料理をするときや片付けるときに、キッチンとダイニング(リビング)をもっとスムーズに行き来できたら――と思うことはないでしょうか。ムダな移動や作業スペースの不足など、毎日使うからこそキッチン動線への不満は尽きません。パナソニック ハウジングソリューションズが「キッチン・ダイニングにおける生活実態アンケート調査」を実施し、ダイニングとキッチンの距離に注目した新しい間取りを提案するというので、展示会に行ってきました。
動線を短く! すぐに片付けられるキッチン
日本の住宅の間取りでは、コンロ、シンク、調理スペースを横一列に並べたI型タイプのキッチンが多く見られます。その数は全体の約8割を占めるそうです。I型のキッチンはスペースに限りのある住宅にも設置しやすいことがポイント。さらに、キッチンの近くにダイニングテーブルという配置もよく見られますが、こうしたレイアウトではリビングスペースを十分に確保できない場合もあります。
国土交通省の令和5年度 住宅経済関連データの「2.着工新設住宅の床面積の推移(3)着工新設住宅の一戸当たり床面積の推移(総平均、利用関係別)」を見ると、平成15年の総平均は89.4平方メートルでしたが、令和4年の総平均は79.8平方メートルと狭くなっています。
資材高騰などの影響で現在の住宅は小さくなっており、従来のI型キッチン+ダイニングテーブルのレイアウトだと、ゆったりくつろげる広さのリビングスペースを設けることが難しいことも。「ソファとダイニングテーブル、どっちを置くか……」と悩むこともあるのではないでしょうか。
そこでパナソニック ハウジングソリューションズが新しく提案するのは、配膳・食事を含めたダイニング・キッチン空間。従来のキッチンスペースにダイニングテーブルを組み込んだプランです。
「配置変更によって約1.3倍の広さを確保でき、小さなリビングの広さを補うことができます」(パナソニック ハウジングソリューションズ担当者)。最近の物件だけでなく、流行りの「団地リノベーション」にもピッタリですよね。
今回の新プランでは、配膳や下げ膳の動線を最短化しているところに注目。同社の調査によると、一般的な家庭では食事の前後でダイニングとキッチンを8往復もしており、配膳や下げ膳の手間が大きいことが分かりました。
特に、調理した人の約8割が自分で配膳して、さらに調理した人の約半数は自分で下げ膳もしています。多くの家庭で、家族の協力が得られていない状況が浮き彫りになりました。また、「できたての料理を家族と一緒に食べたい」というニーズが約6割あるにも関わらず、実際には7割以上が冷めた料理を食べているという結果が。
言われてみれば……、配膳をして後からお茶を淹れたり、できあがったものから順に子どもたちが食べ始めたり、食べ始めてからカトラリー類が必要になったり(我が家の場合は小さく切るナイフや取り分け用のスプーンなどをよく取りに行きます)、自分が食べ始めるまでバタバタすることは少なくないですよね。
調理よりも、むしろ配膳を手伝ってほしいという気持ち、よく分かります。新プランではダイニングとシンクを近づけ、下げ膳の動線を短くすることで、家族が手伝いやすくなるというわけ。
レイアウトのポイントになったのは、同社のワイドコンロシリーズです。このコンロはフラットでトッププレートとカウンターの段差が約2mmとほとんど差を感じないため、コンロの手前スペースを調理スペースとして使えるところがポイント。しかもコンロは横に広いため、2人でキッチンに立っても調理しやすい作りです。200VのIHなので湯沸かしなどはアッという間。
ワイドコンロシリーズは「炊飯モード」「湯沸かしモード」を装備。IHコンロの上でお鍋を使ってごはんを炊けます。
炊飯器、電気ポット、電子レンジなどは、家庭にはまず置いてある定番家電でしたが、最近は多彩な調理家電が登場しています。「トースターにはこだわりたい」「最高級のコーヒーマシンを置きたいけど電気ポットは使わない」など、自分のライフスタイルにあわせて調理家電を組み合わせる人も増えています。
今回の新しいキッチンプランでは、コンロとシンクが分かれており、シンクが壁面に位置します。吊り戸棚を低めに取り付けられるという利点が生まれ、収納もたっぷりで物を取り出しやすく、使い勝手は良好。毎回の調理には使わない家電を置いたり、食器棚として使ったりできます。
また、冷蔵庫から取り出した食材をすぐにシンクで洗えるほか、シンクで洗った野菜をダイニングテーブルで下ごしらえするといった使い方も。餃子を包むときなど、スペースを広く使って家族と一緒に食事の準備をするときも、これならスムーズにできそう。塩・コショウのようなテーブルで使う調味料類も、このプランならコンロのそばに置いてすぐに手を伸ばせますね。
キッチンと食事をするスペースがぎゅっとまとまることで、リビングの見通しが良くなります。大きなソファを置いてもいいですし、コンパクトなソファとダイニングの椅子に分かれてテレビを楽しむなど、使い方のアイデアが広がります
浴室スペースをコンパクトして、家事スペースを作る
展示会では、浴室と洗面スペースの提案も注目を集めていました。一般的に浴室と洗面スペースは、浴室1坪+洗面スペース1坪というパターンが多いのですが、新プランは浴室を30cm縮めて、そのぶん洗面スペースを広くするものでした。
洗濯機で洗った服をそのまま畳んで収納したり、アイロンをかけたり、室内干しに使ったりできるというわけ。家事スペースとしてだけでなく、美容家電を並べたりしても良さそうです。
浴室はガラスの開口ドアを使って抜け感を出し、洗面器や椅子はマグネット式で「浮かせる収納」にすることで床が広く感じます。天井にはフラットなラインLED照明。明るく広い空間を演出します。
働き方の変化やライフスタイルの変化に合わせて上質な住空間を実現するには、よく使う空間を整えること。キッチンやバス周辺は、毎日の生活に欠かせない大切な場所です。
今回紹介したプランのように、コンパクトで動線をよく考えたキッチンなら、調理・片付け・配膳がスムーズに行え、家族との時間がより充実したものになりそうですよね。リビングとの一体感も高まり、料理を楽しみながら、家族の様子も見渡せる開放的な空間づくりは魅力です。
浴室は、照明などを上手に生かしてくつろげそうな空間になっていました。洗面スペースを広げて洗濯に関する家事動線を短くすると、ちりつも効果(塵も積もれば山となる)で家事の時短にもつながりそうです。
限られた広さでも、動線とレイアウトを工夫すれば上質な住空間は実現可能です。住宅メーカーの新しい提案をSNSやWebサイトでチェックするだけでも、自分の理想とするライフスタイルを想像するきっかけになりますよ。