マイナビは2月22日、「採用広報解禁直前!2025年卒新卒採用・就職活動の展望」と題した分析レポートを発表した。

第一部では、マイナビ キャリアリサーチラボ 主任研究員の東郷こずえ氏が「2025年卒新卒採用・就職活動の展望」と題して講演。25年卒新卒採用の大きなトピックスとしては、「インターンシップの定義改正」が挙げられる。

  • 2025年卒の就職活動の展望は?

マイナビが2024年2月実施した「2025年卒大学生広報活動開始前の活動調査」によると、学生のインターンシップ・仕事体験の参加率は85.7%を記録し、調査開始以来最高値となった。

また、25年卒の学生側の特徴で目を引いたのは、6月からインターンシップ・仕事体験の参加率が高かった点だ。

その割合は39.8%にのぼり、前年比10.9ポイント増だった。

その理由として、「さまざまあると思うが、インターンシップの定義改正により、細かい条件はともかくとしてインターンシップに参加した情報が採用・選考に使われるという情報の認知度が高かったことで、関心がより高まったのではないか」と分析。

  • 企業、学生のインターンシップ等の活動

「定義改正によって、インターンシップという呼称を用いるためには、実際の職場での実務体験を一定の日数以上しなければならなくなった。その影響もあってか、実際の職場で何らかの経験をする割合というのが増加している傾向が見られたのは、インターンシップの定義改正のポジティブな影響の1つ」と補足した。

インターンシップの選考が厳しくなる

一方で、課題として「インターンシップ選考の通過が厳しくなった可能性がある」と指摘。

学生に実際の職場に入ってもらうとなると定員が限られてしまう。25年卒学生のインターンシップ参加率は非常に高い水準にあるものの、参加しなかった学生も一定数存在しており、その理由として「参加したかったが選考で落ちた」という項目が前年から15.7ポイント増加している。

「インターンシップ参加時の情報を採用選考に使ってよいと定義されたことで、採用選考とのつながりが高まったと言えるが、25年卒就活生については正しくルールが認識されないまま就活シーズンが始まってしまったというのが実態。今後に向けての課題としては、ルールを正確に理解していたずらに採用活動を早めないこと」と指摘する。

  • インターンシップの定義改正の影響

25年卒の新卒採用活動には、依然として新卒に限らず人材採用ニーズが高まるなかで、企業側の採用環境は厳しくなるという回答が8割近くを占めている。

「新卒の学生全体の数が減少している。それにもかかわらず新卒採用する企業が増えていること」などが理由だ。こうした採用状況の中、「学生の内々定獲得は昨年以上に前倒しで進捗する可能性がある」と予測する。

マイナビが行った調査で、2月時点の状況として、学生の側で最も多かった回答が「エントリーする企業を検討している」で58.9%。前年に引き続き最多を占めたものの、その割合は過去3年連続で減少している。

反対に、増加している項目は「インターンシップに参加した企業へのエントリーシート提出や面接を受けた」だった。

東郷氏はこのような状況について、「従来の採用スケジュールに則れば、3月1日から就活はスタートするので2月というのはエントリーする企業を探しているというのが一般的な動き。インターンシップ・仕事体験の参加率が上昇し、就活までの期間に多くの企業と出会い、ある程度応募先を絞り込むような動きが主流になっていると言える。このこと自体は採用スケジュールのルールに反するというような状況ではあるが、実態として既に採用・選考に関わるアクションを起こしている学生が増えていることが見て取れる。内内定率についてもおそらく前年を上回って進捗するだろうと考えている」と見通しを語った。

  • 内々定の獲得状況はどうなるか

ただし、「学生自身は6月頃まで就職活動をする予定にしているため、注意が必要である」と東郷氏。

「3月より前に採用選考をしている企業も一部あるが、全体的にはまだまだ3月からスタートするという企業が主流。そのため、学生自身は志望する企業すべての採用選考を受けるまで就職活動を続けていく。つまり複数の内内定を保有しながら活動を継続するということ。ここ数年、複数の内内定を持つ学生の割合は増加し続けている状況。その傾向はおそらく今年も続くと考えられる。そこで企業側は内内定の後もさらに関係強化に向けて活動する必要性がある」と助言した。

定年まで働くことが「リアルでない」就活生たち

次に、25年卒新卒採用の展望として、「企業選びにおける就活生の価値観」を解説。ポイントは「定年まで働くことがリアルではない」という感覚だ。

マイナビが2023年11月実施した「2025年卒大学生インターンシップ・就職活動準備実態調査」では、「新卒で入社する会社で何年くらい働きたいか」という問いに対して、「特に決めていない・わからない」がおよそ3割で最も多く、次いで「定年まで」が2割程度を占めている。

  • 就活生が企業を選ぶ価値観

この結果について、「大卒の場合、3年で3割辞めるとよく言われるが、実は1年から3年くらいという回答はもともと少ない割合。つまり最初からすぐに辞めようと考えているわけではなく、どちらかというと定年まで働くことが一般的だと思える状況ではないと考えるほうがしっくりくる」と説明。

さらに、「定年まで働くことがリアルではない」という感覚を持った上で生まれてくる方針を『少しでも長く1社で働き続けたい』と『転職することも前提に準備しておきたい』の大きく2つに分け、『少しでも長く1社で働き続けていきたい』という学生もいる一方で、どうせ転職することになるのだから、その前提で準備しておきたいというふうに考える学生もいる。もちろんきれいに2つに分かれるわけではないが、いろいろな調査結果を見ていると、どちらか一択というよりもこの2つの方向性の中で方針がばらついているというふうに感じることが多い」と評した。

  • 「キャリアの作り方」の考え

その上で共通して見られる方針は「性別を問わず、ライフキャリアの変化に応じて柔軟に働き続けることを前提にしていること」を挙げる。就活生の企業選びのもとになる価値観は、非常に多様化しており、「新卒で入社した会社で勤め上げて出世を目指すというようなキャリアが描きづらくなっていることもあり、キャリアの方針も多様化している。それに伴い、自分の思い描く人生を歩める職場かを見極めたいと考えている」と語る。

採用する企業の側に求められるのは「仕事も生活もどちらも大切であるという価値観を理解し、その価値観とのすり合わせを行う必要がある」と助言。

新卒採用では、企業と学生のマッチングを示す際に社風と人柄のマッチングという言葉が用いられることが多いが、「それ以外のさまざまな軸でマッチングを図る必要がある。そのためにより丁寧で個別にコミュニケーションを取りながら関係性を強化する必要がある」とまとめた。

定義改正によりインターンシップに注目が集まったことで、2025年卒の就活が早期化しているという指摘もある。

これに対し、「今後の職業人生を形成する上で土台となるキャリア教育や職業観関与目的としたキャリア形成支援活動は重要」と評価しながらも、「今後、以前に比べて日本企業でも新卒であっても『ジョブ型雇用』の考え方を導入していく流れがある。企業側が望む人材の質を考えても、学生がしっかりと学業やキャリア形成支援活動に取り組んで能力やスキルを向上させることが必要。採用選考活動が早期化することにより、こうした土台作りの機会を学生から奪うことになるのは望ましくない」と懸念も示した。