伊藤園お~いお茶杯第65期王位戦(主催:新聞三社連合、日本将棋連盟)は挑戦者決定リーグが進行中。3月6日(水)には紅組の豊島将之九段―斎藤慎太郎八段戦が関西将棋会館で行われました。対局の結果、大胆な振り飛車破りを見せた豊島九段が149手で勝利。今期初白星で1勝1敗の五分の成績に戻しています。

意表の斎藤振り飛車

両者は1月末の順位戦以来の対戦。あらかじめ先後が決まっている本局、後手となった斎藤八段が選んだのは角道を止めない四間飛車でした。駆け引きの結果とはいえこの珍しい作戦選択にファンも「ついに斎藤先生も」「最近模索しているのかな」と驚きを隠せません。

向かい飛車に振り直した斎藤八段は金銀を自陣全体に配備するバランスよい布陣にシフト。豊島九段も同様の構えを取って角交換に備えたもののどちらも早い攻めはなく、やがてともに金銀を密集させる囲いに組み替えました。機が熟したところで豊島九段が仕掛けます。

勝敗分けた陣形差

2筋で飛車をぶつけて単刀直入に交換を迫ったのが豊島九段の好手でした。左金が遊んでいる後手としては大さばきに応じることができず、ここで先手が一本取った格好に。感想戦で斎藤八段は4筋に桂を打って先手の角筋を止めるのが急務だったと振り返りました。

リズムをつかんだ豊島九段の指し手は冴えわたります。飛車を差し出して角との交換を甘受したのが自陣の堅さを生かした大局観のさばき。敵玉そばに放った垂れ歩が間に合っては攻めが切れません。終局時刻は20時23分、最後は自玉の寄りを認めた斎藤八段が投了。

リーグ成績は勝った豊島九段、敗れた斎藤八段ともに1勝1敗となっています。

水留啓(将棋情報局)

  • 豊島九段は終盤の逆転で敗れた順位戦のリベンジを果たした

    豊島九段は終盤の逆転で敗れた順位戦のリベンジを果たした