鎌倉新書は3月12日、「第3回 改葬・墓じまいに関する実態調査(2024年)」の調査結果を発表した。調査は2024年1月12日~1月19日、同社運営の「いいお墓」を経由して2022年10月~2023年9月に資料請求ならびに霊園見学をしたユーザーのうち、改葬・墓じまいを「検討したことがある(している)」または「実施したことがある(している)」と回答したユーザー533人を対象にインターネットで行われた。
墓じまいの検討理由「お墓が遠方にあること」が最多
墓じまいの検討経験または実施経験があるユーザーに、「なぜ墓じまいを検討したか」という質問したところ、最も多かった理由は「お墓が遠方にある」で、次いで「お墓の継承者がいない」という理由だった。特に「お墓が遠方にある」と答えたユーザーは54.2%と過半数を超える結果に。一方、「継承したくない」と回答したユーザーは全体の10%未満と少ない人数であり、心情的なネックというより「遠距離」及び「継承者不在」といった物理的なネックが検討の起因となっていることがわかった。また、これらの検討理由からは、都市化や少子化、核家族化などの社会背景も読み取ることができる。こういった社会構造は一朝一夕に変わるものではなく、したがって、今後も改葬・墓じまいは増加するのではないかと予測される。
実施費用は「31万円~70万円」が最多
実際に改葬・墓じまいをした(している)ユーザーに実施費用について質問したところ「31万円~70万円」と回答したユーザーが24.2%で最多となった。しかし、その他の費用帯を回答したユーザーもそれぞれ15%以上おり、実際はかなり幅広い費用帯であることがわかる。墓石を撤去する費用は、1平米あたり10万円~15万円程度かかるといわれているため、一般的には墓地の広さに比例して費用がかかる。また、墓じまいをした後の遺骨の引越し(改葬)先については後述のとおり、散骨や手元供養、合葬墓や樹木葬、納骨堂など様々な選択肢があり、こちらもそれぞれ費用が異なる。今回の質問に関しては、実施費用の総額をユーザーに質問している。墓じまいを検討する際には墓石の撤去費用と遺骨の納骨費用(散骨や手元供養も含め)の合計費用を考慮した検討が必要となる。
遺骨の改葬先は「継承者不要」が人気
実際に墓じまい後の遺骨の引っ越し(改葬)先を尋ねたところ、最も多く回答されたのは「合祀墓・合葬墓」で30.9%だった。しかし、「樹木葬」23.4%、「一般墓」22.3%とその他の選択肢にも一定数の回答者がおり、全体としては回答が割れる結果に。ただ一方で「継承者の要不要」という視点でこの回答を見てみると、一般的に継承者がいらないことが多い「合祀墓・合葬墓」「樹木葬」「納骨堂」の合計が71.5%となることから、改めて「継承者不要」のお墓が多くの方に選ばれる結果となった。
改葬・墓じまいをする中で大変だったことは?
実際に「改葬・墓じまいをする中で大変だったこと」を尋ねたところ、43.4%の人が「遺骨の引っ越し(改葬)先選び」と回答している。そもそも、お墓探しの一般的な流れでは、資料請求などの情報収集、現地見学、最終確認と契約、引き渡しなどがあるが、場合によっては墓石のデザインの打ち合わせなどもあり、墓じまいの手続きや実施も加えると、かなり多くのプロセスが発生するため、負担感が強く感じられたのではないかと思われる。
また、次点で31.6%の人が大変だったと回答した「役所手続き」では、「改葬元の墓地がある市区町村の役所」と「改葬元の墓地」、「改葬先の墓地がある区町村の役所」と「改葬先の墓地」の4箇所それぞれで、手続きが発生するため、より大変に感じられたのではないかと考えられる。特に「改葬元がある市区町村」の役所で提出する「改葬許可申請書」は、一般的には埋葬されている方1人につき1枚取得し記入する必要がある。(複数の方を同時に申請できる場合もある) 先祖代々の方が眠るお墓だと、氏名・本籍・住所・性別・死亡年月日などの必要項目がわからないことや、何人が埋葬されているかわからないことなどもあり、そういった場合にはより負担が大きくなることが予想される。
改葬・墓じまいをやめた人に聞いた「墓じまいをやめた理由」
「過去に改葬・墓じまいを検討した」という人に「改葬・墓じまいをやめた理由」を尋ねたところ、第1位は「解体費用が高すぎた」が26.3%、2位は「親戚から理解を得られなかった」「手続きがめんどうだった」が同率で21.1%という回答に。
一般的に墓石の撤去費用の相場は、1平米あたり10万円~15万円程度と言われているが、地域や施工方法によっても費用は変動する。そのため、費用相場よりも高額な解体撤去費用を請求されることも。実際、同社のユーザーからも「一度、石材店に声をかけてしまったので、断りづらくなり高額な撤去費用を支払ってしまった」という相談があったという。