香港Minisforumが今年1月に発表した、小型ゲーミングデスクトップPC「Minisforum HX100G」。同社が展開する小型PCシリーズの中では若干大型ですが、ディスクリートグラフィックスを統合して圧倒的なゲーミング性能を備えているラインナップです。今までにHX90G、HX99G、HX77Gと展開されてきており、今回型番はHX100Gの大台へと突入しました。

今回Minisforumからサンプル機の提供を受けたので、この記事ではレビューをお届けします。忙しい方向けにまとめておくと、HX100GはCPUがついにZen 4世代へと刷新された“本物の後継機”。一方グラフィックスはRDNA 3世代への更新叶わず、ゲーミング性能の進歩はやや小幅でした。

  • 「Minisforum HX100G」レビュー! 待望のZen 4搭載、ついにCPU性能向上の最新モデル

外観・インタフェースは従来モデルを継承

さっそく外観から……といつものようにレビューへ突入したいところですが、はじめに言っておくと過去に紹介したHX90G / HX77Gとほとんど何も変わっていません。外装の仕様から内部へのアクセスまで特に変化がないので、写真でざっくり見ていきましょう。詳細に知りたい場合は、初出時に紹介した『「Minisforum HX90G」をレビュー! 最新Ryzen・Radeon搭載で圧倒的な超コスパ』をご確認いただくのがオススメです。

  • パッケージの内箱。箱ごとビニールでシュリンクしてあるので付属品含めて気密性が保たれています

  • やってきた構成。SSDが1TBで大容量です

  • ぱかりと開封。高密度スポンジでの固定等は従来通り

  • フロント側端子の様子。USB Type-AとType-Cを揃え、ヘッドホン出力はマイクと分離していて便利です

  • リア側端子の様子。USB Type-A×3、USB Type-C×2と豪華で、USB Type-C端子はDisplayPort出力にも対応します

  • 付属するスタンド。取り付けることで縦置きも可能です

  • 最大約260W出力に対応するちょっと大型のACアダプタ。HDMIケーブルも同梱

  • 底面。ゴム脚をはがすと分解に必要なネジが露出します

SSDとメモリへの簡単なアクセスが行える点もいつも通り。SSD用のM.2スロットは合計2つ装備してあり、増設したい場合は空いているもう片方に適当なSSDを差し込めばOK。MediaTek製のWi-Fi / Bluetooth用のコントローラーが向かい合うように配置されていました。

  • メモリを外してみたところ

メモリはDDR5世代になってからヒートシンクが標準で装着されています。前モデルの時はよく見ていませんでしたが、取り外してみると反対側にもサーマルパッドが貼り付けられていました。マザーボードに接触して排熱を促しているようですが、油分が基板に染みている様子がわかります。

“AMD Ryzen 7 7840HS”搭載。Zen 4で最大54W動作、Ryzen AIも内蔵

外観も見たところで性能評価に……移る前に、HX100Gが搭載するプロセッサ「AMD Ryzen 7 7840HS」についてチェックしていきましょう。AMD Ryzen 7000シリーズのCPUはZen 2からZen 4まで、iGPUにはVegaからRDNA 3まで複雑な組み合わせが存在しており、「Ryzen 7000シリーズなら最新じゃん」とはいかない不親切なナンバリングスキームが採用されているためです。

  • とても難しい現行Ryzen型番の読み取り方を復習

  • CPU・GPUの組み合わせ。実際にはPCメーカーのほうがある程度最適な構成を選んでくれていますが、極端に安いモデルではRyzen 7020シリーズを引く懸念もあります

これらの整理を踏まえてHX100Gが搭載するAMD Ryzen 7840HSについて見てみると、まず製造にはかなり先進的な4nmプロセスが採用されている点がポイント。CPUは最新世代のZen 4アーキテクチャで、GPUも最新のRDNA 3アーキテクチャ。しかもiGPUは12コアの強力モデルです。昨今各社が覇を競うAI機能も「Ryzen AI」として統合されており、AMD Ryzen 7840HSはプレミアムノートPCにも採用されているハイエンドプロセッサであることがわかります。

ちなみに、HX100GはグラフィックスがRadeon RX 6600MからRadeon RX 6650Mへと更新されています。製造プロセスからストリーミングプロセッサ数、動作周波数までほぼ共通ですが、Radeon RX 6650Mでは最大消費電力が120Wまで許容されています。超高負荷時の挙動によっては若干上振れするかもしれませんが、ほとんど据え置きだと考えてよいでしょう。

  • Ryzen 7 7840HSはパッケージによってメモリの対応規格が異なりますが、情報を取得できていません。DDR5メモリ仕様なので、たぶんFP7r2だと思います

  • ほとんどRadeon RX 6600Mと変わらない仕様。よく見るとバスインタフェースも違うんでしょうか

  • デバイスマネージャに見える「AMD IPU Device」がRyzen AIらしいです。ドライバが配布されていないので、Windowsをクリーンインストールすると消えるといううわさが

HX77Gと性能を比べてみた。CPUはさすがに速い

HX100Gの仕様について把握できたところで、いくつかベンチマークテストを活用して性能をチェックしていきましょう。Ryzen 7 7735HSとRadeon RX 6600Mを搭載するHX77Gを比較対象に用意しています。

  • PCMark

  • 3DMark

  • FF14(HX77G)

  • FF14(HX100G)

  • BLUE PROTOCOL(HX77G)

  • BLUE PROTOCOL(HX100G)

CPUアーキテクチャ刷新の威力はちゃんと表れており、あらゆるテストでHX77Gを上回りました。細々したテストの結果もですが、個人的にはブラウザで体感しやすい性能指標を測定できるSpeedometer 2.1が印象的。旧モデルの363というスコアから459へとジャンプアップし、現行最新プロセッサの強力さが体感速度となって表れていることがわかります。

  • HX77G

  • HX100G

なお、Radeon RX 6600M→Radeon RX 6650Mの性能向上はあるのかどうか微妙。そこまで大規模な負荷がかかるわけでもないので、ゲーミング用途においてはあくまでCPU性能の向上に伴うものにとどまるという印象でした。

また、冷却機構には例によって液体金属が採用されておりすぐれた低音動作を実現しています。ゲーム以外の用途ではほぼ動作音は聞こえず、高負荷なゲームを遊んでも安定した動作を実現しています。

RDNA 3搭載、ゲーミング性能大幅強化の夢はいつか叶うのか

Ryzen 9 5900HX・Radeon RX 6600M搭載を圧倒的な安価で実現し、グラフィックス性能が物足りないといわれてきた小型PC市場に風穴を開けた初代機「HX90G」。しかし後継モデル「HX99G」はRyzen 9 6900HXを搭載するもZen 3+止まり、「HX77G」はRyzen 7 7735HSを搭載するもZen 4アーキテクチャ採用とはいきませんでした。

今回紹介した「HX100G」では型番を3桁へと拡張し、ついにZen 4ベースのRyzen 7 7840HSを搭載して初代機以来のCPU性能向上を達成した点が大きなポイント。しかしグラフィックス面ではRadeon RX 6650M採用にとどまり、依然RDNA 2ベースのままです。Radeon RX 7600Sは一部メーカーのゲーミングノートPCにしか採用例が見られず、価格面での折り合いがつかなかったのかも。とはいえAMDは昨今、RDNA 3でしか使えない最新機能をドライバに盛り込んでくることがあるので、ぜひいつかRDNA 3搭載モデルが展開されるといいなと思います。

  • Ryzen 9 7945HX・Radeon RX 7600M XT搭載で超巨大な「X200G」もCES 2024でお披露目されています