自分で仕事をするには、起業やフリーランス、個人事業主などさまざまな方法がありますが、これらの違いがよくわからない…という人は多いのではないでしょうか。そこで今回は、起業とフリーランスの違いや、起業する際の個人事業主と法人の違いについて解説します。「自分で事業を起こしてみたい」「フリーランスに興味がある」という方は、この記事を読み、起業やフリーランスの意味を理解しておきましょう。
■起業とは「自分で事業を起こすこと」
起業とは、自分で新しく事業を起こすことで、個人として事業を起こす「個人事業主」と、会社を設立する「法人」の2つのパターンに大別されます。ただし、一般的に起業というと、事業の立ち上げにともなって法人を設立することを指すケースが多いです。
<起業のメリット/デメリット>
・起業のメリット
起業のメリットとしては、まず、「努力ややり方次第で高い収入が得られる」という点が挙げられます。会社員でも良い成績をあげれば昇給や昇格、賞与の増額などによって収入は増えますが、それでもやはり限界はあるでしょう。一方、自分で事業を立ち上げれば、稼働時間や労働力に関係なく大きな利益や収入を得られる可能性があります。
また、起業すると「節税しやすい」というメリットもあります。特に、法人として起業すると、個人事業主よりも経費として計上できる項目が多くなりますし、所得が大きい場合、個人事業主の所得税より法人税の税率が小さくなり、節税に有利です。
さらに、「自分の好きなように仕事ができる」というメリットも大きいでしょう。自分で事業を起こせば、事業内容や経営方針だけでなく、働き方や労働時間なども自分で決められます。後ほど解説するフリーランスも自由度は高いですが、クライアントの要望に合わせる必要があるなど、起業に比べると制限はあるでしょう。
・起業のデメリット
起業のデメリットとしては、「事業に失敗した時のリスクが大きい」という点が挙げられます。新しく事業を立ち上げるには元手となる資本金が必要ですが、事業に失敗してしまえば、資本金を回収できなくなる、もしくは、マイナスが発生してしまう恐れがあります。そのため、このようなリスクも全て自分の責任として負わなければならないことをよく理解し、ビジネスを展開する必要があるでしょう。
また、起業すると大きな収入が得られる可能性がある一方、「安定収入が得にくい」という点はデメリットになります。それに、事業が軌道に乗るまでは利益が出ない、もしくは非常に少ないことも珍しくありません。そうした期間に備え、しばらく暮らしていける程度の貯金が必要でしょう。
ほかにも、起業は「事業を立ち上げる準備が大変」という側面もあります。事業計画作成のほか、資金調達もしなければなりませんし、会社を設立する場合は法人登記など煩雑な手続きも必要です。こうしたデメリットを抑えて起業するには、まずは個人事業主として小さく事業を始めることをおすすめします。
<起業に向いている人/向いていない人>
では、どのような人が起業に向くのでしょうか。まず何といっても、失敗しても粘り強く続けられる人でないと起業は難しいでしょう。事業を立ち上げれば、一度も壁にぶつからず全てがスムーズにいくことはほとんどあり得ません。特に、起業当初はさまざまな問題や障害が発生しますので、絶対に乗り越えてみせるという強い意志が必要です。
また、自分で実現してみたいサービスやビジョンがある人も起業に向いていると言えます。それだけでなく、世の中のニーズや市場の変化に敏感であることも求められるでしょう。
反対に、起業に向いていない人は、何か問題が起きた時、他人の責任にしてしまう人です。先ほどもあったように、起業は失敗するリスクも含めて、全て自分の責任のもと行わなければならず、その点を強く意識しておく必要があります。
また、起業自体が目的化してしまっている人も起業には向きません。ただし、「漠然と起業したい」というスタートでも、事業内容や資金計画をしっかりと練り上げれば、ビジネスを軌道に乗せられる可能性は高くなるでしょう。
<起業家の平均年収>
起業家になると、どのくらいの年収が得られるのかも気になるポイントです。日本政策金融公庫総合研究所の「2023年度起業と起業意識に関する調査」によると、起業家の月商は50万円未満の割合が最も多く、全体の67.9%になっています。また、月商50万~100万円未満は12.5%、100万~500万円未満は12.4%です。
月商50万円未満の起業家が7割近くと最も多いですが、月商50万円ということは、年商に換算すると600万円になります。さらに、月商や年商はあくまで売上高ですので、ここから経費を差し引くことを考えると、起業していても、特別収入が高い人ばかりではないという実態がうかがえます。
■フリーランスは「働き方」を表す言葉
起業が「自分で新しく事業を起こすこと」を指す言葉であるのに対し、フリーランスは「特定の会社や組織に属さず、個人で仕事を請け負う働き方」を指す言葉です。
また、フリーランスと似たものとして「個人事業主」がありますが、個人事業主は「税務上の区分」であり、税務署に開業届を提出し、個人で事業を営む人のことを指します。ですので、フリーランスの中には個人事業主もいれば、法人を設立し、経営者の立場になっている人もいるのです。
