ZTEジャパンは3月14日、スマートフォンブランド「nubia」(ヌビア)を日本でも本格展開すると発表した。まずはSIMフリースマートフォン「nubia Flip 5G」「nubia Ivy」の2機種を3月下旬に発売する。
ZTEは複数のブランドでスマートフォンを製品展開しており、グローバルでのnubiaブランドはハイエンドブランドという位置付け。インカメラをディスプレイの裏側に埋め込んで使わない際は隠してしまうUDC(アンダーディスプレイカメラ)などの先進技術をいち早く実用化したことでも知られるブランドだ。
日本市場におけるZTEの沿革としては、2008年に日本法人であるZTEジャパンを設立し、主に大手キャリア向けの製品を納入してきた。通常のスマートフォンの採用実績もあるが、2018年にドコモから当時の市場環境を考慮した戦略的な低価格モデルとして発売された「MONO MO-01K」、auの子ども向け端末「mamorino4」「mamorino Watch」、ソフトバンクから発売された同じく子ども向け端末の「キッズフォン3」や位置情報デバイス「どこかなGPS2」などキャリアの要望に合わせた特殊なオーダーにも数多く対応してきており、どちらかといえば縁の下の力持ち的なポジションを獲得している。
一方でSIMフリー市場(オープンマーケット)へのアプローチも行ってこなかったわけではない。むしろ参入は早く、2014年頃から「ZTE Blade Vec 4G」やNTTレゾナント(当時)の「gooのスマホ」シリーズなどを売り出し、2016年にはハイエンドモデルの「AXON 7」まで日本のSIMフリー市場に持ち込んだ。しかし2017年を最後に、ゲーマーをターゲットとした特殊なブランドであるREDMAGICシリーズを除けば動きを止めており、今回数年ぶりに一般向けのSIMフリースマートフォンに再参入した形となる。
なお、かつて投入していたZTEブランドのBlade/AXONシリーズではなく新たにnubiaブランドが日本向けに選ばれた理由は、グローバルでの製品展開として今後はZTEブランドからnubiaブランドに主軸を移していく方針を反映したものとのこと。
nubiaブランドの日本展開にあたって、まず発売されるのは「nubia Flip 5G」「nubia Ivy」の2機種。いずれも先行してワイモバイル向けに納入された機種がベースとなっており、メモリ容量や対応バンドなどの違いはあるが、基本的にnubia Flip 5Gは「Libero Flip」、nubia Ivyは「Libero 5G IV」と同等となる。
両機種の特徴を簡単に紹介しておくと、nubia Flip 5Gはまだ高価なイメージの強い折りたたみスマートフォンでありながら、8万円以下でSnapdragon 7 Gen 1を搭載しミドルハイ相当の性能も持ち合わせたコストパフォーマンスの高い製品だ。nubia Ivyはエントリークラスの5Gスマートフォンだが、日本市場特有のニーズであるおサイフケータイや防水にも対応しつつ3万円ほどでバランス良くまとめられた製品である。
言い換えれば、ハイエンドブランドのnubiaが日本に上陸したと謳う一方で、先進技術やカメラ性能などnubiaらしさの詰まった上位製品は国内未導入という状況になる。
このようなラインナップとなった理由は、まずキャリア向けに開発済のモデルをベースとすることでコストを抑えつつスモールスタートでの参入としたことが挙げられる。加えて、現在の市場環境を踏まえて日本のスマートフォン市場、特にオープンマーケットでの売れ筋となる価格帯への製品投入を優先したとも言う。
ミドルレンジ~ミドルハイの価格帯でコストパフォーマンスに優れた内容の製品が歓迎される傾向にあることは確かで、先に発売されたワイモバイル向けのLibero Flipなどは「手の届く折りたたみスマートフォン」として注目されている。
短期的な販売戦略としてはこのクラスから着手するのは正解だと感じる一方で、一般的にひとたび安物のイメージが定着してしまえばそこからブランドの価値を高めていくのは容易ではない。本来はハイエンドが本丸であるnubiaブランドをハイエンド不在のまま始動してしまったのは少々心配なところだ。
次の一手としてフラッグシップモデルの「nubia Z60 Ultra」、あるいはそこまでは行かなくともカメラ特化の「nubia Focus Pro」や音楽特化の「nubia Music」のような個性的な端末も日本に持ち込むなど、イメージリーダーとなり得る製品の投入に期待したい。