2022年リリースの「エジソン」がTikTokをきっかけに大ヒットした音楽ユニット・水曜日のカンパネラの2代目ボーカル・詩羽。ライブやSNSで「愛してるよ!」と愛を届けている彼女が、なぜ愛を大切にしているのか。そして、口元のピアス、刈り上げた髪型というトレードマークはどのようにして生まれたのか。これまで語ってこなかった過去について自身初の書籍『POEM(ポエム)』(3月15日発売/宝島社)で明かしている。子供時代のいじめや虐待など、壮絶な過去を告白しようと決めた思いとは。詩羽に話を聞いた。

  • 詩羽

    水曜日のカンパネラの詩羽 撮影:加藤千雅

「死んでやろうと思った」「誰も私を愛していない」。家庭や学校での耐えがたい日々について赤裸々につづっている自叙伝。このタイミングで告白しようと思った理由について、詩羽は3月16日の日本武道館公演がきっかけだと説明する。水曜日のカンパネラにとって、2021年9月に詩羽が加入してから初の武道館公演。詩羽は「武道館が一つの区切り」だと考えている。

「活動を始めて2年半になるタイミングなんですけど、武道館は改めて多くの方に知っていただく機会にもなると思っていて、自分がなぜ愛を大事にしているのかという説明があるかないかで、言葉の重みが変わってくるなと。ただただ愛されてきた人間が『愛って大事だよね』と言っているのと、愛が足りなかったからこそ『愛って大事だよね』と言っているのでは、言葉の重みが違ってくるし、響く人が変わってくるなと思っていたので、今発信するべきなんじゃないかなと思いました」

ファンはもちろん、つらい思いをしながら生きている人にも、自分の思いを届けたいと考えている。

「ファンの人たちにもちゃんと説明をしなきゃいけないなと思っていたので、読んで受け止めてくれたらうれしいですし、マイナスなところで渦巻いて生きている人たちにも届くように言葉にしようと思いました」

同書によって、「少しでも誰かの未来につながったらいいな」と願っている詩羽。

「いろんなことが人生ってあるよねという一つの例として、そんなこともあるんだなぐらいで受け取ってもらえたら。負の中で生きている人たちが少しでも這い上がれる可能性を与えることができたらいいなと思っているので、つらい環境で生きている人たちにも届いたらいいなと思います」

つらい過去を振り返って執筆する中で気持ちが落ちることもあったというが、「少しでも自分みたいな上手に生きられない人間を減らしたい」との思いで、しっかりと過去の自分と向き合って執筆した。

  • 『POEM』(宝島社)

高1で口元にピアス「強く装うところから始めないと何も変わらないなと」

学校でいじめられ、家庭環境にも苦しめられ、生きる希望を見出せなかった過去の詩羽。自分で自分を守るには「強くなるしかない」と思い、高校1年のある日の深夜、髪の毛を刈り上げ、唇の下にピアスを開けたのだという。

「何もかもに負けていたけど20歳までは生きてやろうという覚悟。戦うぞという決意の瞬間でもありました。強く装うところから始めないと何も変わらないなと。強く生きるための第一歩で、人より強い見た目になることで強くなれた気がしました」

そのスタイルをずっと続けているが、今は「強くありたい」というよりも、「私が生きるきっかけになったスタートラインなので、そのアイデンティティをずっと大事に抱えていきたい。こうしなきゃ生きてこられなかったという事実を大事にして、弱さも抱えて生きていきたい」という思いだと説明した。

また、「私の場合は見た目から変わることでいい方向につながっていったので、それは一つの大きな手段だと思います。小さいことだったらネイルをしてみるとか、一気に変えられるのであれば金髪にしてみるとか、そういう行動がいい方向に行くかもしれないねとは言えます」と語った。