<フリーランスのメリット/デメリット>
・フリーランスのメリット
フリーランスの一番のメリットは、「実力次第で高い収入が得られる」という点でしょう。フリーランスはスキルや仕事量が収入に直結しやすいため、専門性や高いスキルがある、たくさん働けるという人は、高収入のチャンスがあります。
また、「得意分野や好きな仕事を選べる」のも魅力です。会社員の場合、自分が不得意とする業務が割り当てられる可能性がありますが、フリーランスなら自分の得意な分野や好きな仕事を選択できます。作業時間や作業場所もライフスタイルに合わせて調整できるなど、自由度の高い働き方ができる場合も多いです。
さらに、フリーランスは「複雑な手続きがない」という利点があります。個人事業主として始めるなら、開業届の提出だけで済みますし、フリーランスは業務委託で仕事を請け負うため、複雑な会計処理が発生しません。
・フリーランスのデメリット
一方、フリーランスのデメリットは、起業と同じく「収入が不安定」という点が挙げられます。フリーランスは仕事量と収入が直結するため、仕事の少ない月の収入は下がってしまいます。また、フリーランスになりたての時期は収入が少なく、貯金を切り崩す期間がしばらく続くかもしれません。
そして、フリーランスには「社会的信用度が低い」という側面もあります。会社という後ろ盾がない分、ローンやクレジットカードの審査では、会社員よりも厳しい目で判断される場合も多いです。
<フリーランスに向いている人/向いていない人>
フリーランスは、主に企業から仕事を請け負い、自分のスキルを提供して収入を得る働き方です。そのため、企業から需要のあるスキルを持ち合わせている人が向いていると言えます。
また、案件の獲得から納品までさまざまな業務が発生するため、スケジュール管理がきちんとできる人であることが求められます。
反対に、交渉ごとが苦手な人はフリーランスには向かないかもしれません。フリーランスとして活動するうえで、報酬や納期などの交渉は欠かせないからです。また、納期を守れないなど責任感のない人もフリーランスは難しいでしょう。
<フリーランスの平均年収>
フリーランス協会が発表している「フリーランス白書2023」によると、フリーランスの年収で最も多いのは「200〜400万円未満」で27.9%でした。
また、「400〜600万円未満」が20.9%、「200万円未満」が19.5%と続いています。なお、「1,000万円以上」という人は全体の10.0%でした。フリーランスは人づてに仕事を得る機会も多いため、人脈作りも大切な仕事の一つかもしれません。
■起業する時の個人事業主と法人の違い
起業すると決めた時は、「個人事業主と法人、どちらで開業すればいいのだろう」と悩むかもしれません。個人事業主と法人では、事業を始める時に提出する書類や手続きが異なりますが、その他にはどのような違いがあるのでしょうか。
・税金の違い
主なものとして、まず、「課税される税金の違い」が挙げられます。個人事業主には所得税や住民税、個人事業税などが課税されますが、法人には法人税や法人住民税、法人事業税などが課税されます。
それぞれ税金の仕組みや税率は異なりますが、一定の所得を超えると、個人事業主よりも法人のほうが節税効果は高くなります。法人税は個人事業主が納める所得税よりも税率の上がり方がゆるやかで、一番高い税率でも23.4%だからです。たとえば、所得800万円の時の中小企業の法人税は15%なのに対し、個人事業主の所得税は23%と割高になってしまいます。
そのため、一般的には、年間所得が700万円を超えるあたりで法人化すると、税金の負担が抑えられるでしょう。ただし、個人事業主は赤字なら所得税や住民税はかかりませんが、法人の場合、赤字でも法人住民税の均等割を納付しなければなりません。
・経費になる範囲の違い
個人事業主も法人も、事業にかかった費用は基本的に全て経費として計上できます。ただし、個人事業主と法人では、経費として認められる範囲が異なります。
たとえば法人の場合、利益から控除する経費として、自身に支払った給与を計上することができますが、個人事業主ではそれができません。また、法人の場合は賞与や退職金も経費として計上できるため、大きな節約効果が得られます。
個人事業主と法人には、それぞれメリットもデメリットもありますが、リスクを抑えて起業するなら、まずは個人事業主として小規模に始めるのがいいでしょう。法人を設立するには、定款の作成や法人登記などさまざまな手続きが必要ですし、費用もかかるからです。
また、個人事業主として事業を始める場合も、あらかじめ法人化のタイミングを決めておくと、いざ法人成りする時にスムーズでしょう。
■起業 or フリーランス、自分らしく働けるスタイルを見つけよう
今回は、起業とフリーランスの違い、そして、起業における個人事業主と法人の違いについて解説しました。最近は働き方が多様化した分、どのように働くのがベストなのか迷ってしまうかもしれませんが、自分にとっての優先事項を見極め、自分らしく働けるスタイルを見つけてみましょう。