子どもが生まれてから大学を卒業するまでには、たくさんのお金がかかります。中でも、6年間と長く通う小学校では、どのくらいの費用が発生するのでしょうか。今回は、文部科学省のデータから、小学校生活でかかる学費について分析してみました。また、教育に必要な費用をサポートする支援制度もあわせてご紹介します。

  • 小学校6年間でかかるお金はいくらになる?

■小学校6年間でかかる学費の総額は

文部科学省の「令和3年度子供の学習費調査」によると、小学校に通う子ども1人当たりの学習費総額(学校教育費、学校給食費、学校外活動費)は、公立では年間35万2,566円、私立では年間166万6,949円です。これを1カ月当たりに換算すると、公立は月約3万円、私立は月約14万円となります。また6年間では、公立は211万5,396円、私立は1,000万1,694円の学費がかかります。

では、具体的には、どのような費用がどのくらいかかっているのでしょうか。

公立小学校の学習費総額35万2,566円のうち、学校教育費は6万5,974円、学校給食費は3万9,010円、学校外活動費は24万7,582円です。一方、私立小学校の学習費総額166万6,949円のうち、学校教育費は96万1,013円、学校給食費は4万5,139円、学校外活動費は66万797円となっています。

なお、学校教育費とは、授業料、修学旅行・遠足・見学費、学用品費、制服、通学用品費など、学校外活動費とは、家庭内学習費、物品費、図書費、家庭教師・学習塾費、芸術文化活動やスポーツ・レクリエーション活動の月謝などを指します。

公立小学校の学校教育費は、年間6万5,974円ですので、1カ月では約5,500円とさほど多くはありません。それに対し、学校外活動費は年間24万7,582円と、1カ月で約2万円もかかっています。

私立小学校では、公立小学校と比べて学校教育費の高さが目立ちますが、学校外活動費も年間66万797円、月約5万5,000円と高額です。私立小学校に通う家庭では、習い事など学校以外の学習費にもお金をかけている実態がよくわかります。

■小学校は1年生と5、6年生の学費が高い

小学校は6年間と、幼稚園や保育園、中学・高校・大学と比べて長く通いますが、6年間を通じて学費に差はあるのでしょうか。同調査から、公立小学校の1年生~6年生の学習費を抜き出してみました。

<公立小学校でかかる年間の費用>

※カッコ内は学校教育費、学校給食費、学校外活動費の順

第1学年…37万9,539円(12万7,375円、3万9,478円、21万2,686円)
第2学年…28万3,211円(4万2,235円、3万8,689円、20万2,287円)
第3学年…31万5,794円(4万7,354円、3万8,202円、23万238円)
第4学年…32万9,198円(4万5,182円、3万8,967円、24万5,049円)
第5学年…38万774円(5万5,170円、3万8,953円、28万6,651円)
第6学年…42万3,506円(7万9,737円、3万9,751円、30万4,018円)

学年別に見てみると、学校教育費は1年生が最も高くなっています。これは、入学時には体操服や鍵盤ハーモニカ、絵の具セットなど学校用品の購入費用がかかるためです。次に多いのは卒業を控えた6年生で、修学旅行や卒業アルバムなどの費用がかかります。

給食費はどの学年もほぼ同額ですが、学校外活動費は学年が進むにつれて高くなっているのがわかります。高学年になると、中学受験を見据えて学習塾に通い始める子が多くなることも関係しているのでしょう。同じ小学生でも、「低学年と中学年、高学年ではお金のかかり方が違う」という点を押さえておきたいですね。

■小学校の学費を支援する制度もある

小学校は義務教育ですので、公立小学校に通うのであれば、授業料を支払う必要はありません。ただし、学校生活には給食や学用品の費用などもかかりますし、学習塾に通いたい子どももいるでしょう。また、経済状況によっては、学費を支払うのが難しいご家庭もあるかもしれません。そこで最近では、子育て費用や学費などを自治体で支援する制度が広がっています。

<児童手当>

児童手当は、中学校卒業までの児童を養育する人に支給される手当です。支給額は、3歳未満が月額1万5,000円、3歳以上小学校修了前が月額1万円(第3子以降は月額1万5,000円)、中学生が月額1万円で、総額では子ども1人あたり約200万円が受け取れます。

<就学援助制度>

就学援助制度は、経済的理由によって就学困難と認められる学齢児童生徒の保護者が受けられる援助です。対象者は、経済的に困っており、各自治体の定める認定基準範囲内の人です。

自治体によって認定基準は異なりますので、自治体のホームページで調べるか、学校から配布される書類によく目を通して確認しましょう。

<給食・学用品無償化、ランドセル無償配布>

自治体によっては、給食や学用品を無償化しているところもあります。たとえば、東京都品川区では、令和6年度から、区立小中学校と義務教育学校の児童・生徒が使う学用品を全額無償化する取り組みが始まります。無償化の学用品は、絵の具や習字セット、彫刻刀、学習ドリルなどを想定しており、所得制限はありません。さらに、品川区は給食の無償化も行っています。

岡山県備前市でも同様に、学用品と給食の無償化を実施しています。

茨城県では、全44市町村のうち、約3分の1に当たる15の自治体でランドセルの無償配布を行っています。近年では、自治体独自の通学用カバンや通学用リュックサックを配布する自治体も増えているようです。

<私立小中学校等授業料軽減補助金>

私立学校に通う児童や生徒の授業料を軽減する制度もあります。「私立小中学校等授業料軽減補助金」は、入学後に家計が急変したなどの理由で、授業料の納付が困難となった児童生徒の保護者に対し、1人当たり最大33万6,000円(年額)の授業料が補助される制度です。

たとえば、愛知県では「私学あいち」として、こうした私学への助成を行っています。

<公営塾・無料塾>

公営塾とは、自治体が運営する学習塾です。民間の学習塾がない過疎地域や経済的事情を抱える家庭の子どものための塾で、全国の自治体の約1割に設置されています。公営塾は営利を目的とせず、授業料は無償~月額5,000円程度です。地域の子どもたちの学習を支えるため、無料で通える「無料塾」を設置しているところもあります。

■小学校でかかる学費をあらかじめ知っておこう

小学生の学費は、あらかじめ準備しておくのが望ましい大学進学費用とは異なり、毎月の家計から捻出するのが基本です。公立と私立、どちらの小学校に通うとしても、どのくらいの費用がかかるのか事前に把握しておくと安心でしょう。また、住んでいる自治体では、子育てについてどのようなサポートが受けられるのかも知っておきたいですね。