伊藤園お~いお茶杯第65期王位戦(主催:新聞三社連合、日本将棋連盟)は挑戦者決定リーグが進行中。3月8日(金)には紅組の佐々木大地七段―藤本渚四段戦が東京・将棋会館で行われました。対局の結果、千日手指し直し局を143手で制した佐々木七段が開幕2連勝と前進しました。
相雁木からの千日手
5回戦で争われる本リーグ、ともに1勝0敗で迎えた本局は早くも山場です。藤本四段は年度勝率記録更新への期待も高まります。藤本四段の先手で始まった対局は相雁木の持久戦に進んだすえ千日手が成立。仕掛けを得られなかった藤本四段は早々の時間消費を悔やみます。
先後を入れ替え始まった指し直し局、後手となった藤本四段は再び雁木を採用。対する佐々木七段は矢倉の要領で急戦に備えます。角交換から動き出した盤上は手番を握る藤本四段の先攻で幕を開けますが、ここから先手・佐々木七段による秀逸な対応が光りました。
佐々木七段が貫録示す
後手の仕掛けに「同歩、同歩」と応じたのは言いなりのようでもこれは佐々木七段の読み筋。後手が馬を作って戦いが一段落した局面で藤本四段は「悪いと思っていた」と認めるよりありませんでした。持ち歩の数と金銀の働きの差が大きく、先手が盤上を制圧しています。
手番を得た佐々木七段は満を持して反撃に転じます。たたきの歩で呼び寄せた銀に桂で当たりをかけたのが好調の攻め。直後に飛車金両取りの角打ちが決まって優勢を確立しました。終局時刻は21時1分、最後は自玉の受けなしを認めた藤本四段が投了。
これでリーグ成績は佐々木七段2勝0敗、藤本四段1勝1敗に。感想戦では戦いが始まって以降は終始先手ペースの戦いだったとされました。なお敗れた藤本四段は中原誠十六世名人の持つ年度最高勝率(0.855)の記録更新の可能性がなくなっています。
水留啓(将棋情報局)