を移してから、ホームゲームをどのように見せていくかを考えていたそうです。
「お客さまの熱狂を生み出し、情熱や心の動きを会場で可視化したいと考えていました。そんなときにちょうどYOI-enの取り組みを聞きました。今回、私どものチームカラーである久光ブルーで会場をどれだけ染められるか、その演出を私自身もワクワクしながら楽しみにしています」(久光スプリングス 小早川さん)
オープニングと選手紹介の演出で会場の一体感を盛り上げていく
今回はYOI-enのシステムと機能をスポーツ興行の演出に応用する実証実験。パナソニックEWの担当である上野山浩志さんは、「YOI-enはこれまで屋外の空間演出を中心に手がけていましたが、今回は来場されたお客さまに、インターネットを使って演出に参加してもらう取り組みです」と語ります。
具体的には、オープニング演出前の応援合戦への参加と、推し選手の照明演出のバージョンアップです。来場者はQRコードを自分のスマホで読み取り、Webページにアクセスします。画面の指示に従って、座席エリアや応援チーム、推しの選手といった情報を入力したあと、Webページのボタンを激しくタップすると照明演出が徐々に変化していくする仕組みです。
ユーザー参加型演出の1つ目は「青く染めろ!」です。SAGAアリーナの1階に設置されたムービングライトを光の柱に見立て、観客がスマホ画面をタップした回数に応じて、光の柱がチームカラーの青へと1本ずつ変わっていくというもの。
開演時間になると、アリーナDJが音楽に合わせて「会場を青く染めてください!」と観客を激しく煽ります。そうして1本ずつ光の柱が青に変わり、4本すべて青になるとオープニングムービーがスタートしました。試合開始前に会場内の一体感が強くなる演出です。
「これは久光スプリングスのファンに向けたコンテンツです。ファンの皆さまが専用サイトから応援してくださったデータがYOI-enに飛んできて、会場内の演出が変わっていく仕組みです。応援のボルテージが最高潮になると会場が青く染まり、それ以降、青い光の演出が走り出します」(パナソニックEW 上野山さん)
そしてもう1つ、選手が入場するときの演出に観客が参加します。オープニングで自分の「推し選手」が入場してくるときに、スマホ画面の応援ボタンをタップすると、会場の演出が変わります。選手入場時の一体感を醸成するとともに、チーム側は観客の推し選手に関する情報を集められます。
「今回のYOI-en管理画面では、アプリで参加してくれた来場者のデータを見られるようになっています。試合が終わったあとでこの情報をチームと共有して、この選手の推しが多かったとか、こういう年代の参加者が多かったですよ――といった内容をフィードバックして、次の演出につなげていきたいと考えています」(パナソニックEW 上野山さん)
ブルーに染まったSAGAアリーナ、DJと光の演出で会場は大いに盛り上がる
定刻になり、オープニング演出がスタートしました。音楽とDJによるコールで会場は盛り上がっていきます。そして、コートの4隅に設置されたムービーライトの光が1本ずつ久光ブルーに変わっていきます。
続いて選手紹介の演出へ。これも、サウンドとムービー、光の演出によって1人ずつしっかりとアピールされていました。客席から見ている限りでは誰が人気だったのかはわかりませんでしたが、クラウドにはしっかり記録されているとのことでした。
現在は実証実験の段階ですが、パナソニックEWはスポーツ興行の演出をYOI-enのビジネスにしていきたい考え。スポーツアリーナなどは既設の照明機材があるため、それらを活用しながら、YOI-en対応のコントローラーを持ち込むだけで参加型演出ができるシステムを作っていくとしています。
先述したように、YOI-enはもともと多拠点間の連動制御が可能。これを利用して、会場内の盛り上がりを外部の光演出とも連動させられるとのこと。試合が盛り上がっている雰囲気を伝えることで、チケット販売に貢献していくことも構想しています。そしてユーザー参加型アプリによって、ファンとチームのつながりを支援していくことも考えているそうです。