近年、首都圏を中心に、私立中学を受験させる家庭が増えています。「子どもの将来を考えて、中学から私立に通わせたい」と考える方も多いようですが、やはり気になるのは「学費の高さ」です。公立と私立では、中学3年間の学費はどのくらい違うのでしょうか。今回は、中学校でかかる学費とともに、国や自治体などで行っている子育て費用、学費のサポート制度もあわせてご紹介します。
■中学3年間の学費、公立と私立はいくら?
文部科学省の「令和3年度子供の学習費調査」によると、中学校に通う子ども1人当たりの学習費総額(学校教育費、学校給食費、学校外活動費)は、公立では年間53万8,799円、私立では年間143万6,353円です。これを1ヶ月当たりに換算すると、公立は月約4万5,000円、私立は月約12万円の学費がかかります。また、中学校生活3年間では、公立は161万6,397円、私立は430万9,059円となります。
では、学費の内訳はどうなっているのでしょうか。公立中学は、学習費総額53万8,799円のうち、学校教育費が13万2,349円、学校給食費が3万7,670円、習い事などの学校外活動費が36万8,780円かかっています。私立中学は、学習費総額143万6,353円のうち、学校教育費が106万1,350円、給食費が7,227円、学校外活動費が36万7,776円かかっています。
私立中学の学費はやはり高く、公立中学に比べると約2.7倍もかかります。さらに、私立中学や中高一貫校を受験する場合には、中学に入る前から受験対策のお金が必要です。一般的には、小学校4、5年生頃から塾に通い始め、受験対策としての費用はトータルで250〜400万円程度にもなると言われています。
特に、「中学から先はずっと私立」という場合、小学校中学年頃から大きな学費負担が続くことに。私立への進学を予定しているなら、これらの費用をどう捻出するのか、早めに考えておきたいですね。
■中学校でかかる費用をサポートする制度
中学校でかかる学費は、公立に通う場合でも月約4万5,000円と決して小さい金額ではありません。国や自治体では、そうした学費負担を減らすさまざまな支援制度が用意されています。ここでは、その一部をご紹介しましょう。
<児童手当>
児童手当は、中学校卒業までの児童を養育する人に支給される手当で、支給額は以下の通りです。
・3歳未満…月額1万5,000
・3歳以上小学校修了前…月額1万円(第3子以降は月額1万5,000円)
・中学生…月額1万円
児童手当を使わずに貯めると、総額では子ども1人当たり約200万円にもなります。子どもの学費や生活費に使うことももちろん可能ですが、大学進学を予定している場合は、大学進学費用として貯めておくといいでしょう。
<就学援助制度>
就学援助制度は、経済的理由によって就学困難と認められる学齢児童生徒の保護者に対し、授業料以外の教育費(学用品費、給食費、修学旅行費など)を援助する市区町村の制度です。対象となるのは、経済的に困窮しており、各自治体の定める認定基準に当てはまる家庭です。
自治体によって認定基準は異なりますので、自治体のホームページで調べる、もしくは、学校から配布される書類によく目を通して詳細を確認しましょう。
<給食無償化、学用品無償化>
東京都品川区では、令和5年4月から給食費の無償化を実施しています。また、新年度からは、区立小中学校と義務教育学校の児童・生徒が使う学用品を全額無償化することを発表しました。全国の自治体には他にも、このように給食費や学用品費を無償化しているところがあります。
また、東京都も、新年度から公立の小中学校の給食費を最大で半額補助する方針を決めています。
<私立中学校等の授業料助成>
私立中学校に通う生徒に対する助成制度もあります。たとえば、茨城県では「私立中学校等授業料軽減事業」を実施し、県内の私立小学校、中学校、中等教育学校前期課程に通い、所得基準を満たした児童生徒に対して授業料を補助しています。
また、愛知県では私学助成である「私学あいち」を設置しています。この中の「私立小中学校等授業料軽減補助金」は、入学後に家計が急変したなどの理由によって授業料の納付が困難となった児童生徒の保護者に対する制度で、1人当たり最大33万6,000円(年額)の授業料が補助されます。
東京都では、私立中学校等に在学する都内在住の生徒の保護者に対し、年額10万円(※)の授業料を助成する制度が設けられています。対象となるのは、区市町村民税課税標準額等が一定額以下(世帯年収目安約910万円未満)の家庭です。
(※)助成額は10万円の範囲内で保護者が負担した金額が上限
<受験生チャレンジ支援貸付事業>
「受験生チャレンジ支援貸付事業」とは、東京都内の中学3年生・高校3年生(またはこれに準じる人)で、学習塾や各種受験対策講座、通信講座等の受講料や、高校・大学等の受験料の捻出が困難な家庭に対し、必要な資金の貸付を無利子で行う制度です。
学習塾等受講料についての貸付限度額は20万円、受験料についての貸付限度額は、高校受験が2万7,400円、大学等受験が8万円です。
対象となるのは、一定所得以下の世帯で、対象の高校や大学等に入学した場合は、所定の手続きにより返済が免除されます。
<公営塾・貧困世帯向け無料塾>
「公営塾」は、自治体が運営する学習塾のことで、経済的な事情によって民間の学習塾に通えない子どもが無償または月額5,000円など破格の料金で通えるものです。全国の約1割に当たる自治体に設置されています。
たとえば、東京都足立区では、中学3年生に向けて「足立はばたき塾」を開催しています。対象者は、家庭の事情で塾などの学習機会が少ないけれど、成績上位で学習意欲も高く、難関高校等への進学を目指す生徒です。
また、沖縄県では、県内18市町村に無料塾を設置しています。対象者は、無料塾を設置している町村に住む就学援助受給世帯の小学1年生〜中学3年生です。
なお、貧困世帯向けの無料塾は、自治体のみならず民間の法人が開催している場合もあります。
■中学では小学校より学費負担が約1万5,000円も増える
公立の小学校に通う場合の学費は月約3万円ですが、公立中学になると月約4万5,000円に負担が増えます。最近では、物価高によって習い事の料金が上がるなど、学費の高騰を実感しているご家庭も多いでしょう。中学ではどのくらいの学費がかかるのか把握したうえで、使える支援制度があれば積極的に活用しましょう。