SSDやメモリでハイエンドの製品を展開している「Crucial Pro」シリーズに、低レイテンシが特徴でDDR5-6000対応のOCメモリが加わった。今回発売に先駆けて実機が編集部から送られてきたので、従来からあるDDR5-5600メモリを用意してゲーミング性能を中心に比較していく。
ここで紹介するDDR5-6000メモリは「Pro Overclocking」シリーズに属する、いわばスペシャルなモデルだ。動作クロックもさることながら、特徴的なのは低レイテンシであること。メモリのレイテンシとはメモリコントローラからの要求に対してメモリが応答するまでの時間で、数字が小さいほど高速だ。Crucial Pro OverclockingのDDR5-6000メモリは「36-38-38」というスペック。Crucial ProのDDR5-6000メモリは「48-48-48」なので、ハイエンドな従来製品と比較しても格段に高速だ。
メモリのモジュールは16GBと24GBをラインナップする。16GB×2(CP2K16G60C36U5B、実売価格2万9,000円前後)と16GB単体(CP16G60C36U5B、実売価格1万2,800円前後)は発売中で、24GBモジュールは2024年後半に発売予定となっている。
今回試用するのは、16GB×2の「CP2K16G60C36U5B」だ。OCプロファイルとしては、Intel向けのXMP 3.0、AMD向けのEXPO両方を内蔵しており、それぞれDDR5-6000(36-38-38-80)とDDR5-5600(36-38-38-80)の2種類が用意されている。電圧は1.35Vで、1.35Vで使う限り永久保証が受けられる。
放熱を助けるため、折り紙モチーフのアルミ製ヒートスプレッダを備えている。上部全体を包むような形状で、上から見ても基板が見えにくくデザイン性が高められている。従来のCrucial Proのヒートスプレッダよりも若干大型化しているが、よほどシビアでない限り空冷クーラーとも干渉しにくいだろう。
DDR5-6000がスイートスポットのRyzen環境でベンチ実行
ここからはベンチマークでCrucial ProのDDR5-5600(16GB×2)と比較しておこう。検証環境は以下の通りだ。
- CPU:AMD Ryzen 9 7900X(12コア24スレッド)
- マザーボード:ASUSTeK ROG CROSSHAIR X670E HERO(AMD X670E)
- メモリ:Micron Crucial DDR5 Pro Overclocking CP2K16G60C36U5B(PC5-48000 DDR5 SDRAM 16GB×2)、Micron Crucial DDR5 Pro CP2K16G56C46U5(PC5-44800 DDR5 SDRAM 16GB×2)
- ビデオカード:NVIDIA GeForce RTX 4070 Founders Edition
- システムSSD:Micron T700 CT2000T700SSD3JP(PCI Express 5.0 x4、2TB)
- CPUクーラー:Corsair iCUE H150i RGB PRO XT(簡易水冷、36cmクラス)
- 電源:Super Flower LEADEX V G130X 1000W(1,000W、80PLUS Gold)
- OS:Windows 11 Pro(23H2)
ポイントになるのは、Ryzen 8000/7000シリーズではDDR5-6000がもっともパフォーマンスが出るスイートスポットと呼ばれていること。これはメモリコントローラ(uclk)とメモリクロック(mclk)が1:1で同期するのは6,000MHzまでとなっているためだ。さらにCrucial Pro OverclockingのDDR5-6000は低レイテンシなので、DDR5-5600よりも性能が伸びることを期待したいところだ。
なお、ゲーム系のテストに関してはRyzen 9 7900Xの内蔵GPUを使った場合とGeForce RTX 4070を使った場合の2種類でテストしてみたい。CPUの内蔵GPUはメインメモリの一部をビデオメモリとして使用するため、メモリが高速になるほど性能への影響も大きいと考えたためだ。
ただし、Ryzen 9 7900Xの内蔵GPUはRadeon Graphicsではあるが、CU(Compute Unit)が2基しかない。Ryzen 8000Gシリーズほど高性能ではない点は覚えておいてほしい。
まずは、システム情報の表示や多彩なベンチマーク機能を備える「SiSoftware Sandra Lite」でメモリー帯域とレイテンシをテストしてみよう。
Crucial Pro OverclockingのDDR5-6000は、DDR5-5600に比べて帯域もレイテンシも約10%高速という結果だ。高クロック駆動かつ低レイテンシであることが数字に表れている。続いて、CPUパワーを見る「Cinebench 2024」を試してみよう。
DDR5-6000の方ではMulti Coreが約3.3%スコアが上回っているが、Single Coreは誤差レベルだ。ゲーム関係のテストを行ってみよう。まずは定番の3Dベンチマーク「3DMark」から。
内蔵GPU、RTX 4070ともDDR5-6000が2%程度上回った。内蔵GPUは思ったより変化がない。実際のゲームではどうだろうか。
まずは軽めのゲームとして「ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク」(以下FF14)と「レインボーシックス シージ」を実行しよう。レインボーシックス シージはゲーム内のベンチマーク機能を利用している。
FF14はメモリクロックが影響しやすいベンチマークだが、DDR5-6000のほうが3~5%スコアが上回った。また、レインボーシックス シージは内蔵GPUだと微増だったフレームレートがRTX 4070使用時だと約6%もフレームレートが上昇している。意外とビデオカード使用時のほうが影響が大きかった。
続いて、重めのゲームとして「Call of Duty: Modern Warfare III」と「サイバーパンク2077」を試そう。どちらもゲーム内のベンチマーク機能を利用している。
こちらも内蔵GPUはわずかなフレームレート向上だ。しかし、RTX 4070時はCall of Dutyで約5%、サイバーパンク2077で約6%のフレームレート向上を確認できた。今回は3D性能の低い内蔵GPUをテストに含めているため画質設定は低めとなっており、RTX 4070では負荷が軽すぎる面はあるものの、すべてのゲームでDDR5-6000が上回った。可能な限りフレームレートを出したい、という場合には意味があると言ってよいだろう。
最後に、Crucial Pro OverclockingのDDR5-6000は低レイテンシということもあり、性能を追求したい人に十分オススメできる結果を出した。価格は高めだが、Intel XMP 3.0、AMD EXPO両対応で環境を選ばず使えるのも心強い。注目のOCメモリになりそうだ。