3月25日、一流シェフとAIの対決が幕を開ける。森永乳業は3月18日、「クラフト バジルフレッシュモッツァレラ」を使ったレシピ対決を発表。Bistro Qの山下 九シェフと茨城大学 鈴木智也教授による調印式を行った。AIは果たして一流のシェフに勝てるのか?
一流シェフとAIがバジルフレッシュモッツァレラのアレンジに挑戦
ふんわりとしたミルク味ともちもちの食感で、そのまま食べても美味しく、アレンジするとさらに美味しさが際立つ、森永乳業の主力商品「クラフト フレッシュモッツァレラ」。そのなかでも、2023年9月に発売された「クラフト バジルフレッシュモッツァレラ」は、バジルの爽やかな風味がプラスされたことでフレッシュな食材との相性が良い人気商品だ。
この「クラフト バジルフレッシュモッツァレラ」を使ったこれまでにないアレンジの開発に向け、森永乳業は「一流シェフ VS AI」のレシピ対決を3月25日に開催する。対決の模様はYouTubeにてライブ配信され、後日アーカイブ動画として公開予定。
人類側を代表するのは、赤坂「BistroQ」の山下九さん。「モン・フィナージュ」など数店舗で修業を積んだ後、銀座、西麻布の「a hill」で鉄板焼きフレンチという新たなスタイルで一世を風靡。現在は“赤坂の魔術師”として不動の人気を誇る一流シェフだ。
対するAI (人工知能)側を率いるのは、茨城大学大学院 理工学研究科 機械システム工学領域の教授、鈴木智也さん。複雑データサイエンス研究室において“実務データ×機械学習×人工知能”というコンセプトのもとビジネス支援技術を開発する、データサイエンスの専門家と言える。
森永乳業 営業本部 マーケティング統括部 チーズ事業マーケティング部長の佐藤裕之氏は、「バジルの発売による新規需要開拓に加え、今後のブランド戦略といたしまして、そのまま食べる直食と、伸長するアレンジレシピの両軸でお客様への新たな体験価値と市場拡大を図ってまいりたいと考えております。この戦略に則り、これまでにない組み合わせやアレンジレシピを開発すべく、今回、有名シェフvsAIによる料理対決を企画いたしました」と、経緯について述べる。
味が分からないAIはどんなレシピを作るのか?
注目の一流シェフ VS AI対決。ルールは大きく3点あり、「家庭でも手軽に作れるメニュー」「フレンチ、イタリアン、独創性の3品」「調理時間は1品10分以内」となる。審査員は、料理研究家の丹下恵子さん、森永乳業の担当者、一般の方代表の3名が行う。
調印式で宣誓書にサインした山下九さんと鈴木智也さんは、対決にかける意気込みを次のように話す。
「AIとの対決と最初聞いたときから面白いなと思っていて、でも『これは勝てるだろうな』と思って受けました(笑)。AIが料理作るわけじゃないから、どうやるんだろうなって楽しみにしています」(山下シェフ)
「なんとか頑張ってAIの素晴らしい能力を発揮して、できれば勝ちたいと思っております。私自身は料理のど素人なので、どれだけ一流シェフに対抗できるか、AIの可能性を追求していきたいと思っています。そういう限界が見えることもひとつの研究テーマですので」(鈴木教授)
山下さん自身も「いつかAIが料理のレシピを考える時代が来る」と思っていたという。だが、そのレシピをもとに実際に料理するのは人間。美味しい料理を作るにはAIだけでなく人の腕が必ず必要だと話す。
「そんなこと言っておきながら、まだどんな料理作るか考えてもいないので、来週までにおいしい料理が作れるように頑張ります。モッツァレラなのでやっぱり料理は素材重視でシンプルになるし、もしかしたらAIと同じようなレシピに近づいちゃうのかなとは思うのですが、AIでは考えないようなことをやってみようとは思ってます」(山下シェフ)
これに対し鈴木さんは「AIは味がわからないのが非常に難しいところ」と語る。機械ゆえに人間よりも高速に大量の情報を捌ける点を活かして、対決に臨むという。
複雑データサイエンス研究室がAIのベースとするのは「ChatGPT」だが、過去のやり取りが消えてしまう、人間がチェックしづらいという使いにくさもあるため、対決に会わせて専用のツールを開発したという。とはいえ、味という感覚は人間にしか分からないため、非現実的な回答も返ってくる。これを人間がサポートしながらレシピを作るそうだ。
「最近は人口減少によって労働力が減少してますから、AIによる自動化は絶対的に必要な技術であるわけです。(今回の対決は)それを具体的に企画立案するフェーズに入ってきたということかなと思っております」(鈴木教授)
人間しか分からない「おいしさ」をAIがデータから導き出すのか、それとも人間が培ってきた知見と技術が料理の本質を見いだすのか。3月25日の「一流シェフ VS AI」直接対決に注目したい。