『Octane』UK版スタッフによる愛車日記。1973年 ポルシェカレラRS 2.7の錆と戦い続けるデルウィン・マレットが、ようやくエンジンフードの作業に着手することにした。
【画像】ポルシェカレラRSの腐食の闘い、最後の砦はエンジンフード(写真5点)
終わりの見えないカレラRSのレストア。私は錆による侵略の最後の砦、「ダックテール」が装着されたエンジンフードの作業を進めることを決めていた。しかし、フレームの大掛かりな作業が進められている間は、エンジンフードはデヴォンにあるスティーブ・ケルティの「クラシック・ファブリケーションズ」の棚にひっそりと置かれていた。さて、ようやくエンジンフードに取り掛かる時が来た。
フードは主にグラスファイバー製だが、そうでない部分はスチールのフレームで支えている。フードを棚から下ろして仮合わせをすると、内側の後端が恐ろしい状態になっていることが明らかになった。幸いなことに、この部分はポルシェ911のよく腐食するポイントとして知られているため、代替品を容易に入手することができ、スティーブはすぐに溶接してくれた。
フードは新品同様となり、塗装のためにスプレーブースに入れられた。このカレラはもう数え切れないくらいコートが施されている。プロテクションコート、アンダーコート、ガイドコート、プライマーコート、ゲルコート、その他にもいくつかのコートがRSに施された。最終的なコーティングの前に、さらにもう1つ重要なコートがあった。
スティーブからから連絡があったのだが、その内容は次の作業である飛び石対策のコーティングの塗布については、オーナーに判断を委ねる必要があるとのことだった。これは正直そんなに難しい判断だとは思っていなかった。飛び石対策のボディーコーティングは目に見えるものではないから、多めに塗っておくに越したことはないと思っていたのだ。しかし、実際はそう簡単な話ではないことがわかった。カレラRSは、ボディのシーリング材の質感でさえも、オリジナリティを保っているかどうかの議論になってしまうような車だからだ。
私がまあ心配ないだろうというような油断した表情を浮かべると、スティーブは正直かなりのコストがかかると言ってきた。どうしよう。しかし、迷っていても埒が開かない。そこで私は愛車のクワトロ(アウディTT)にエンジンをかけ、スティーブが手掛けている他の73カレラの置いてあるダンケズウェルへと向かった。
そこに置かれた2台のうちの1台のオーナーは、工場出荷時の状態を追求するあまり、ところどころシーリング材の厚みが火山の溶岩流のようになっているそうだ。スティーブは、このようなシワを出すには、もう1台の車に塗ったかなり薄いシーリング材の2倍の量が必要で、コストも2倍かかると話した。一瞬、私はレーシングカー並みの軽量化を実現するために、シーリング材を塗らず、余計なことはしないでおこうかとも思ったが、最終的には 「セミ・ライトウェイト 」とでも呼ぶべき仕上げ、つまりシーリング材を塗るという選択肢を選んだ。
「シーリング材を塗る」ということは、パネルを分解し、またロティサリーに行ってシーリング材を吹き付け、白いペイントを塗るという工程を行うということだ。次回こそは、ボディはオリジナルのグランプリ・ホワイトで完全に仕上がり、エンジン類もようやく復活したとレポートできるようにしたいところである…
文:Delwyn Mallett