第82期順位戦(主催:朝日新聞社・毎日新聞社)B級1組は最終13回戦全6局の一斉対局が3月7日(木)に各地の対局場で行われました。このうち、東京・将棋会館で行われた屋敷伸之九段―増田康宏七段戦は120手で増田七段が勝利。9勝3敗の好成績でA級昇級を決めるとともに八段昇段を果たしました。

昇級・残留争いの大一番

12回戦終了時点で千田翔太八段の昇級が決定、同じく8勝で2位につける増田七段は勝てば自力でA級の座を手にします。一方の屋敷九段は残留に向けて勝利が必須。屋敷九段の先手で始まった本局は角換わりに進展、両者の息が合って相早繰り銀の急戦形に進みました。

先手は右辺に、後手は左辺に拠点を作り合って局面は一段落。第二次駒組みが続くなか増田七段が本格的な仕掛けに乗り出します。9筋の端攻めから手を作ったのは遊んでいる早繰り銀をさばく構想ですが、実戦はここから攻め合いに転じた屋敷九段がリードを奪うことに。

増田七段がA級昇級

攻防の自陣角を放っていた屋敷九段は歩の成り捨てで反撃開始。角道を通しつつ金を狙ったのは部分的に厳しい攻めですが、直後に落とし穴が待っていました。2筋への角成りで飛車先突破を目指した手に対して香の田楽刺しで大駒を攻めたのが増田七段の巧妙な受けです。

優位に立った増田七段の攻めは正確でした。終局時刻は22時55分、最後は形勢の開きを認めた屋敷九段が投了。増田七段は9勝3敗でA級昇級を飾りました。一方敗れて5勝7敗となった屋敷九段は横山泰明七段、木村一基九段とともにB級2組降級が決まっています。

水留啓(将棋情報局)

  • 増田七段は局後「粘り強く指せたのがよかった」と一局を総括

    増田七段は局後「粘り強く指せたのがよかった」と一局を総括